地域フォーミュラリとは?活用のメリットや作成の流れ、導入事例を解説
近年、後発医薬品の供給不安や医療費の増加を背景に、地域全体で医薬品の選択や使用方針を共有する「地域フォーミュラリ」の活用が注目されています。
地域フォーミュラリの普及に向けて、厚生労働省は令和8年度中に各都道府県で「地域フォーミュラリ策定に向けた検討の場」の設置を検討するよう協力依頼を行いました。
本記事では、地域フォーミュラリの概要やメリット、導入の流れ、実際の事例などについてわかりやすく解説します。
地域フォーミュラリとは
地域フォーミュラリとは、地域で協働して作成する推奨薬リストのことです。
厚生労働省では、「医師、薬剤師などの医療従事者とその関係団体の協働により、有効性、安全性に加えて、経済性なども含めて総合的な観点から最適であると判断された医薬品が収載されている地域における医薬品集及びその使用方針」と定義しています。
患者に質の高い薬物療法を提供することを目的とし、最新の科学的エビデンスを踏まえながら、地域の実情に応じて作成・運用されます。
参照:地域で協働して作成する推奨薬リスト(地域フォーミュラリ)について (協力依頼) /厚生労働省
参照:地域フォーミュラリについて /厚生労働省
2026年度診療報酬改定と地域フォーミュラリの推進
地域フォーミュラリの推進を後押しする取り組みの一つとして、2026年(令和8年)度診療報酬改定でも関連する内容が盛り込まれました。
新設された「地域支援・医薬品供給対応体制加算」および「地域支援・外来医薬品供給対応体制加算」の施設基準には、以下のように示されています。
医薬品の流通改善・安定供給の観点から、平時から地域の保険医療機関・保険薬局・医療関係団体と連携し、取り扱う医薬品の品目について情報共有や事前の合意等に取り組むことが望ましい。
このように、地域の医療機関や薬局が連携して医薬品の選択や供給体制を支えていく取り組みが重視されており、地域フォーミュラリの普及につながる環境整備が進められています。
参照:地域で協働して作成する推奨薬リスト(地域フォーミュラリ)について (協力依頼) /厚生労働省
地域フォーミュラリの対象医薬品
地域フォーミュラリの対象となるのは、主に同種同効薬が複数存在する医薬品(後発医薬品やバイオ後続品も含む)です。
令和7年度に厚生労働省が都道府県に対して実施した調査によると、地域フォーミュラリの対象として多く採用されていた薬効群は、「プロトンポンプ阻害薬(PPI)」「HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)」「アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)」でした。
また、一般社団法人日本フォーミュラリ学会では、これらを含む主な薬効群のモデル・フォーミュラリを公開しています。地域フォーミュラリを具体的にイメージしたい場合は、一度確認してみるとよいでしょう。
参照:地域で協働して作成する推奨薬リスト(地域フォーミュラリ)とは /内閣府
参照:モデル・フォーミュラリ/一般社団法人日本フォーミュラリ学会
https://formulary.or.jp/model/
院内フォーミュラリとの違い
地域フォーミュラリと混同されやすいものに、「院内フォーミュラリ(病院フォーミュラリ)」があります。
院内フォーミュラリは病院内で使用する医薬品の採用や管理を目的とするのに対し、地域フォーミュラリは病院・診療所・薬局が連携し、地域全体で薬剤選択を最適化することを目的としています。
| 項目 | 地域フォーミュラリ | 院内フォーミュラリ |
| 対象範囲 | 地域全体(病院・診療所・薬局) | 単一の医療機関内 |
| 作成主体 | 医師会、薬剤師会、自治体、中核病院など | 病院内の委員会 (薬事委員会など) |
| 目的 | 地域で統一した薬剤選択の推進 | 院内採用薬の最適化 |
| 運用 | 地域の医療機関・薬局で共有 | 病院内で運用 |
近年は院内フォーミュラリだけでなく、地域全体で共有・活用する地域フォーミュラリの普及が推進されています。
地域フォーミュラリのメリット
地域フォーミュラリは、人口減少や高齢化が進む中で、持続可能な地域医療を支える取り組みとして期待されています。
ここでは、地域フォーミュラリを導入することで得られる主なメリットを確認していきましょう。
地域医療の質向上につながる
地域フォーミュラリでは、地域の実情やエビデンスに基づいて推奨薬を選定・共有することで、地域全体で標準的な薬物療法を実践しやすくなります。
実際に、すでに地域フォーミュラリを導入している地域でも、「地域で処方薬を統一した方が病診連携が進む」「初診患者のお薬手帳の確認負担や誤処方のリスク軽減にもつながる」といった意見があげられています。
病院・診療所・薬局が共通の推奨薬リストを活用することで、各施設間の連携が円滑になり、継続的で質の高い薬物療法につながりやすくなるのです。
医薬品の安定供給を支える
地域で推奨薬リストを共有することで、医療機関や薬局の在庫管理を効率化しやすくなります。
また、平時から地域で共通の医薬品を取り扱うことで、災害時や医薬品の供給不安が生じた際にも、安定した供給体制の確保につながることが期待されています。
医療費の適正化に貢献する
患者の自己負担軽減や医療費の適正化に貢献することも地域フォーミュラリのメリットの一つです。
地域フォーミュラリでは経済性も考慮して推奨薬を選定するため、後発医薬品やバイオ後続品への適切な切り替えも進みやすくなります。
実際に地域フォーミュラリを早期に導入した山形県酒田市(人口約10万人)では、2017年から2023年までの比較で、ARBで約2億円、PPIで約1億円の医療費削減効果が報告されています。
参照:フォーミュラリの運用について /厚生労働省
参照:地域で協働して作成する推奨薬リスト(地域フォーミュラリ)について (協力依頼) /厚生労働省
参照:地域で協働して作成する推奨薬リスト(地域フォーミュラリ)とは /内閣府
地域フォーミュラリ作成・運用の流れ
地域フォーミュラリは、地域の医療体制や関係者の協議内容に応じて作成されるため、全国で統一された手順が厳密に定められているわけではありません。
ただし、厚生労働省から作成・運用の参考となる流れが示されているため、それに沿って進めるのが一般的です。
順番にご説明します。