「SOAP」で薬歴書いていますか?
近年、薬歴はSOAPで書くことが主流になっています。SOAPとは「Subjective Data (主観的データ)」「Objective Data (客観的データ)」「Assessment (分析・評価)」「Plan (計画)」の頭文字を取った呼び名で、POS(Problem Oriented System。問題思考型システムの意)の考え方に基づく記録方式の1つです。
患者の健康上の問題点(プロブレム)に対して、主観データや客観データなどをもとに、分析・評価を行い、患者の問題解決のための計画を立てるということです。その経過記録を薬歴として記すことで患者によりよい薬物治療を提供します。
しかし、このSOAPを苦手と感じている薬剤師は少なくありません。そこで今回は、SOAP薬歴の基本的な書き方から、プロブレムの立て方、SOAP薬歴のよくある悩みなどについて紹介します。
SOAP薬歴は苦手?薬剤師実態調査
m3.comの薬剤師会員に行ったアンケート調査では、約6割の薬剤師が「薬歴記入が苦手」と回答しています。具体的にどのような点に苦労しているのでしょうか。
「薬歴記入において苦労していることは?」という問いに対しては、「いつも同じ処方で書くことがない」が最多で46%、次いで「患者さんの話やアセスメントを書き漏らさないようにすると長くなりすぎる」(40%)、「病院で話したからと、患者さんが話してくれず欲しい情報がもらえない」(34%)という結果でした。
具体的なコメントを見ると、「SOAPに沿って書けない。患者さんとゆっくり話せないため情報が少ない、指導内容も定型文になってしまう、風邪など一回受診で終了という患者も多いため経過がわからず終了という場合も多いなどの理由から中身が少なく継続性がない薬歴になりがちである」「大学時代にsoapの意味は勉強したけれども、どういう風に書いたらいいかまでは勉強しなかったので苦手。」など、「SOAPで書くのが難しくて手間がかかる」と感じている薬剤師のコメントが多くあります。
また、薬歴記入の時間に関しては、「5分以内」と回答する薬剤師が7割を占めており、「短い時間でSOAPの項目を満たした薬歴を記載しなければならない」という状況も、薬剤師のSOAP薬歴苦手意識に拍車をかけているかもしれません。
SOAPの基本
大学で薬歴の書き方をと教わることは珍しく、勤務先の書式に従って見よう見まねで書いている方も実は少なくありません。ここでは「そもそも良い薬歴とは何か」という観点から、SOAP薬歴の基本をお伝えします。
「何を書けば良い薬歴になるか」そんな疑問を持ったことはないでしょうか。これは非常に根本的な疑問ですが、良い薬歴には下記のような特徴があります。
- 患者さんの様子がよくわかる。
- 薬剤師としてどんな判断をしたのかがよくわかる。
- 薬剤師が指導した内容が漏れなく、簡潔に記載されている。
薬歴は必ずしも「SOAPで書かなければいけない」という決まりはありません。要点がしっかりと書かれていれば、どんな形式であってもよいのです。では、なぜSOAPという形式があるのでしょうか?それは「SOAP」の視点で考えると、質の高い薬物治療を効率よく提供できる、つまり早期に患者のプロブレムを解決できるからです。
SOAP薬歴には、主観的・客観的データをもとに分析と立案が必要ですが、そのためには患者の話を傾聴する服薬指導が重要です。
「プロブレム」解決の要因となる情報を収集し、SOAP設定に役立てましょう。
プロブレムの立て方
SOPA薬歴でもっとも重要なのは「プロブレムの立て方」と言っても過言ではありません。
しかし、このプロブレムに苦手意識を感じる薬剤師もまた多いようです。
プロブレムとは「その患者を診て、専門家としてどのような指導が必要だと考えたのか」の結果です。「プロブレムさえきちんと想定されていれば、「A(アセスメント。分析・評価)」とプロブレムはほぼ同じになるはずだ」と岡村先生は話します。
つまり、どのように考えたのかがアセスメントであり、それをひと言で表したのがプロブレムということ。ですから、プロブレムを設定したら、アセスメントも同じ内容を示しているかをチェックしましょう。すると、SOAPの捉え方が正しいかどうか自分でチェックすることができます。
逆を言えば、プロブレムとアセスメントが一致していない場合は、どちらかが間違っています。服薬指導での患者との会話を思い出し、客観的データと主観的データをもとに再度、プロブレムを検討してみましょう。
SOAP薬歴に関する薬剤師の悩み
先述のアンケート結果でもご紹介したとおり、SOAP薬歴に関しては多くの薬剤師が悩みを抱えています。なかでも特に多いのが「同じ処方で書くことがない」という相談です。たしかに、do処方の場合など「服薬指導でも同じ質問ばかりしてしまい、聞くことがない」といった状況を経験したことのある薬剤師は少なくないと思います。
「いつも服用している薬、何を書けばいいの?」
「薬歴はどのくらいの量を書くものですか?4行~5行ではダメですか?」
「処方薬とは関係ないことを、どう書けばいいの?」
このようなベテラン薬剤師たちの薬歴相談に岡村先生はどのようなアドバイスをしているのでしょうか。SOAPに限らず薬歴は「長ければいい」というものではなく、必要な情報がありコンパクトであることが理想です。そのための書き方のコツは「プロブレムを意識すること」「その日取り上げるプロブレムを絞ること」「行き当たりばったりの指導をしない」という3つのポイントを抑えることだと岡村先生は話します。
SOAP薬歴の目的は、患者の健康上のプロブレムを早期に解決することです。SOAPは患者さんを前にしてプロブレムを考えるためのガイドであり、薬歴の「どこに何を書く」という記入形式ではありません。あくまで「思考ツール」であることを認識し、主観的データ、客観的データの収集、分析、そして計画立案を行いましょう。
先に紹介したとおり、薬剤師の6割が不安を感じている「薬歴の書き方」。シリーズ『薬歴ビフォー・アフター』ではSOAP思考にのっとって、薬歴の書き方に関する相談に答えています。今回紹介した他にも多くの薬歴相談を紹介していますので、ぜひチェックしてみてください。