薬剤師が知っておくべき「リフィル処方箋」の注意点とは?仕組みと活用法を解説
2022年4月より開始されたリフィル処方箋ですが、薬局で働く方なら一度は対応したことがあるのではないでしょうか。「長期処方や分割調剤との違いがいまいちわからない」「通常の処方箋とはどのように対応が異なるのか」と疑問に感じている方も多いかもしれません。実は、リフィル処方箋は、薬剤師が大きな役割を担える制度でもあります。
本記事では、リフィル処方箋の基本的な仕組み、メリット・デメリット、注意点や課題に加えて、薬剤師として知っておくべきポイントについて詳しく解説します。
リフィル処方箋とは
リフィル処方箋とは、症状が安定している患者に対して、医師の処方により医師及び薬剤師の適切な連携のもとで、一定期間内に、最大3回まで反復利用できる処方箋のことです。リフィルの回数や期間は医師が指定し、薬剤師がそれに基づいて調剤を行います。
今までは。医師が診察を行い、その都度処方箋を発行する形式が一般的でしたが、リフィル処方箋の導入により、医師の診察なしでも薬を受け取れるようになりました。この制度は、患者の通院による時間的・経済的負担を減らすだけではなく、医療費の削減や医療機関の負担軽減にもつながると期待されています。
リフィル処方箋の対象は?
リフィル処方箋は、すべての薬に適用されるわけではありません。ここでは、どのような薬が対象となるのかを示していきます。
リフィル処方箋の対象となる薬
リフィル処方箋の対象となるのは、病状が安定しており、医師が「しばらく通院しなくても問題が無い」と判断した場合です。慢性疾患を治療中で、症状が安定しており、毎回の受診で継続的に同じ薬が処方されている場合などがリフィル処方箋の対象となり得ます。
40代以上では、高血圧症、糖尿病、高脂血症といった生活習慣病が多く、若年層においては、アレルギー性鼻炎が最も多く挙げられます。リフィル処方箋を使用することで、受診の頻度が減るため、対象となる薬は、副作用等のリスクが少ないものが望ましいです。
処方できない薬
一方で、リフィル処方箋では処方が認められていない薬もあります。
保険医療機関及び保険医療養担当規則に基づき、「投薬量に限度が定められている医薬品及び湿布薬については、リフィル処方箋による投薬を行うことはできない。」と定められています。
また、一定の管理や観察が必要な薬剤についても、リフィル処方箋の対象外です。以下に、リフィル処方箋が適用されない薬の例を示します。
リフィル処方箋が適用されない薬(例)
- 新薬
- 麻薬
- 向精神薬
- 抗がん剤
- 貼付剤(抗炎症薬など枚数制限のあるもの)
これらの薬剤には投与日数制限が設けられているため、リフィル処方箋での処方はできません。また、日数制限以外にも、効果や副作用モニタリングが求められる薬も多いことから、リフィル処方箋には適していないと考えられます。
薬局でリフィル処方箋を受け付ける際には、これらの薬が処方されていないかを確認することが重要です。
リフィル処方箋使用時の注意点
リフィル処方箋は、1度もらった処方箋で複数回薬を受け取ることが可能なため、通常の処方箋とは異なる点があります。患者自身が処方箋の管理を行い、使用回数や受け取り期間に従う必要があるため、薬局でのサポートが重要です。
使用回数
リフィル処方箋の使用回数は、医師が指定する範囲内で、原則として最大3回までとされています。回数の指定は患者の病状や薬の種類に応じて医師が決定し、薬剤師はその指示に従って調剤を行います。薬剤師は、患者にリフィル回数の制限について説明し、回数を超えた受け取りができないことを、患者に理解してもらう必要があります。
使用期限、薬の受け取り期間
リフィル処方箋には、使用期限が設定されています。
初回は通常の処方箋と同様に、原則4日以内に薬局に持参する必要があり、2回目以降は、前回の調剤日から投薬期間を経過する日を次回調剤予定日とし、その前 後7日以内に薬を受け取ることができます。
期限を過ぎた場合、処方箋は無効となり、自費での再受診もしくは処方箋の再発行が必要となるため注意が必要です。リフィル間隔を守らず受け取りが遅れると、薬が切れ治療に影響が出る可能性があるため、薬剤師は、患者に受け取り期間について十分に説明し、スケジュールを守るよう促すことが重要です。
長期処方や分割調剤との違い
リフィル処方箋は、長期処方や分割調剤とは異なる特徴を持ちます。以下、それぞれの違いについて詳しく見ていきましょう。
長期処方との違い
長期処方は、慢性疾患患者の通院負担を減らすために、医師が1-3ヶ月分などの長期間の薬を一度に処方する方法です。ただし、大量の薬を患者が管理する必要があり、また病院・薬局ともに訪れる頻度が少なくなるため、体調変化の対応が遅れるリスクがあります。
一方、リフィル処方箋は、1回の処方箋を繰り返し使用する仕組みで、患者が定期的に薬局で受け取ります。これにより、薬剤が一度に大量に手元に残らず、薬剤師がその都度、服薬指導や健康状態の確認を行うことができるため、体調変化や副作用への早期対応が可能です。
分割調剤との違い
分割調剤とは、医師が処方した薬を最大3回まで複数回に分けて調剤・提供する方法です。これにより、患者の経済的負担軽減や、薬の効果・副作用を見ながら調整することが可能です。主に、以下3つのケースで行われます。
分割調剤が行われるケース
- 長期保存が困難な薬剤を処方された場合
- ジェネリック医薬品を試したい場合
- 本人による薬剤の長期管理・保存が難しい場合
一方、リフィル処方箋は、症状が安定している長期治療の患者向けに用いられます。分割調剤が1枚の処方箋を複数回に分けるのに対し、リフィル処方は1回の処方を繰り返し使用し、あらかじめ決められた調剤日程に沿って薬を受け取ることが可能です。
