「頭痛」中医学からみるとどうなるの?
西洋医学から見た「頭痛」
「頭痛」は多くの方が経験したことのある症状。原因不明の一時的な痛みのときもありますが、何らかの疾患を持っていて、その二次的な症状として現れることもあります。この場合は見逃すと危険な病気のときが多いので、要注意ですが、一般的には鎮痛薬で痛みを一時的に抑えることが多いのではないでしょうか。
しかし、頭は臓腑の陽気が集まってくるところなので、同じ頭痛でも痛みを感じる場所によって体の不調がある箇所や原因が違います。特に内傷から来る頭痛はそれを踏まえての薬の選択をすることが必要かと思われます。では、その内容を詳しく見ていきましょう。
中医学から見た「頭痛」
「頭痛」の原因は大きく分けて2つのタイプがあります。一つが外から邪が侵入して起こる頭痛、そしてもう一つは体の中の不調により引き起こされる内傷のものです。このうち「外邪」による頭痛の特徴は急な痛みだったり、ズキズキするような痛みだったり、重くだるい痛みなどがあります。一方の「内傷」による頭痛の特徴は比較的穏やかな痛みが長く続いたり、クラクラとするような痛みに似た症状だったり、また、体調によって痛みの場所や程度が変化することなどがあげられます。
「外邪」による頭痛
まず「外邪」による頭痛をさらに詳しく見て生きたいと思います。外邪による頭痛は大きく3つに分けることができます。一つは風熱による痛み。これは頭が張ったような感覚があったり、熱や汗をかいたりすることが特徴として上げられます。これは、熱が身体の中にあることで気血の流れに異常がおこり、上逆して詰まってしまうことにより起こる頭痛になります。このタイプは熱を冷ます薬が効果を発揮します。菊花や桑葉、金銀花、連翹などが入った処方による治療が適していると言われています。
次に梅雨の季節などによく起こる頭痛ですが、頭が重かったり、食慾がなかったり、吐き気、腹部膨満感などを伴う頭痛があります。このような症状の人は体の中に湿邪というものが外部から入り込んだと考えます。湿は気の流れを滞らせるのでそれにより脾(胃)の陽気を傷つけます。それにより気が上半身でよどんでしまいなんとなく頭が重いという症状として表れます。このような人には気を巡らしたり、湿を取り除いたりする生薬、紫蘇、川芎、茯苓などが入っているものを使うとよいと言われています。
ほかには寒さによって引き起こされる頭痛があります。寒邪が体に入ることにより気と血の循環がうまくいかずそれが頭痛を引き起こすというものです。これは首のあたりの痛みや悪寒を伴うことが特徴として上げられます。また、全身性の痛みを伴うこともあります。このような人には体を温め、気を巡らせるような肉桂や桂枝のようなものを処方するのがよいとされています。
「内傷」による頭痛
次に体の中の不調から引き起こされる頭痛について考えてみましょう。
まず、虚弱体質で冷え性のひとによく起こる頭痛について見てみましょう。このタイプの人は「陽虚」の体質であることが多くあります。またこの頭痛は体を温めると頭痛がましになる傾向があります。陽虚タイプとは体を温める力が弱く、それにより体の様々なところの機能が弱ってしまうといったタイプのことをいいます。例えばトイレが近かったり、寒がりであったり、むくみやすかったりするひとがこのタイプです。このタイプのひとの頭痛は体を温める桂枝や茴香、乾姜などを含む処方が効果を示すと言われています。
ほかには高血圧や更年期障害の人に多く見られる頭痛があります。肝陽上亢という状態などがこれにあたります。肝陰虚という肝の血や、津液が不足している状況に共なって頭部を含む上半身に様々な症状が現れます。肝陰虚の人に見られる血や津液が不足するという状況においては、気の熱がとれないためそれが頭痛を引き起こすのです。この場合は、体に栄養を与え津液を補い、清熱作用を持っているものを取るとよいでしょう。
ほかには外邪のときと同様に体の中に湿、痰がたまることによって引き起こされる内傷の頭痛もあります。このタイプの人は肥満体型だったり、むくみがあったりと体質的に体の中に水分や湿を蓄えてしまい排出できない状態にあります。このタイプの人は湿や痰を取り除くはと麦や桔梗などを含むものをとるとよいとされています。
また、虚弱体質、気虚、血虚体質のひとにもよく起こる頭痛があります。このタイプの人は朝に頭痛がひどくなったり、目が乾燥したりするタイプです。このタイプは虚弱体質のために脳への栄養分が不足してしまい頭痛が引き起こされます。
同じようなタイプに気や血が滞ることで頭痛が引き起こされるタイプもあります。こちらのタイプの人は夜になると頭痛がひどくなることがよく見られます。
これらのタイプには栄養を補ったりする人参、黄耆、当帰、また血流を回すような山査子などの生薬を含むものがよいとされています。
参考文献
「漢方294処方生薬解説」根本幸夫監修 じほう
「方剤学」東洋医学健康会 神戸中医学院
「図説 中医学概念」汪先恩著 山吹書店
ほか