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薬剤師のいまを知るトピックまとめ

更新日: 2020年8月14日 薬剤師コラム編集部

SOAP薬歴の正しい書き方とは?薬剤師226人に聞いてわかった記入時の工夫点やお悩みを34の声から解説!

SOAP薬歴の正しい書き方とは?記入時の工夫点やよくあるお悩みも解説の画像

服薬指導に重要なSOAPとは?

近年、薬歴は「SOAP式」で書くことが主流となっています。SOAPとは「Subjective Data (主観的データ)」「Objective Data (客観的データ)」「Assessment (分析・評価)」「Plan (計画)」のことで、POS(Problem Oriented System)における分析方法として主に医師の診療システムのなかで発展してきました。

SOAP薬歴のメリットは、他の薬剤師だけでなく、医師や看護師といった他職種に対しても、患者の現状と課題、課題への対策を分かりやすく伝えられること。m3.com薬剤師会員へのアンケート(対象者266人)では「SOAPを心がけて書いているか」と聞いたところ、8割以上が「はい」と回答しており、SOAP薬歴は一般的な書き方になっているようです。

Q1: 薬歴を記載する際、SOAPを心がけて記載をしていますか?の画像

また、SOAP薬歴を書く際には、「誰が読んでもわかるように完結に書く」「次の投薬時に参考になる内容を書く」「患者さんの様子が伝わるように書く」など、チーム医療が重視される地域医療のシーンを踏まえて、それぞれに工夫をしているようです。

「SOAP薬歴を書く際に心けていること」のアンケートの自由回答を一部紹介

誰が読んでも分かりやすく!

  • 誰が読んでも1回でわかるように書く
  • 新人の薬剤師が見てもその方の経過がわかるように。
  • 他の医療者が読むこと、最終的にはカルテ開示で患者家族が読むことを考えて、薬学的アプローチの根拠と狙い・見通しのようなことをわかりやすく書くように心がけている。

数値を入れて簡潔に!

  • 細かく書かない。専門用語や略語を使わない。
  • ポイントをできるだけ簡潔に記載する。
  • 数値がわかるものは数値を記載
  • 指導事項は箇条書きにする。

患者の様子が伝わるように

  • 患者が話したことはできるだけそのまま記載する
  • 疾患に関わるところだけではなく、話し方や性格、家族や友人のことなど、本人の人物像の把握に役立つものは記載している
  • 「S」はできるだけ患者さんの主訴、ニュアンスが伝わるように記入
  • 患者さんの様子がわかるように記載

その他

  • 次回の投薬につながる情報を必ず入れる
  • SOAPを心掛けているが、結局患者さんにとって重要と思われることは、形式に囚われず記録している
  • Do処方の時でも何か前回と異なるように記載するように心がけている。

SOAP薬歴の基本的な書き方

SOAP薬歴を書くときの流れ


薬局のルールによって異なる場合もありますが、SOAP薬歴を書くときは、多くの場合はSOAP(ソープ・Subjective data・Objective data・Assessment・Plan)の流れにそって書いていきます。

SOAP薬歴は早いうちに書くことがポイントです。多忙の際には中々すぐに書くということは難しいこともありますが、忘れないように服薬指導から早めに記入するようにしましょう。

基本的なSOAP薬歴を書くときのポイント


薬歴に記載しなくてはならない内容は、薬剤服用歴管理指導料の算定要件に掲げられています。具体的には服薬状況、残薬確認、体調変化、併用薬、既往歴、他科受診、副作用、飲食物、後発品の意向、手帳の有無、服薬指導の要点などがあります。

上記は、誰が見てもわかりやすい記載を意識してください。具体的で継続的な流れが重要です。

初回患者の薬歴記入時の注意点


初回患者の薬歴は、服薬指導の内容だけでなく、既往歴などの基本的な情報も記入する必要があります。そのため、再来患者の場合よりも情報量が多くなってしまうもの。もし薬歴を書けない状況ならば、随時メモをとるなどの工夫も必要です。

再来患者の薬歴記入時の注意点


再来患者の薬歴を記入する際には、前回見つかった問題点のその後の経過や、新たな問題点の解決方法について、分かりやすく記載することが大切です。

また、継続的にいらっしゃる患者さまの薬歴では、短期的に変化している内容を見極めることが重要です。体調変化・服薬状況・副作用については、毎回確認しなくてはなりません。