このように、分割調剤とリフィル処方箋では、対象となる患者や目的が異なります。
リフィル処方箋のメリット・デメリット
続いて、リフィル処方箋には、どういったメリット・デメリットがあるのかを解説していきます。
メリット
1.患者の負担の軽減
症状が安定している患者は、長期で同じ処方を継続して服用していることも多く、薬を受け取るためだけに受診している方がいるのも実情です。リフィル処方箋を利用することで、患者は毎回の通院が不要になり、身体的・時間的負担や受診費用の軽減が期待できます。
また、一度に受け取る薬の量が少なくなるため、服薬管理の負担も軽くなり、服薬がしやすくなるでしょう。
2.薬剤師によるフォローアップ
リフィル処方箋制度では、病院への受診は一度ですが、その後も薬局で継続的に薬を受け取るため、薬剤師が患者の健康状態を把握しながらフォローアップを行います。薬剤師は患者のアドヒアランスを確認し、健康状態に応じて医師に報告することができるため、患者の服薬管理を総合的にサポートできます。
3.医療の効率化
リフィル処方箋により、医師の診察回数が減少することで、医療の効率化が図れます。診察時間を他の患者に割くことができるため、結果として医療機関全体の負担軽減にもつながります。
デメリット
1.医師による健康状態の確認頻度が少なくなる
リフィル処方箋を利用すると、患者は一定期間診察を受けなくなるため、症状の悪化や新しい症状が発生しても、発見が遅れる可能性があります。特に、高齢者や持病がある患者は、定期的な診察が必要なため、リフィル処方箋の適用には、慎重な判断が求められます。
薬剤師は、患者の健康状態を注意深く観察し、必要に応じて医師にフィードバックすることが重要です。
2.薬剤師の業務負担の増加
リフィル処方箋の導入により、薬剤師は、薬の受け渡しだけではなく、患者の定期的な健康状態の管理も担うようになります。患者の服薬状況を把握し、必要に応じて医師への報告を行うなど、幅広い対応が求められるため、薬剤師の業務負担が増える傾向にあります。また、複数回にわたる調剤に伴い、在庫管理も重要であり、適切な対応が必要です。
3.誤用・誤解のリスク
リフィル処方箋では、患者が自ら処方箋を管理し、使用回数や受け取り期間を管理する必要があるため、誤用や誤解が生じる可能性があります。例えば、患者がリフィルの期限を忘れてしまうと、服薬が途切れる危険があります。薬剤師は、リフィル処方箋の利用方法について、患者にわかりやすく説明し、適切な管理をサポートすることが重要です。
薬剤師の介入方法、役割
リフィル処方箋とは、医師の処方により「医師及び薬剤師の適切な連携のもと」で反復利用できる処方箋です。この制度により、病院への通院頻度は少なくなりますが、薬局での薬の受け取りが定期的に行われるため、薬剤師は重要な役割を担っています。
患者がリフィル処方箋の意義を正しく理解し、コンプライアンスを保ちながら健康状態を維持できるよう、薬剤師は以下の指導と管理を徹底する必要があります。
患者の症状を確認
病院にかからない期間でも、体調に変化がないか患者の状態をモニタリングし、変化があれば医療機関に迅速にフィードバックを行います。この際、要件を満たせば情報提供料1および2も算定が可能です。
必要に応じた受診勧奨
薬剤師が、患者に薬を渡し続けることが適切でないと判断した場合は、速やかに受診を勧めることが求められます。
コンプライアンスの徹底と指導
患者が、リフィル処方箋を適切に利用できるよう、使用方法やメリット・注意点について指導し、継続的な服薬と健康維持に努めます。また、受診日近くなった際には電話などで確認し、確実に薬を受け取れるようにサポートします。
リフィル処方箋を通じて、薬剤師は患者とのコミュニケーションを密にしながら、健康管理において大きなサポートを提供する役割が期待されています。
リフィル処方箋の課題
リフィル処方箋は2022年4月に導入され、発行件数は徐々に増加していますが、2023年の厚生労働省の調査によると、リフィル処方箋の割合は全体のわずか0.03%にとどまり、現在でも十分に普及しているとは言えません。その背景には、リフィル処方箋について患者への周知が不十分であることが挙げられます。
一方で、2023年12月からは、電子処方箋でのリフィル処方対応が開始され、2024年4月からは、対象医療機関におけるリフィル処方箋に関するポスターの掲示が原則義務化されました。今後薬局でも、リフィル処方箋のメリットや使用方法について説明を進めていくことが求められます。
これらの取り組みにより、リフィル処方箋が医療現場に浸透し、医師や薬剤師による適切な説明を通じて患者の理解も深まっていくと期待されます。
まとめ
リフィル処方箋は、症状が安定している患者の通院負担を軽減し、継続的な治療を目的として導入された新たな制度です。患者にとっては、定期的な通院の手間が減り、安定した治療が期待できますが、一方で医療従事者には新たな管理や対応が求められます。リフィル処方箋制度の活用は、患者の生活の質を向上させるだけでなく、医療資源の効率的な運用にもつながるでしょう。
リフィル処方箋制度において、薬剤師は大きな役割を担う存在として、患者の服薬をしっかりとサポートし、健康維持に貢献していくことが期待されます。
参考文献
厚生労働省 長期処方・リフィル処方の活用について
中医協 令和4年度診療報酬改定 リフィル処方の仕組み
厚生労働省 導入から2年超 使おう! リフィル処方箋
健康保険連合会 リフィル処方箋
厚生労働省 リフィル処方箋の実施状況調査