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更新日: 2025年7月4日 薬剤師コラム編集部

AIは薬剤師の仕事を奪う? AI活用で変わる薬剤師の働き方を具体的に解説

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近年、人工知能(AI)の進化により、多くの職業が変革を迎えると言われています。
「これまでの雇用の約半分がAIとロボットに代替される」とアメリカの大学教授が発表したのが2013年。そして、ChatGPTが公開されたのが2022年です。
このような流れが進むと薬剤師の仕事もなくなるのでは、と不安を感じている人もいるのではないでしょうか。

この時代の流れのなかで、薬剤師という職業はどのような影響を受けるのでしょうか?
ここでは、AIが薬剤師の仕事に与える影響について具体的に確認しながら、薬剤師の仕事の将来性について解説します。併せて、AI時代の薬剤師に求められるスキルについても考えていきます。

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そもそもAIって何?

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もはや一般的な言葉となったAIですが、そもそもどのようなもので、薬剤師の仕事にはどのように関わるのでしょうか。
まずはAIの基本についてみていきましょう。

AIとは

AI(Artificial Intelligence、人工知能)とは、人間の知的な活動をコンピューターで再現する技術のことです。
従来のコンピューターは、大量のデータ処理は得意でしたが、何をどのように処理するのかについては人間が指示する必要がありました。
しかし、AIはデータの収集、予測、問題解決、表現といったことを自ら行えるようになったのです。

特に、近年注目されているのが機械学習やディープラーニングといった手法です。大量のデータを読み込んだAIが、そこからパターンを学び、それをもとに自分で状況に応じた判断ができるようになりました。AI自身が経験を積むことで判断の精度が向上していくのです。

AIで代替される仕事・されない仕事

従来、AIは、単純でルーチン的な作業を得意とするとされてきました。そのため、基本的にデータ処理や定型的な判断が必要な業務はAIに代替されやすいと言えます。

一方で、創造性や高度なコミュニケーションが求められる仕事はAIには難しいと考えられていました。たとえば、絵を描いたり音楽を作ったりする芸術的な仕事や、人間の感情や個別性に対応するカウンセラーのような仕事はAIには難しいとされていました。

しかし、生成AIの登場により、状況は一変しました。現在は創造的な分野や社会性を必要とする分野の仕事もAIに代替される可能性があると言われるようになりました。

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【業務別】薬剤師の仕事にAIはどう影響する?

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では、薬剤師の仕事にAIはどのように影響するのでしょうか。
薬剤師の仕事は多岐にわたり、それぞれにおいてAIが果たす役割は異なります。
ここからは、薬剤師の主要な業務ごとにAIの与える影響を解説します。

処方せん監査

処方せん監査は、患者さんへの薬の誤投与を防ぐために重要な作業です。
AIは薬剤データを迅速かつ正確に分析できるので、禁忌に当たる場合や、併用薬として不適切なものを即座に発見して知らせてくれます。
ただし、患者さんの既往歴やアレルギーといった個別の状況を考慮した最終的な判断は、引き続き薬剤師が担う必要があります。

疑義照会

処方せん監査の結果、不明な点が見つかった場合には、医師に処方内容の確認をしなければなりません。薬の効能だけでなく、患者さんの状況を把握しながら、医師と交渉するという高度なコミュニケーション能力が必要となるため、AIで代替することができません。
疑義紹介は薬剤師が責任を持って行わなければならない業務であり続けると言えるでしょう。

調剤

調剤は薬剤師の中心となる業務です。そして、現在でもAIの導入が進んでいる分野でもあります。分包機や調合ロボットなどを利用することで、正確かつ迅速な薬剤準備が可能になっています。
これは、薬剤師の負担軽減だけでなく、患者さんの待ち時間の短縮にもつながっています。

薬剤監査

調剤後に別の薬剤師が調剤結果に誤りがないかを確認する薬剤監査においても、AIの導入は効果の高い手段となります。
薬の種類や数量が正確かどうかを確認することは、AIの得意分野と言えるでしょう。
しかし、最終的な責任は薬剤師にあるため、最終的な確認作業は薬剤師の役割となります。

服薬指導

調剤と並んで薬剤師の主要な業務となっているのは服薬指導です。
患者さんに薬の効果や注意点を説明するだけならAIでもできるかもしれません。

しかし、薬剤師が相手にするのは健康状態に不安を感じている患者さんです。患者さんの症状に対して薬がどのように効くのかを説明し、薬を飲む際の注意点についても患者さんが理解しているかを確認しながら伝えるといった丁寧な対応が必要となります。薬だけでなく、患者さんの体調についてきめ細やかに聞き取り、生活についてアドバイスすることもあるでしょう。

また、患者さんは薬について不明点があったとしても、気後れしてしまって直接医師にはききにくい、というのもよくあることです。そのような患者さんの状況を聞き取って、薬剤師の説明によって不安を解消したり、場合によっては医師につないだりする、といった対応は薬剤師にしかできないことです。

