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薬剤師のいまを知るトピックまとめ

更新日: 2024年6月15日 薬剤師コラム編集部

地域包括ケアシステムで期待される薬剤師の役割は?取り組み事例あり

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高齢化が待ったなしに進む現在、高齢者を社会全体で支えることが急務となっています。

地域包括ケアシステムとは、地域に住む高齢者が自分らしく安心して暮らせるように、医療、介護、住まい、予防、生活支援などを一体的に提供する体制のことです。

厚生労働省は、団塊の世代が75歳以上となる2025年を目途に地域包括ケアシステムを実現するとしています。

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引用:厚生労働省「地域包括ケアシステム」 より

地域包括ケアシステムのなかで、中心となる役割を担うのが医療です。医師はもちろん、薬局や薬剤師にも、より患者さんに寄り添い、より地域に根ざした活動が期待されています。

地域包括ケアシステムで薬剤師に求められる役割

地域包括ケアシステムのなかで、薬剤師は医療チームの重要な一員としてさまざまな役割を担います。

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引用:厚生労働省「地域包括ケアシステムにおける薬剤師・薬局の役割 ~地域に求められる薬剤師・薬局の役割」

これまで、薬剤師の仕事の中心は病院からの処方箋に従って薬を調剤し、正しく服用できるように説明することにありました。

地域包括ケアシステムでは、今までにまして、患者さんの健康状態や生活の把握と、薬の全体の管理をする「かかりつけ薬剤師」の役割が求められています。
また、個々の患者さんだけでなく、地域全体の健康を総合的にサポートする役割も期待されています。

ここからは、薬剤師に求められている役割について具体的にみていきましょう。

かかりつけ薬局、かかりつけ薬剤師

これからは、薬を調剤したあとのフォローと管理をより積極的に行うことで、患者さんの健康をトータルサポートしていくことが薬局、薬剤師に求められています。
これが、かかりつけ薬局、かかりつけ薬剤師としての役割です。

患者さんに対して複数の病院から薬が出されていたとしても、それをすべて一元的に把握、管理し、適切に服用されるように指導していきます。
似たような薬の重複投薬を防ぎ、アレルギーや副作用について問題がないかを確認しながら、薬の効果についても継続的にモニタリングしていきます。
これらの情報を、必要に応じて医師にフィードバックすることで、患者さんによりよい医療を提供する手助けをしていきます。

健康サポート薬局

健康サポート薬局とは、厚生労働大臣が定める一定基準を満たしている薬局として、保健所に対して届出を行った薬局のことをいいます。

かかりつけ薬局の機能に加えて、まちの薬局として、地域の方の健康づくりをサポートしたり、疾病予防の活動を提供したりします。
必要に応じて、市販薬やサプリメントなどの健康食品に関するアドバイスも行います。

また、そのなかで医療機関の受診が必要だと思われる場合は、地域の医療機関を紹介することも。
病気になってからだけではなく、病気になることを防ぎ、地域を元気にしていく役割を担います。

在宅医療の対応

高齢化が進むなかで、介護が必要になったり、認知症になったりしても、住み慣れた地域で暮らしていけるよう、在宅での医療・ケアの需要が増加しています。
薬剤師にも、在宅医療チームの一員として、在宅患者を定期的に訪問し、薬の管理や服薬指導をすることが求められるようになりました。これには夜間や休日も含んだ24時間の対応が必要となります。

医師だけでなく、訪問看護師やケアマネージャーなど、医療や介護の専門家と協力し、患者に合わせた包括的なケアプランをサポートしていきます。
また、患者さん本人だけでなく、家族に対しても、在宅での薬の管理方法や注意点を伝えて、介護のストレスが少なくなるようサポートしていくことも大切な仕事です。

かかりつけ薬剤師・薬局の取り組み事例

残薬対策ツールの取り組み(埼玉県)

(※)厚生労働省発表資料「かかりつけ薬剤師・薬局の推進のための好事例集」より引用

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【課題】

高齢者の薬の飲み残しは大きな問題となっている。その対策として、薬の一包化のほかに、服薬カレンダーや服薬ボックスなどを活用したところ、残薬の減少に有効だった。
それをより広く周知し、現場への活用へとつなげていく。

【取り組み内容】

地域の薬局に対して、服薬カレンダーや服薬ボックスなどのグッズが残薬減少に有効であることを伝え、実際に活用したグッズについて、アンケートを実施。
併せて、グッズの活用事例や工夫したポイントなどを募集し、紹介した。
今後は実際の活用事例をホームページで紹介することで、より積極的な活用を促していく。

薬局の在宅医療サービスを推進するための取り組み(三重県)

(※)厚生労働省発表資料「かかりつけ薬剤師・薬局の推進のための好事例集」より引用

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【課題】

在宅医療では、服薬アドヒアランス不良、残薬や重複投与、不適切な多剤投薬・長期投薬などの医薬品に関わる課題が非常に多く、その解決には在宅薬剤師の関与が必要である。
しかし、在宅薬剤師の必要性が患者さんやその家族には理解されていないことや、薬局が新たに取り組みにくいことによって、介護保険における薬剤師による居宅療養管理指導は十分に普及していない。

【取り組み内容】

地域薬剤師会内に薬剤師在宅訪問サポート推進事業実行委員会を設置し、以下の体制整備を行った。

  • 地域にある病院の退院調整部門と連携して、患者さんが退院するときに共同指導を実施。薬剤師在宅訪問サポートの説明を行い、在宅支援へとつなげる。
  • 地域にある病院の薬剤部と連携して、通院が困難な患者を対象とする薬剤師在宅訪問サポートを推進。
  • 在宅で注射液が使用できる体制の整備。

電子版お薬手帳の利用推進の取り組み(滋賀県)

(※)厚生労働省発表資料「かかりつけ薬剤師・薬局の推進のための好事例集」より引用

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【課題】

地域医療をスムーズに進めるために、電子版お薬手帳の活用が求められている。電子版お薬手帳は利用できる薬局と利用者が増加しているが、さらに普及を進めるために、薬局で利用するメリットを検証。併せて一般への啓発活動を促進する。

【取り組み内容】

電子版お薬手帳を導入した医療機関や介護福祉施設にヒアリングを実施して、利用するメリットを検証。
また、研修会などを通して薬局への運用支援を行い、啓発イベントや電子版お薬手帳啓発フォトコンテストの開催によって、県民への直接的な啓発活動も行った。

町内会における勉強会の実施(北海道)

(※)日本薬剤師会発表資料「平成29年度地域包括ケアシステムにおける薬剤師・薬局の取り組み事例集」より引用

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【課題】

地域包括ケアシステムにおいては、薬局と地域住民の関係を深めていくことが重要だが、地域との関係構築は一朝一夕ではいかない。地域とのつながりを深めていくためには継続的な関わりが必要である。

【取り組み内容】

町内会の地域住民を対象に、薬局の研修室を利用して、薬や健康に関する勉強会を年に数回開催。講師は その薬局の管理薬剤師。毎回20〜30名の地域住民が参加している。
地域住民の勉強会に対する自主性も感じられるようになり、薬局とのつながりも深まった。

まとめ

地域包括ケアシステムにおける薬剤師の役割は、薬を通して患者さんの生活や健康をサポートしていくことがさらに求められます。
また、地域に根ざした薬局・薬剤師として、地域住民の健康管理、病気予防といった地域全体の健康を底上げしていく活動も大切です。
高齢者が増える社会において、薬剤師に求められる責任は大きいですが、医療機関や介護機関と連携しながら役割を果たしていくことが求められています。

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薬剤師コラム編集部

「m3.com」薬剤師コラム編集部です。
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