HPKIカード(薬剤師資格証)完全ガイド・申請から取得、更新など解説
電子処方箋の運用開始やオンライン資格確認の原則義務化など、医療DXの進展により、医療現場を取り巻く環境は大きく変化しています。
それに伴い「HPKIカード(薬剤師資格証)を取得すべきなのか」「自分の業務に必要なのか」と疑問に感じている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、HPKIカード(薬剤師資格証)の仕組みやできること、取得方法について解説します。
HPKIカード(薬剤師資格証)とは
HPKIカード(薬剤師資格証、以下「HPKIカード」)とは、医師や薬剤師などが「医療従事者本人であること」を電子的に証明するためのICカードです。
HPKI(Healthcare Public Key Infrastructure:保健医療福祉分野公開鍵基盤)に基づいて発行され、電子証明書として医療のデジタル手続きで利用されます。
具体的には、電子処方箋に本人が作成したことを示す電子署名を付けたり、医療システムへ安全にログインしたりする際に利用されます。
紙の署名や押印の代わりになる仕組みと考えるとイメージしやすいでしょう。
HPKIカードの対象となるのは、医師・薬剤師をはじめとする27種類の保健医療分野の国家資格と、5種類の管理者資格です。
申請時には資格情報の厳格な確認が行われるため、HPKIカードは信頼性の高い身分証・電子証明書として、医療現場で広く活用されています。
参照:日本薬剤師会認証局・薬剤師資格証について(https://www.nichiyaku.or.jp/hpki/jpaca.html)/日本薬剤師会
参照:HPKIの目的・対象資格(https://www.medis.or.jp/8_hpki/about.html)/医療情報システム開発センター
HPKIカード(薬剤師資格証)に記載されている情報
HPKIカードの券面には、本人確認や資格確認のための基本的な情報が記載されています。
- 資格の名称(医師資格証・薬剤師資格証など)
- 氏名
- 生年月日
- 顔写真
- 資格の登録番号(薬剤師名簿登録番号など)
- 発行日
- 発行元
- 有効期限
- カードID
- HPKIロゴ
なお、電子署名や本人認証といった機能は、カードに内蔵されたICチップ内の電子証明書によって行われます。
医療現場では、これらの電子的な機能に加え、カードの券面を提示することで、医師や薬剤師の資格を有していることを証明する目的でも利用可能です。
参照:医師資格証とは(https://www.jmaca.med.or.jp/hpki/) /日本医師会
参照:日本薬剤師会認証局・薬剤師資格証について (https://www.nichiyaku.or.jp/hpki/jpaca.html)/日本薬剤師会
HPKIカード(薬剤師資格証)が導入された背景と目的
HPKIカードは、医療分野のIT化を安全かつ信頼性の高い形で進めることを目的として導入されました。
2004年に厚生労働省の検討会において、電子署名や個人情報保護の観点から、医療専用の認証基盤(HPKI)の必要性が示されたのが始まりです。制度自体は早期に整備されたものの、当初は医療現場での具体的な活用場面が限られており、普及は進みませんでした。
転機となったのは、2023年1月の電子処方箋の運用開始と、同年4月のオンライン資格確認の原則義務化です。これにより、電子文書について「誰が作成したか」を証明する仕組みの重要性が高まり、HPKIカードが再び注目されるようになりました。
参照:電子処方箋の運用開始日について /厚生労働省
参照:HPKIと日医認定局(https://www.jmaca.med.or.jp/hpki/about_hpki/)/日本医師会
HPKIカード(薬剤師資格証)の普及率
現時点では、HPKIカードの取得は義務付けられているわけではありません。しかし、保有率は急激に増加しています。
医師資格証の保有者は、電子処方箋の運用開始直後である2023年2月は約3万人でしたが、2025年1月には10万人を超えました。その結果、医師全体に占める保有率は29.1%に達しています。
一方、薬剤師の保有者数は公表されていませんが、薬局における電子処方箋システムの導入は着実に進んでいます。
全国の薬局数は63,203施設(2024年度末時点)であるのに対し、電子処方箋システムを運用開始している薬局は53,639施設(2026年1月18日時点)にのぼります。
すでに多くの薬局で電子処方箋の運用が開始されており、薬剤師におけるHPKIカードの所持も、今後さらに広がっていくと考えられます。