薬歴をスムーズに書くには、「箇条書きで丁寧」を心がけましょう

薬歴をスムーズに書くためには、以下の要領で書きましょう。

記載は箇条書きで簡潔に

薬歴をスムーズに書くときは箇条書きで簡潔に書くことも必要です。

記入内容の取捨選択をおこなう

薬歴は、患者さんとのやりとりを全て書かずに服薬指導の中で必要性の低い内容は、省きましょう。ただし、「最近フィットネスクラブに通い始めた」のように、直接関係ないと思える内容の中にも大切な言葉が隠されていることもあります。

運動が治療に功を奏する場合や、逆に薬の副作用で転倒をおこす可能性を考慮すると、薬歴に記載する必要性はあるといえるのです。

「SOAP薬歴を書く際に心けていること」のアンケートの自由回答を一部紹介

現在では、電子薬歴が使われていますが、実はレセコンには薬歴をスムーズに書くために役立つ多くの機能があります。操作方法はメーカーによって違いますが、音声入力機能、過去の薬歴の引用機能、定型文の登録機能などが代表例として上げられます。

もし、今これらを使ったことがなければ、あらゆる機能を試してみることをおすすめします。レセコンの説明書などを時間のある時に確認してみましょう。

レセコンの機能を活用する

「S」「O」「A」「P」についておさらい

・SOAP薬歴を書くときの流れ
S:Subjective Data(主観的データ)
服薬指導で収集する患者の意見などです

O:Objective Data (客観的データ)
血糖値など検査データのことです

A:Assessment(分析・評価)
SとOを踏まえて薬剤師として何が課題か判断をします

P:Plan(計画)
Aに基づいて、今後の服薬指導の方針や注意点です

SOAP薬歴の記載時のポイント・コツ

SOAP薬歴を記載する際、どのような点に工夫をしているのか紹介します。

SOAPの「S:Subjective Data」(主観的データ)記載時のポイントは?

クローズクエスチョン(「はい・いいえ」で答える質問)だけでなく、オープンクエスチョン(患者が自由に答える質問)を使い分けているという意見が多く寄せられました。また、疾患に直接関わらない話題から会話を広げるなど、いかに患者を話しやすい状態にするか、が重要なようです。

薬剤師のコメントを一部紹介

  • 質問のオープン・クローズを内容によって使い分けています
  • 病気以外の話題も振って盛り上げて、広く話を聞くようにしています
  • 「今日」ではなく「最近の状態や調子」はどうですかと尋ねると、いろいろ話をしてくれることが多い
  • 優先的に伝えるべきところは伝えた上で、少しでも世間話をするようにしています。最初は「大丈夫だ、問題ない」と言っていた患者さんも、ぽろっと不安や不満をこぼされることがあります。
  • できる限り、患者の表現をそのまま使っておうむ返しをするなど話を続けやすい状況を作ること、また、過去に言っていたことと話が食い違っていても否定せずにそのまま聞き取り記録すること
  • 看護師やPTなどから患者さんの様子を見て得た情報なども参考にしています

SOAPの「O:Objective Data」(客観的データ)記載時のポイントは?

まずは「どんなデータが必要か」を把握して、検査結果やお薬手帳をもとに情報収集をする、という意見が多くありました。検査値を提出してもらった際に、患者さんに分かりやすくデータを解説してあげることで、患者さんに「薬剤師に検査値データを提供する価値」を感じてもらえることもあるようです。さらに「自分から検査値データを提出してくれる患者が増えた」といった意見も聞かれました。

薬剤師のコメントを一部紹介

  • 監査データの必要性を事前に話しておく
  • お薬手帳等からの情報収集
  • 小児の体重、高齢者の腎機能、肝機能数値は書くように心がけている
  • 血液データなどは記載する順序を一定にする
  • 色や表情などもできる限り数値化して表記する。(5分間の中でのあくびの回数、フェイススケールでの表情の数値化etc)
  • 患者さんが検査値を提示された時は、内容を分かり易く伝えなおすことで、薬剤師に相談をして良かったと思ってもらうようにしています
  • 自動血圧計のデータ等は事前に見せて頂けるようお願いする

SOAPの「A:Assessment(分析・評価)記載時のポイントは?

