【薬剤師の資格】医療情報技師の資格取得体験記
「医療情報技師」とは?
医療情報とは医療機関で扱われる情報を指しますがその内容は患者の病歴、経過、検査データ、投薬歴など非常に多岐にわたります。医療情報の取り扱いはその特性上、各職種の専門的な知識が必要となりますが、医療従事者の多くは情報を取り扱うための十分な教育を受けていないのが現状です。
そこで2003年に医療情報技師育成部会によって医療情報技師の資格が創設されました。医療従事者としての専門的な知識とIT分野の知識を生かして医療情報を安全かつ適切に管理・運用できる人材として医療情報技師の活躍が期待されています。
「医療情報技師」取得のきっかけ
薬剤師として働き始めて10年ほどは病棟薬剤師として患者への服薬指導や処方提案、副作用モニタリングといったいわゆる現場での仕事を行っていました。その後DI部門へ配属変更となり、医薬品マスタの管理や供給問題への対応、疑義紹介事例のデータ収集・加工、副作用情報の分析などが主な業務となりました。これまで関わってきた「現場での仕事」から薬剤師が現場で業務に専念できる環境を整備する「裏方の仕事」へ内容が大きく変わったのです。
医薬品マスタの管理一つとっても編集作業自体はそれほど難しいわけではありませんが、処方をする医師や投与を行う看護師、診療費の請求にかかわる医事部門など影響は多岐にわたります。また、膨大な種類の医薬品の中から必要な情報を集めて現場での業務に生かすデータ処理能力も求められます。
今までこのような経験がなかったため、新しい業務を行うにあたり病院情報システムがどのように運用されているのか、その中で薬剤師がどのように関わっていけばよいのかを学ぶ必要がありました。ちょうど配属先の上司が医療情報技師の資格を取得していたこともあり、自分も知識を習得することで現在の業務に生かせると思い取得することを決めました。
仕事と「医療情報技師」の資格試験勉強を両立させるコツは?
実施される3科目それぞれに対して医療情報技師育成部会よりテキストが発行されており、試験範囲も基本的にはここからの出題となります。
しかし非常にボリュームがあり、内容を読み込んで学習するのは仕事と両立するうえで時間の確保が大変かと思います。そもそも薬剤師としてこれまで学んできた知識とは全く違う分野の勉強が多く含まれるので初めのうちはテキストを読んでも内容を理解すること自体が困難でした。
おすすめはやはり過去問を繰り返し解いていくことです。過去5年分の過去問集が解答・解説付きで出版されているので、まずはそれを確認しつつ分からない部分はテキストで補うといった勉強方法がやりやすいと感じました。
私の場合は過去問を繰り返し解くため、最初に問題の解答をEXCELにあらかじめ入力して解答をした際に正解・不正解が表示される解答用紙のようなものを作成して、スマホなどでちょっとした時間に問題を解けるような環境を構築しました。
薬剤師がこの資格を受験するにあたっておそらく最も大変なのは情報処理の科目かと思います。薬剤師になるための教育課程において情報処理系の学問を勉強する機会がほとんど無いので初めのうちは分からないことだらけでした。しかし問題を解いていくうちにこれまで知らなかった全く違う分野の勉強をすることに楽しさを感じていた記憶があります。
「医療情報技師」の資格申請に必要なこと
毎年1回、8月下旬に全国13会場で医療情報技師能力検定試験が実施されます。試験は医学・医療系(50問、60分)、情報処理技術(50問、60分)、医療情報システム(60問、90分)の3科目で実施され、すべてに合格することで医療情報技師に認定されます。
受験資格は問われていないので、資格を取りたい意思があれば誰でも挑戦することができます。
なお、すべての科目に合格できなかった場合は翌年以降に不合格した科目だけを受験することができます。合格した科目は2年間有効となるのでその期間の間に残りの科目を合格する必要があります。
試験会場での心構え
会場の規模により受験者数は異なりますが、私が受験した東京会場では例年受験者が1000人以上となり、私が受験した当日も入場の際に列で待機するなど比較的混雑している印象でした。例年8月に試験が開催されるので、試験前に体力を消耗しないように水分補給などの暑さ対策を行うことは非常に重要です。
1日3科目の試験を受けるため、当日は長丁場となります。各試験の間は1時間程度空きがあるのでテキストや過去問などを確認する時間は十分にあるかと思います。外出して昼食をとることも可能ですが、外の気温を考慮すると事前に軽食を準備して会場でテスト対策をしながら済ませておくほうが良いかもしれません。