参照:医師資格証保有者10万人達成について(https://www.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20250122_4.pdf)/日本医師会
参照:令和6(2024)年度衛生行政報告例の概況 4 薬事関係 /厚生労働省
参照:電子処方せん対応の医療機関・薬局についてのお知らせ
HPKIカード(薬剤師資格証)でできること
HPKIカードは、医療ICT分野において「電子署名」と「認証」に利用できる仕組みです。
ここでは、HPKIカードの具体的な活用例を紹介します。
電子処方箋への電子署名
電子署名は、電子文書が処方医本人によって作成・確定されたことを証明する仕組みです。これは紙文書における署名や記名・押印に相当します。
電子処方箋に限らず、電子カルテの確定保存や紙カルテをスキャンして保存する際にも、電子署名が用いられます。
薬剤師は、電子署名が付与されてあることで、処方の真正性を確認することが可能です。また、電子処方箋でも紙処方箋と同様に調剤済みの記録が必要なため、薬剤師もHPKIカードで電子署名を行います。
電子カルテ・診療情報提供書・紹介状の電子的作成
HPKIカードは、電子処方箋への電子署名だけでなく、電子カルテや診療情報提供書、紹介状など医療文書の作成にも利用可能です。
これまで紙で作成していた文書も、今後は徐々に電子化が進むと考えられています。HPKIカードによる電子署名・認証を用いることで、病院間連携や地域医療連携においても、より安全かつスムーズな情報共有が実現するでしょう。
改ざん防止・セキュリティ向上
HPKIカードは、PKI(公開鍵基盤)に基づく公開鍵暗号方式を用いた高いセキュリティを備えています。
ログイン認証にHPKIカードを利用することで、ID・パスワードのみの運用と比べ、なりすましのリスクを大幅に低減することが可能です。
ICチップ内に格納された電子証明書と秘密鍵・公開鍵を用いることで、「本人が作成した文書であること」と「文書が改ざんされていないこと」を同時に証明できます。
公的資格の証明としての活用
HPKIカードは、カードを提示・認証することで、医師や薬剤師であることの確認が可能です。
公的機関が発行する資格証であるため信頼性が高く、将来的には資格管理や各種行政手続きへの活用も期待されています。
また、券面には身分確認に必要な情報が記載されているため、災害時などの緊急時には、医療従事者であることを迅速に示すことができます。
参照:HPKIの使い方(例)と活用事例(https://www.medis.or.jp/8_hpki/usage.html)/医療情報システム開発センター
参照:電子処方箋における 電子署名について /厚生労働省
HPKIカード(薬剤師資格証)の発行申請から交付までの流れ
HPKIカードの発行を行っているのは、医療情報システム開発センター・日本薬剤師会・日本医師会の3つの認定局です。
交付のおおまかな流れは同じですが、申請方法や対応している証明書の種類など、細かな点は認定局ごとに異なります。
| 認定局 | 対象資格 | 申請方法 |
| 医療情報システム開発センター | ・医師 ・薬剤師 |
・郵送 ・マイナポータル |
| 日本薬剤師会 | ・薬剤師 | ・郵送 ・マイナポータル(※1) |
| 日本医師会(※2) | ・医師 | ・医師会ホームページ ・郵送 ・マイナポータル |
(※1)薬剤師資格証をマイナポータル申請で発行されるのは「セカンド電子証明書」のみです。ICカードの発行が必要な場合はマイナポータルからはできません。
(※2)2025年12月時点では、ICカードの不足により医師資格証の発行を一時停止し、HPKIセカンド電子証明書の先行発行を行っています。
参照:各種お手続き 発行に関する大切なお知らせ
(https://www.jmaca.med.or.jp/service/?page_link=issue_info)/日本医師会
必要書類の提出
発行申請のために必要となる主な書類は、以下の通りです。
- 電子証明書発行申請書
- 住民票(発行時期や記載内容に条件あり)
- 本人確認資料のコピー
- 国家資格免許証のコピー
- 顔写真
- 印鑑登録証明書(医療情報システム開発センターから申請の場合)
※管理者等資格(5種)を申請する場合は追加で必要となる書類があります。
郵送で申請する場合は、簡易書留など配達記録が残る方法で、認定局へ送付しましょう。
なお、書類の準備や提出方法が認定局ごとに細かく指定されています。必ず申請先の公式サイトで事前に確認してください。
発行費用の支払い
申請後、発行費用の支払い案内が届いたら、期限内に速やかに対応しましょう。
発行費用も、申請先ごとに異なります。
| 認定局 | 発行費用(税込) |
