薬剤師の資格「骨粗鬆症マネージャー」資格取得体験記
骨粗鬆症マネージャーとは?
骨粗鬆症マネージャーとは、日本骨粗鬆症学会が医療従事者を骨粗鬆症領域における専門スタッフとして基本知識と技能を認定し、その水準を向上させることを目的にした認定制度。認定者総人数(2024年4月1日時点)は、4,483名で看護師をはじめ、理学療法士、薬剤師、診療放射線技師など多様な医療従事者が取得しています。
認定者は、病院のみならず、薬局や介護サービス施設等で、1,300万人を超える骨粗鬆症患者に対して多職種と連携し、治療や二次骨折予防などに取り組んでいます。骨粗鬆症は、高齢化に伴い増加傾向にあり直接的に命をおびやかす病気ではありませんが、転倒、骨折、寝たきり、介護の原因となるので適切な治療や予防が重要な疾患の一つです。そのため、骨粗鬆症マネージャーが担う役割は大きいといえます。
骨粗鬆症マネージャー取得のきっかけ
骨粗鬆症マネージャーと老年薬学認定薬剤師の資格を取得しましたが、取得のきっかけはいずれも私自身が働く医療現場で直面した課題が発端で、それらを根本的に解決するためです。
私はこれまで、平均年齢80歳を超える整形外科や循環器内科の病棟薬剤師として働いてきました。そのなかで、薬の多剤併用による有害事象やそれらに由来する骨折で入院される患者を数多く目にしてきました。見方を変えると、これらは適切な医療が行われていないせいで生じる社会課題の一つであると感じています。
そのうえで、一人ひとりの患者により最適な薬剤選択や治療を行うことができれば、不幸な転機を辿る方を減らし、医療費の抑制や質の高い医療に貢献できるのではないかと考えました。
私が生涯を通して薬剤師として働く社会背景には、超高齢社会があります。骨粗鬆症マネージャーは、これからの時代には必要不可欠な専門性および学問領域であると考えて取得に至りました。
仕事と勉強を両立させるコツは?
生涯勉強が必要な医療従事者にとって「仕事と勉強」の線引きをすることが最適なのかどうか、一時、思考を巡らすことがありました。私が出した結論は、「勉強も仕事であり、仕事も勉強である」というマインドセットです。
特に資格を取得するうえでは、目の前の業務が忙しく、疲れて帰宅して勉強をしようとしても、テレビやYouTubeなどの誘惑に駆られたり、参考書に立ち向かったとしても力尽きて寝落ちをしたりと、思うように進まないことが幾度なくありました。
そんなときに、この自分なりのマインドセットが役に立ちました。自宅で勉強ができないときは、業務終了後、職場で自身が担当した患者を題材に、ガイドラインや論文、参考書をもとに症例検討する習慣をつけました。それが結果的に資格取得のための勉強になり、患者への貢献にもつながる一石二鳥の方法だったのです。
骨粗鬆症マネージャーの資格申請に必要なこと
資格申請の要件は以下の4点で、すべてを満たす必要があります。
1.日本骨粗鬆症学会会員であること
2.病院・診療所・介護サービス施設/事業所・薬局・臨床検査センター・自治体・保健所・教育機関などに所属して実際に医療・保健・教育活動に従事し、以下(1)、(2)のいずれかに該当する者
(1)次のいずれかの国家資格を有する。
1)保健師、2)助産師、3)看護師、4)診療放射線技師、5)臨床検査技師、
6)理学療法士、7)作業療法士、8)臨床工学技士、9)言語聴覚士、10)薬剤師
11)管理栄養士、12)社会福祉士、13)介護福祉士、14)精神保健福祉士、
15)視能訓練士、16)歯科衛生士
(2)日本骨粗鬆症学会の評議員で、医師・歯科医師以外の者
3.過去3年以内に本学会で実施する骨粗鬆症マネージャーレクチャーコースを1回以上受講していること(対象レクチャーコース:第18回~第24回。ただし、上記(2)の(2)に該当するものを除く)
4.過去3年以内注1)に本学会学術集会に1回以上参加していること学術集会開催地
注1)過去3年以内とは、認定試験を受験する年度の3年前の年度に開催された学術集会を起点とし、受験年度の学術集会も含む(2021年~2024年開催の学術集会)
骨粗鬆症マネージャーの試験会場での心構え
薬剤師国家試験を受験して以来、久しぶりの実地での資格試験であり、とても緊張したことを覚えています。
国家試験での試験を思い出し、試験会場にはこれまで勉強してきた参考書やガイドラインをお守り代わりに持参しました。人それぞれ試験前の流儀があるとは思いますが、私は試験会場に入ったら自身のこれまでの努力を信じ、精神統一に注力するタイプです。