服薬指導にも生かせる「中医学から見る疾患」

更新日: 2022年9月4日 河本 ちかこ

「口内炎」中医学からみるとどうなるの?

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現在の日本では様々な疾患の病態、症状、薬の作用機序は西洋医学の観点からのアプローチがほとんどになっています。これらの病気を中医学の観点からアプローチするとどのように見えてくるのでしょうか。今回取り上げるのは「口内炎」。老若男女、多くの方がよくなってしまう症状でかつ繰り返すことが多い「口内炎」、ぜび中医学からのアプローチでみることで少しでも患者さんの状態の改善につなげられればと思います。

西洋医学から見た「口内炎」

「口内炎」といってもその症状や原因により様々な種類があります。今回は、比較的よく見られるアフタ性口内炎を中心に中医学的見地から見ていきたいと思います。西洋医学的にはその原因はストレスや疲れ、免疫力の低下ビタミン不足などがよく言われていますが、中医学の観点から見るとどのように見えるのでしょうか。

中医学的にも疲れであったり、ストレスや暴飲暴食などが原因で引き起こされるという考え方はほぼ同等です。しかし、その疲れやストレス、暴飲暴食などが体にどのような影響を与え、それがどのように口内炎を引き起こすかについての考え方が少し異なります。

中医学から見た「口内炎」

中医学から見た「口内炎」の分類は大きく実証タイプと虚証タイプの2つに分かれます。
まずは、実証タイプから見ていきましょう。実証タイプとは「心熱脾熱」により、舌と口に炎症を生じ、粘膜が赤く腫れてしまうといった状態になります。つまり、「心」に熱があることにより口内炎になる場合と「脾」に熱があることにより口内炎になる場合の二つのタイプがあります。若い頃の口内炎はこの状態にあることが多いと思われます。

このような実証タイプの口内炎の場合は体の中から冷やし、かつ利尿効果をもつ食材を取ることにより、水分を外に出すときに一緒に熱を外に出すことにより改善することがよく見られます。

実証タイプの口内炎

では、個々のタイプを見ていきましょう。「心」に熱がある人の口内炎についてですが、このタイプ人の症状としては、口内炎は赤く、痛みが強く、舌がヒリヒリするなどの状態になります。また体質としては、全身が熱っぽく口が渇きやすい、尿の色が濃い、舌の先が赤いなどの状態にある人が多く見られます。このタイプの人は体の中にこもって熱を冷ますために菊茶や竹葉のお茶などを飲むとよいでしょう。また、食べ物では梨や大根などを食べることで体の中の熱が落ち着きます。

次に「脾」に熱がこもるタイプは同じ口内炎でもただれがあったり、白い潰瘍ができたりします。また体質としては便秘がちだったり、口が渇いたり、舌が赤かったりといった状態の人がこれに当てはまります。このタイプは暴飲暴食をする人が多く見られます。このタイプの人は「脾」に熱がこもるだけではなく、体の中に湿がたまっていることが多いため、熱とともに湿を取り除くものを取るようにします。具体的には、ドクダミ茶、山査子、紫蘇、キュウリなどがよいとされています。

虚証タイプの口内炎

次に虚証タイプの口内炎について具体的に見ていきましょう。
このタイプは何度も口内炎を繰り返す人になります。これは脾胃が弱っており、消化する力がなく、栄養が十分にとれていないことが原因と考えられます。このタイプの口内炎は比較的年配の人に多いタイプになります。この場合は食事や薬ともに補うことが大切になってくるので、食べ物ではカボチャや山芋などを中心にした食事などがおすすめです。また漢方では「人参湯」や「六君子湯」などをとると改善することがあります。

補うことが大切な虚証タイプですが、実は細かく見ると2つのタイプがあります。

一つは気が足りないことによって口内炎が発症している人。このタイプの人は疲れ、倦怠感が強い、風邪を引きやすい、舌の色が白く、縁に歯のあとがつくといった状態が見られます。このタイプは免疫力が低下しているので、免疫力を上げるためにもしっかりと栄養を取ることが治すために必要になってきます。食べ物では「気」を補うためにも豆類などをしっかりと取ることをお勧めします。

もう一つは潤いが足りないことによって口内炎が発症している人です。このタイプも口内炎を繰り返し、慢性化しやすいことが知られています。幸いなことに口内炎の痛みはさほど強くはないので放置してしまう人もいます。このタイプは津液や血が不足していることにより、体の中の熱が取れずに熱を体内にとどめてしまっていることが考えられるので、水分をしっかりとり、潤いを与える枸杞の実や梨などをとることを意識しましょう。

いずれにせよ中医学では「心」は「舌」につながり、「脾」は「口」につながるとされることもあり、口内炎の予防では「心」と「脾」の養生が大切になります。

参考文献
「漢方294処方生薬解説」根本幸夫監修 じほう
「方剤学」東洋医学健康会 神戸中医学院
「図説 中医学概念」汪先恩著 山吹書店
ほか

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河本 ちかこ
かわもと ちかこ

薬科大学を卒業後外資系企業にてMR、新製品企画部にて勤務。その後、企業の経営を学ぶべく大学院でMBAを取得する。MBA取得後は医薬品業界の市場分析などを執筆する傍ら薬膳アドバイザー、食育インストラクターなどの資格を取得。健康な体は日々の食事からをモットーに、現在は薬局薬剤師として勤務しながら中医学の見識を深めるために中国人医師のもとで勉学にいそしんでいる。

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