学校薬剤師とは?仕事内容や給料、必要なスキルについて解説
薬剤師の勤務場所としては、薬局や病院が一般的ですが、学校で働く薬剤師がいることをご存知でしょうか。
調剤業務が中心となる薬剤師業界のなかで、学校薬剤師はちょっと特殊な働き方です。
ここでは、あまり知られていない学校薬剤師について、どのような仕事をするのか、仕事をするにはどうすればいいのかについて解説します。
学校薬剤師とは
日本国内の大学を除くすべての学校には、学校保健安全法によって、学校医や学校歯科医とともに学校薬剤師を配置することが義務づけられています。
学校薬剤師が配置されている「学校」とは、以下の通りです。
学校薬剤師が配置されている学校
- 幼稚園
- 小学校
- 中学校
- 義務教育学校
- 高等学校
- 中等教育学校
- 特別支援学校
- 高等専門学校
学校薬剤師は、これらの学校の非常勤職員という扱いになります。
また、学校薬剤師の業務内容は、学校保健安全法施行規則によって以下のように定められています。
学校保健安全法施行規則
一 学校保健計画及び学校安全計画の立案に参与すること。
二 第一条の環境衛生検査に従事すること。
三 学校の環境衛生の維持及び改善に関し、必要な指導及び助言を行うこと。
四 法第八条の健康相談に従事すること。
五 法第九条の保健指導に従事すること。
六 学校において使用する医薬品、毒物、劇物並びに保健管理に必要な用具及び材料の管理に関し必要な指導及び助言を行い、及びこれらのものについて必要に応じ試験、検査又は鑑定を行うこと。
七 前各号に掲げるもののほか、必要に応じ、学校における保健管理に関する専門的事項に関する技術及び指導に従事すること。
学校薬剤師の給料
学校薬剤師の給料は、学校や自治体によって異なります。
一例をあげると、令和5年度の栃木県では年額15万7000円となっています。
※非常勤教育職員等の報酬及び費用弁償に関する条例の運用について
学校薬剤師の給料は明らかにされていないところの方が多いのですが、おおむね年額15万円前後がめやすとなるようです。
学校薬剤師は、本業がある薬剤師が副業として携わることが多いです。
学校薬剤師の仕事内容
学校薬剤師にはさまざまな業務がありますが、ここからはそのなかでも中心となる仕事の内容について解説します。
環境衛生検査
学生が毎日を過ごす学校内の環境が衛生的に保たれているか、次のような項目について定期的に調べます。
- 水道水や飲料水の水質に問題がないか。
- プールの水に細菌などの汚染がないか。残留塩素の濃度は適正か。
- 教室内の照明が基準値を満たしているか。
- 教室内の空気に問題はないか。
- 教室内で聞こえてくる外部の音がうるさすぎないか。
薬品の管理
保健室や理科室では、さまざまな薬品が保管されています。そのような薬品が、管理状態が悪いために劣化してしまったり、誤って使用されたりすると、大きな事故につながる恐れがあります。
保健室では、必要な医薬品が準備されているか、使用期限が切れていないかなどを確認し、特に注意が必要なものについては養護教諭に使い方を説明します。
理科室の薬品についても、学生が誤って使うことのないよう、適切な方法で安全に管理されているかをチェックします。
薬に関する教育
最近は、学生の間で麻薬、違法ドラッグや薬の過剰摂取(オーバードーズ)が広がっていると報道されることも増えてきました。
そのため、学校現場でも青少年の薬物乱用防止についての教育の必要性が高まっています。
そのような危険な薬物や、タバコやアルコールの害について、専門家の立場から、学校薬剤師が、授業などで直接学生に向けて伝えることもあります。
また、持病のある学生が学校で薬を使用する必要があるときに、学校の教職員の相談を受けたり、助言をしたりすることも学校薬剤師の役割です。
学校薬剤師のメリット・デメリット
学校薬剤師の仕事は、普通の薬剤師と異なることがおわかりいただけたでしょうか。
では、学校薬剤師のメリットとデメリットにはどのようなことがあるのでしょうか。
学校薬剤師のメリット
学校薬剤師の最大のメリットは、将来を担う子どもたちを守り、社会に貢献できることです。
ふだんの仕事とはまた違うやりがいを感じることができます。
薬物に関する授業などで直接学生に接することができるのも、学校薬剤師ならではといえるでしょう。
学校薬剤師になるには、薬剤師免許のほかには特別な資格などは必要なく、薬剤師であれば誰でもなることができます。ただ、このように社会性の強い仕事なので、薬についての知識だけでなく、環境衛生に対する知識や、他の先生や学生と接するコミュニケーション能力も必要となります。
かかりつけ薬剤師を目指している方にもメリットがあります。かかりつけ薬剤師になる条件には「地域活動へ取り組んでいること」がありますが、学校薬剤師をしていれば、これをクリアすることができます。
また、通常、公務員薬剤師や管理薬剤師は副業が禁止されていますが、学校薬剤師については許可されることがあります。
学校薬剤師のデメリット
学校薬剤師のデメリットは、薬剤師の業務としては報酬が高くないことでしょう。
非常勤という扱いで、勤務時間も長くはありませんが、やはりそれなりに拘束されますし、責任も生じます。
本業の合間に働くことになるので、時間のやりくりも必要となります。
また、普段の薬局業務とはまったく違う仕事内容となり、それを一人で行わなければならないことを負担に感じる人もいるかもしれません。
学校薬剤師になるには
学校薬剤師は、非常勤という勤務形態のため、一般的な転職サイトなどに出ることはほとんどありません。
ネットが主流の世の中ですが、学校薬剤師になるためには自分の足で動く必要があります。
教育委員会や薬剤師会に問い合わせる
学校薬剤師の採用は、それまで勤務していた薬剤師が辞めた欠員補充として行われることがほとんどです。
学校薬剤師に欠員が出ると、教育委員会が地域の薬剤師会に相談し、そこから適任者を推薦してもらうというのが基本的な流れです。
「学校薬剤師になりたい」と思う人は、地域の薬剤師会に入っておくとよいでしょう。空きが出たときに情報も早く入りますし、優先的に紹介してもらえます。
また、薬剤師会に入会していなくても、地域の教育委員会や薬剤師会に連絡して、自分の希望を伝えておきましょう。
連絡したタイミングで空きがなかったとしても、欠員が出たときや、いくつかの学校を兼務している人から連絡してもらえるかもしれません。
学校薬剤師をしている人から推薦してもらう
もしまわりに学校薬剤師をしている人がいたら、「学校薬剤師をやりたい」という希望を伝えておきましょう。
学校薬剤師の欠員補充は、辞める人や、まわりの学校薬剤師からの紹介で行われることも多いのです。
学校薬剤師の仕事内容や、どのようになればいいのかについてもアドバイスを受けておくとよいでしょう。
学校薬剤師になるためには「ツテ」を作っておくことが大切だといえます。
まとめ
学校薬剤師は、子どもたちの健康と未来を守る、やりがいのある仕事です。
ただ、報酬は薬剤師としてはそれほど高くはなく、職に就くためにも薬剤師会をはじめとした地域とのつながりが必要となります。
学校薬剤師として働きたいと思う方は、積極的に「ツテ」を作っていきましょう。
いますぐの転職じゃなくても大丈夫です。転職コンサルタントに相談してみませんか?