患者さんを困惑させない、処方箋が期限切れの場合の対応の流れ
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病院を受診した患者さんは、そのまま病院近くの調剤薬局で薬を受け取ることが多いため、処方箋に期限があることはあまり知られていません。
しかし、何かの理由で処方箋が期限切れになると、患者さんにも、それに対応する薬剤師にとっても大きな負担となってしまいます。
ここでは、処方箋の有効期限の基本知識や、期限切れ処方箋への適切な対応方法を解説します。併せて、患者さんへの対応のポイントもお伝えします。
法令を遵守しつつ、患者さんの立場に立った対応ができるよう心がけましょう。
処方箋が期限切れになるのはいつ?
処方箋には法律で定められた期限があります。まず、処方箋の期限について確認してみましょう。
処方箋の有効期限は発行から4日間
処方箋の有効期限は、発行日を含めて4日間と法律で定められています。たとえば、5月1日に発行された処方箋の有効期限は5月4日までとなります。
なお、旅行や仕事、大型連休などのため4日以内に受け取りができない場合は、事前に医師に相談することで期限を延長してもらえることがあります。
休日も期限に含まれることに注意
この4日間という有効期限には、土曜日、日曜日、祝日も含まれます。病院や薬局がたとえ開いていなくても、期限が延長されることはありません。
そのため、連休前に発行された処方箋には特に注意が必要です。たとえば、週末が3連休となる場合、金曜日に発行された処方箋は月曜日には期限切れとなってしまいます。
ゴールデンウィークや年末年始も同様の扱いとなります。
処方箋に有効期限がある理由
このように処方箋に有効期限が設けられている主な理由は、患者さんの健康状態の変化に対応するためです。
週末の扱いなどを考えると、4日間という期限は短いように感じられるかもしれません。
しかし、医師の診察を受けてから時間が経過すればするほど、患者さんの症状や必要な薬が変わる可能性が高くなります。そのため、受診時の症状に対してできるだけ早く適切なケアが始められるように期限が設けられているのです。
電子処方箋の期限
電子処方箋も従来の紙の処方箋と同様に、発行日を含めて4日間の有効期限が適用されます。電子処方箋システムでは、有効期限が自動的に管理されています。
リフィル処方箋の期限
リフィル処方箋とは、1回の処方で一定期間内に原則として最大3回まで反復利用できる処方箋のことです。
リフィル処方箋の場合、全体の使用期限が設定されています
初回は、通常の処方箋と同様に、原則4日以内に薬局に持参する必要があります。
2回目以降は、前回の調剤日から投薬期間を経過する日を次回調剤予定日とし、その前後7日以内に薬を受け取ることができます。
2回目以降もこの期限を過ぎると処方箋は無効となることには注意が必要です。
分割調剤の処方箋の期限
分割調剤とは、医師が処方した薬を最大3回まで複数回に分けて調剤・提供する方法です。
分割調剤の場合、処方箋の有効期限は通常の4日間ではなく、処方日数全体をカバーする期間となります。
ただし、初回の期限は4日以内となります。それ以降の調剤については、薬剤師の判断で適切な間隔を設定する必要があります。
期限切れの処方箋を提出した患者さんへの対応ポイント4つ
忙しくて処方箋発行後すぐに薬局に行けなかったりして、期限切れの処方箋を持参された患者さんにはどのように対応すればいいのでしょうか。
①まずは、お詫びする
患者さんは処方箋に有効期限があることをご存知ないことがほとんどです。
忙しいなかわざわざ薬局へ来られた患者さんは、「この処方箋は期限切れなので受付できません」と言われると大変ショックを受けられるでしょう。場合によっては怒り出す方もいらっしゃるかもしれません。
患者さんが期限切れの処方箋を持参された場合、処方箋に関するきまりを説明する前に、有効期限について周知不足であったことをまずは丁寧にお詫びすることが大切です。
②処方箋の期限についての注意と対策を説明する
誠意をもってお詫びしたあとに、処方箋の有効期限について説明し、期限切れにならないためにはどうすればよいかをお伝えします。
まず、処方箋の有効期限について、以下のポイントを丁寧に説明しましょう。
▶処方箋の期限切れについて、患者さんへの説明ポイント
- 処方箋の有効期限は発行日を含めて4日間であること
- 病状は時間の経過に従って変化するため、土日や祝日も関係なく期限に含まれること
- そのため、連休には特に注意が必要であること
このようなルールは患者さんの健康を守るために設定されていることをお伝えしたあとに、患者さんには、処方箋を受け取ったらできるだけ早く薬局に持参されるようにお願いしましょう。
特に慢性疾患の薬や継続的な治療に必要な薬の場合は、残薬があるからと受け取りが遅くなることがあります。期限内に確実に受け取ることが治療の継続に不可欠であることを理解していただくことが大切です。
特殊な理由があるときは医師に相談して延長できる
今後、同じような状況になったときのために、やむを得ない事情で期限内に来局できない場合の対応方法も説明しておくとよいでしょう。
大型連休前の受診や、旅行や仕事の都合などのため4日以内に受け取りができない場合は、事前に医師に相談して期限を延長してもらえることがあることを伝えましょう。
薬の受け取りは代理人でも可能
患者さん本人が期限内に来局できない場合、家族などの代理人による薬の受け取りが可能です。
処方箋、保険証、お薬手帳がある方はお薬手帳を持参していただくことになります。
ネット予約などをしても期限内に受け取る必要がある
現在はネットやアプリ経由で薬局を予約して利用することも増えてきました。
そのように、オンライン予約システムを利用している場合でも、予約するだけでは不十分で、薬の受け取りは従来通り処方箋の有効期限内に行う必要があります。
③期限切れの処方箋が再発行できるか説明する
処方箋の期限の説明とともに、薬を処方するためにはこれからどうしなければならないかをお伝えましょう。
期限切れの処方箋は薬局で再発行することはできないため、処方箋の期限が切れた場合は病院を再び受診する必要があります。
再受診をしていただく際は、以下の点に注意が必要です。
▶処方箋の期限切れで再受診してもらう場合の注意点
- 医療機関を再度受診し、現在の症状について医師に確認してもらう
- 再受診にかかる費用は保険適用とならず、全額自己負担となる
- 新たに発行された処方箋であれば、薬局でのお薬代は通常通り保険適用となる
- 再発行された処方箋を持って薬局に行けば、通常と同じ手続きで薬を受け取ることができる
患者さんにとっては身体的にも金銭的にも負担が大きくなりますが、患者さんの最新の健康状態に基づいて適切な処方を行うために必要不可欠であることをお伝えしましょう。
④【注意点】患者さんへの説明は丁寧に
期限切れの処方箋を持参した患者さんは、薬を受け取るには想像以上に面倒なステップが必要なことを知ることになります。
体調が悪いうえに、そのような状態になり、大変ショックを受けられているでしょう。
そのような患者さんには、共感的な態度で接することが重要です。
患者さんの気持ちに寄り添いながら、スムーズに処方箋が再発行できるように、丁寧に説明してサポートしていきましょう。
まとめ
処方箋の期限切れへの対応は、法令遵守と患者ケアのバランスがポイントです。
薬剤師は、処方箋の有効期限について正確な知識を持ち、期限切れの処方箋を持参した患者さんに丁寧に対応することが大切です。
常に患者さんの立場に立ち、思いやりのある対応を心がけましょう。