薬剤師のいまを知るトピックまとめ

更新日: 2021年1月20日 薬剤師コラム編集部

ドラッグストア薬剤師の「やりがい」とは

薬剤師のいまを知るトピックまとめメインの画像

主に市販薬や生活用品を扱うドラッグストアの薬剤師には、どのような「やりがい」があるのでしょうか。セルフメディケーションの普及、ドラッグストアの業績の伸びなどから、今後も成長や拡大が期待される領域ですが、病院や薬局に比べて、薬剤師としての仕事の「やりがい」は少し見えにくいところがあります。しかし、薬剤師として人の健康や生命に関わる仕事である点は、他の薬剤師と変わりはありません。むしろ、ドラッグストアの薬剤師には、病院薬剤師や薬局薬剤師よりも深く求められる知識や技量もたくさんあります。そんなドラッグストア薬剤師の「やりがい」を、簡単に紹介していきます。

やりがい①:「市販薬対応で良い」のか「病院を受診すべきか」というトリアージ

ドラッグストアの薬剤師と、病院・薬局の薬剤師が対応する相手には、決定的に異なる点があります。それは、医師の診察を介していない、という点です。通常、病院薬剤師も薬局薬剤師も、医師や他の医療職と一緒に患者と関わっていきます。そのため、基本的にどんな病気なのか、今後どういった治療方針で進めていくのか、といった部分には、自分以外の専門家による評価や判断も多く含まれており、基本的に薬剤師は「薬物治療」を中心に考えることができます。
一方、ドラッグストアの薬剤師が接するのは主に、「どうやら風邪をひいたようだ」と考えている人や、「たぶん水虫になってしまった」と思っている人、「軽い片頭痛」だと自称している人など、医師には診断を受けていないが自分で軽い症状を何とかしようと考えている人になります。この場合、薬剤師がまず行うべきは「適切な薬を選ぶ」ことよりも、「本当に風邪なのか、本当に水虫なのか、本当に片頭痛なのか」といった見分けになります。つまり、その人は市販薬で対応していて良い状態なのか、あるいは一度病院で医師に診てもらった方が良いのか、その「トリアージ」をできる必要があるということです。そのため、病院薬剤師や薬局薬剤師よりも、ある意味「総合診療医」に近い知識を求められることになります。
確かに、ドラッグストアを訪れる人には軽症の人が多く、重病の人が市販薬の相談に来ることはほとんどありません。しかし、実際に「風邪」の相談を受けたドラッグストアの薬剤師が受診勧奨した人の中には、結核や肺炎、脳梗塞といった生命に関わる危険な疾患の初期症状であった事例も含まれていたことが報告されています(日本プライマリ・ケア連合学会誌.42(2):98-102,(2019))。「インフルエンザっぽければ必ず病院受診」といったような、融通の効かない画一的な対応しかできないようではそこに薬剤師が居る意味がありませんし、かといって「何でも市販薬で済ませられる」と考えて危険な疾患を見落としてしまうことも避けなければなりません。そういった点で、ドラッグストアの薬剤師は「市民の健康と生命を守るためのファーストアクセス」の場で働く医療者として、薬学だけでなく病態の知識も求められる極めて重要な職業と言えます。

やりがい②:豊富な選択肢の中から、専門家として色んなカードを切れる

ドラッグストアの薬剤師の「やりがい」として魅力的なものにもう一つ、いざ市販薬の相談を受けた際に自分の裁量で様々な選択・対応ができるという点があります。病院薬剤師や薬局薬剤師も、日々の業務の中で薬の採用や選択、使用方法などについて医師らと意見交換し、その専門性で貢献していくことはできますが、ドラッグストアの薬剤師が市販薬の相談を受けた際には、先述の「病院受診を勧めるべきかどうか」も含め、「どの商品を提案するか」といったことまで、全て自分の裁量で決めることができます。自分が薬や病態の勉強を進める中で、「この商品は、こんな人のこういう相談を受けた時に提案できそうだな」ということを学べば、それをそのまますぐに現場で実践することができる、ということです。
もちろん、それだけの裁量には相応の責任も伴います。自分が研鑽を怠れば、自分が対応したお客さんに経済的・身体的・精神的な不利益を与えてしまうのは、病院薬剤師や薬局薬剤師と同じです。しかし、店舗に在庫している多種多様な市販薬・生活用品の中から、相手の“困った”を解決できるものは何があるか、病院を受診してもらうのが良いか、市販薬で対応してもらうのが良いか、あるいは薬以外で何か役立つものはないか、実に豊富な選択肢の中から専門家としてどんなカードを切るかを考えることができるのは、ドラッグストア薬剤師の醍醐味と言えます。


まとめ

市販薬は処方箋医薬品よりも効果が劣る、副作用は少ないのでちょっとくらい扱いを間違えても大事にはならない、そもそも重病の人はドラッグストアには来ない……そんな誤解から、ドラッグストアの薬剤師の仕事も軽んじられている意見をときどき見かけます。しかし、近年は医療用と同成分のスイッチOTCも増え、花粉症や水虫などでは病院で処方される薬と何ら劣らない薬を使えるようになっています。国が推し進めるセルフメディケーションの普及の波に乗って、市民から頼られる、薬と病態の知識を兼ね備えたドラッグストア薬剤師を目指してみてはいかがでしょうか。

すべてのコラムを読むにはm3.com に会員登録(無料)が必要です

こちらもおすすめ

薬剤師コラム編集部の画像

薬剤師コラム編集部

「m3.com」薬剤師コラム編集部です。
m3.com薬剤師会員への意識調査まとめや、日本・世界で活躍する薬剤師へのインタビュー、地域医療に取り組む医療機関紹介など、薬剤師の仕事やキャリアに役立つ情報をお届けしています。

キーワード一覧

薬剤師のいまを知るトピックまとめ

この記事の関連記事

アクセス数ランキング

新着一覧

26万人以上の薬剤師が登録する日本最大級の医療従事者専用サイト。会員登録は【無料】です。

薬剤師がm3.comに登録するメリットの画像

m3.com会員としてログインする

m3.comすべてのサービス・機能をご利用いただくには、m3.com会員登録が必要です。

注目のキーワード

アセスメント キャリア 医薬品情報・DI 調剤報酬改定 薬物療法・作用機序 電子処方箋 服薬指導 ハイリスク薬 年収・待遇 プロブレム