| 医療情報システム開発センター | ・医師、歯科医師、薬剤師(管理薬剤師での申請は含まない):26,950円 ・医師、歯科医師、薬剤師以外:55,000円 |
| 日本薬剤師会 | 【紙による申請】 ・会員:19,800円 ・非会員:26,400円 |
| 【マイナポータルでの申請(セカンド電子証明書のみ)】 ・会員:13,200円 ・非会員:19,800円 |
|
| 日本医師会 | ・会員:無料 ・非会員:5,500円(※) |
(※)マイナポータルからの新規発行申請は非会員でも当面の間は無料。また、医師免許証取得より1年以内に申請した場合も、発行手数料は無料。
参照:マイナポータルを利用したHPKI電子証明書発行申請(マイナポ申請)について
(https://www.nichiyaku.or.jp/hpki/mynaportal.html)/日本薬剤師会
HPKIカード(薬剤師資格証)の受け取り
各認定局において、資格確認やデータ登録などすべての工程を経た後、HPKIカードが発行されます。
交付までの期間は認定局によって異なり、医療情報システム開発センターでは6ヶ月以上(2025年8月時点)、日本医師会では2〜3ヶ月程度とされています。なお、日本薬剤師会については、明確な期間は公表されていません。
受け取り方法も認定局によって異なります。
- 医療情報システム開発センター:本人限定受取郵便(特例型)にて郵送
- 日本薬剤師会:本人確認書類を持参し、地域薬剤師会にて対面で受け取り
- 日本医師会:指定の受取場所へ必要書類を持参して受け取り(所属医師会により異なる)
いずれの場合も、HPKIカードの交付は厳格な本人確認のもとで行われます。
申請先の案内に従い、指定された方法で確実に受け取るようにしましょう。
参照:よくある質問(FAQ)(https://www.medis.or.jp/8_hpki/question.html)/医療情報システム開発センター
参照:申し込み方法(https://www.medis.or.jp/8_hpki/application.html)/医療情報システム開発センター
参照:薬剤師資格証の取得方法について(https://www.nichiyaku.or.jp/hpki/procedure.html)/日本薬剤師会認定局
参照:申請方法(https://www.jmaca.med.or.jp/application/how-to-apply/)/厚生労働省
参照:申請の概要( https://www.jmaca.med.or.jp/application/)/日本医師会
HPKIセカンド電子証明書とは
HPKIセカンド電子証明書は、従来のHPKIカードに代わり、生体認証機能付きスマートフォンやマイナンバーカードを用いて利用できる電子証明書です。
物理カードであるHPKIカードの紛失・破損によって業務が滞るリスクを解消する目的で提供が開始されました。
あらかじめHPKIセカンド電子証明書とスマートフォンなどの端末を紐付けておくことで、利用時は生体認証による本人確認が可能です。
参照:セカンド電子証明書とは(https://www.jmaca.med.or.jp/hpki/second_digital/)/日本医師会
参照:セカンド電子証明書(https://www.nichiyaku.or.jp/hpki/pqc.html)/日本薬剤師会
HPKIセカンド電子証明書の登録方法
HPKIセカンド電子証明書を利用するには、事前の利用登録が必要です。
提供元は、HPKIカードと同様に医療情報システム開発センター、日本薬剤師会、日本医師会の認証局です。
HPKIカードを発行する際には、スマートフォンとセカンド電子証明書を紐づけるためのQRコードもあわせて交付されます。
それをスマートフォンで読み取り、生体認証を用いて紐付け登録を行います。
なお、物理カードが不要な場合は、マイナポータルから申請することで、セカンド電子証明書のみの発行も可能です。
この場合に、HPKIカードの券面に記載されている情報をスマートフォン画面上に表示できる「デジタル医師/薬剤師資格証」も開発されています。
デジタル医師/薬剤師資格証にはHPKI電子署名の機能はありませんが、本人確認時にカード券面の提示を代替するものとして利用可能です。
参照:HPKIの利便性向上に向けたHPKIセカンド電子証明書の提供開始について /医療情報システム開発センター
参照:「デジタル医師資格証」のご案内
(https://www.jmaca.med.or.jp/jmaca_wp/wp-content/uploads/2024/10/digitalannai.pdf)/日本医師会
参照:日本薬剤師会認定局・薬剤師資格証について(https://www.nichiyaku.or.jp/hpki/jpaca.html)/日本薬剤師会