「分析・評価」については、苦労の声が多く集まりました。おもに「S」や「O」が少ないために十分な情報を得られない場合や、DO処方などで前回と状態が変わらず「書くことがない」といったケースが見られます。

SOAP薬歴においては、分析や評価に必要な情報をいかに収集するか、がポイントとなるようです。また、病理の専門知識が少ないために適切な評価が難しい、時間がない、といったコメントもありました。

薬剤師のコメントを一部紹介

  • 疾患や症状、検査結果など提示してくれない患者に何を目的で処方されているかわからないことがあり指導が曖昧になる
  • 代理の方が薬を取りに来られる場合。正確な情報が得られない
  • 治療経過が良好だと書くことが少なくなる。
  • 専門的な知識が必要か否かを判断するための知識が不足している
  • 通り一遍のことしか言えないのでいつも同じことの繰り返しになる
  • 病理の知識が乏しく、患者の症状の遷移が説明できない
  • 添付文書やIFだけでなく文献などを参照したいですが、業務に追われて深い洞察を行うための時間がありません

SOAPの「P:Plan」(計画)記載時のポイントは?

「計画」については、次回以降の服薬指導でも経過をチェックしていく必要があるため、指導内容とその後のフォローなど、必要事項が明確に伝わるように記載する必要があります。また、患者の経済事情を踏まえて計画を立てるよう配慮している、といった意見も多くありました。

薬剤師のコメントを一部紹介

  • 薬の軽度な副作用が原因での症状(便秘など)は処方変更になったりしないため、生活習慣や食事などで提案をするが限界がある事が多い
  • 患者に経済的または社会的問題が大きいとき、そちらが先に決まらないとゴールの設定が遅れ、次のアプローチを計画するのに時間がかかること。またそれが不明な時は、いろいろな可能性を残して治療を進めるのでPlanが複数になったり、焦点がぼやけること。
  • 医師の治療ゴールを見極めて、プラス、現在の患者の状況を考え、また、医療経済的な面も考える必要がある。
  • 実行可能なプランにしているので、それほど悩むことはありませんが、あまり変化のない患者さんの場合は悩むことがあります。

SOAP薬歴のよくある悩み

m3.com薬剤師会員へのアンケート調査では、4割が「SOAPのうち一番の課題」として「医療従事者としての専門的な分析と見解」を挙げており、SOAPのうちの「A:Assessment」に苦労している方が多いことが分かりました。そこで、薬剤師コラムの人気シリーズ「薬歴ビフォーアフター~薬歴の悩み、解決します~」 から、「A:Assessment」と「プロブレム」に関する悩みをいくつか紹介します。

SOAP薬歴のよくある悩みの画像
いつもなんとなくSOAPで書いていますが、プロブレムがわかりません。(薬歴ビフォーアフター「「プロブレム」は何でしょうか?」より  
(服薬ケア研究所所長の岡村先生のコメントを一部抜粋)
プロブレムがきちんと想定されている場合、アセスメントとプロブレムはほぼ同じになるはずなのです。アセスメントの根拠となる事実、いわばその証拠がO情報です。

O情報は通常、アセスメントを想定した薬剤師の側から患者さんに質問し、その答えとして得ることが普通です。つまり、「患者さんに何を聞くか」が、そもそも何をプロブレムとして想定しているのかによって変わってくるのです。
Aに何を書くかいつも迷う。プロブレムがいくつもあるときはすべて書いても良い?(薬歴ビフォーアフター「「プロブレム」が多いときはすべて書く?絞ったほうが良い?」より  
(岡村先生のコメントを一部抜粋)
POSの基本として、「プロブレムごとに考える」ことが大事です。したがって、プロブレム1つにSOAP1つが大原則となります。もし扱ったプロブレムが3つあるならば、SOAPも3つ必要となります。この大原則が、薬剤師の現場では守られていないことが多いようにお見受けします。「プロブレムごと」の原則を守ると、Aは意外に簡単に書けるようになるはずです。
まとめ

SOAP薬歴はPOSに基づいた書き方ですから、「プロブレム」ありきの薬歴です。前回の薬歴をもとに、患者のプロブレムは何か?の問いを立てながら、主観的データと客観的データを収集し、分析と評価、そして計画立案につなげるのがSOAP薬歴を書くコツです。

地域医療における多職種連携が進めば、患者の薬歴をもとに最適な薬物治療の方法を検討する場面も増えるかもしれません。薬剤師ならではの視点をもって、患者のプロブレムを見し、服薬コンプライアンスやアドヒアランスの向上をサポートしていきましょう。

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薬剤師コラム編集部

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