このように、服薬指導には患者の状況や心理状態に合わせた柔軟な対応が必要なので、薬剤師にしかできない部分です。AIで代替することは難しいと言えるでしょう。

薬歴管理

患者さんの過去の処方データを管理する薬歴管理はAIの得意分野です。AIが薬歴データを分析することで、併用薬の相互作用や副作用の有無などを的確に把握することができます。
薬歴管理は重要な業務ですが、調剤や服薬指導に追われていると負担感が大きく、おろそかにされがちな業務でもあります。

薬歴管理の際に音声入力を使うことで、業務の負担を減らすことができるでしょう。
薬歴管理にAIを利用して負担が軽減すれば、薬剤師は本来の業務により集中することができます。AIは薬剤師がより適切な判断を下すためのサポートとなるでしょう。

事務作業

患者さんに対応する業務以外の在庫管理や請求書作成といった事務作業に関しても、AIによる自動化が進んでいます。
事務作業の省力化によって、薬剤師は中心となる業務に専念する時間を確保できるでしょう。

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AIが発達すると薬剤師の仕事はなくなる?

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ここまで薬剤師一つひとつの業務について、AIとの関係をみてきました。
現在は薬剤師の担っている分野がまだまだ多いと言えますが、AI利用の流れが進むと薬剤師の仕事はなくなってしまうのでしょうか。

薬剤師の仕事はなくならない

これまでみてきたように、AIは薬剤師の仕事を補完する役割を果たしますが、まだサポート的な位置づけであるのが現状です。
そして、これから先も、薬剤師の業務をAIが完全に代替することは難しいとされています。

調剤作業や情報管理といった業務はAIで代替することができますが、患者さんの顔色や話し方、体全体の雰囲気などから体調を読み取ってフォローしたり、患者一人ひとりの生活や家族構成に合わせた薬の飲み方を提案したりすることは、人間でないとできないことです。

また、現在はかかりつけ薬剤師など、単に処方箋に従って薬を処方するだけはなく、患者さんの生活全般をフォローすることが求められています。より薬剤師の人間的な面が必要とされているのです。
人間の判断と共感力が求められる部分は、引き続き薬剤師の専門性が必要だと言えるでしょう。

薬剤師がAIを利用するメリット

ここまでみてきたように、AIの利用にはさまざまなメリットがあります。
AIが得意としているのは、大量のデータを瞬時に処理すること、それによって薬剤の処方についてのエラーや相互作用のリスクを検出することです。
AIにデータ処理を任せることで人為的ミスを防ぎ、薬剤師はより安心して業務に取り組むことができます。

事務作業の自動化も大きな利点です。在庫管理や請求業務といった時間のかかる業務をAIに代行させれば、薬剤師にとって負担の軽減となります。

また、最新の医学知識やガイドラインに基づいた情報も、AIを利用すれば必要な時にすぐに参照できます。新薬や複雑な治療法についても、最新の知識を踏まえた提案が行えるようになります。

AIはうまく使いこなせば薬剤師の業務の負担を大きく減らせるので、メリットは大きいと言えます。

薬剤師がAIを利用する際の注意点

このように、 AIは薬剤師にとって強力なサポートツールとなります。
ただ、AIを利用する際にはいくつか注意すべき点があります。

まず、AIに依存しすぎることには注意が必要です。
AIの提案は統計的な処理やアルゴリズムに基づいており、必ずしも患者さん個々の状況に最適とは限りません。薬剤師はAIの結果を鵜呑みにせず、最終的な判断を自ら行う責任があります。

また、AIが利用するデータの精度や信頼性にも注意しなければなりません。AIの判断はデータに依存しているため、データが不正確であれば誤った結果を招く可能性があります。データ入力の段階で適切な管理を行うことが求められます。

このようなAIの限界をふまえて、薬剤師はAIを適切に活用していくことが大切になります。

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AI時代の薬剤師に必要なことは?

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これからの時代にAIは欠かすことはできず、薬剤師の仕事のなかにも代替される部分が出てきます。
では、このような時代に必要とされる薬剤師であり続けるには、どのようなことに注意しなければならないのでしょうか。

AIで代替できない能力を伸ばすことが大切

これからの薬剤師には、AIが補えない分野で自分の価値を高めることが求められます。

薬剤師がAI時代において価値を高めるためには、AIでは代替できないコミュニケーション能力を磨くことが極めて重要です。特に、かかりつけ薬剤師制度や地域医療の充実が進むなかでは、患者一人ひとりに寄り添う対話力が求められています。

また、高齢化社会に対応して推進されている地域医療では、ケアする側の連携が重要です。医師や看護師、介護職との連携のなかで、患者さんに最適なケアを提供するためにも、薬剤師のコミュニケーション能力は不可欠です。

患者さんとのコミュニケーション

患者さんの言葉に耳を傾け、ニーズを正確に把握したり、つらい気持ちをケアしたりすることは、AIにはまねできません。
たとえば、かかりつけ薬剤師は、患者の健康状態や生活背景を深く理解し、適切な薬物治療をサポートする役割を担います。患者さんと継続的な関係を築く中で、治療へのモチベーションを高めることが必要です。

AIは処方が適正かどうかを判断することはできても、患者の感情や細やかなニーズをくみ取り、信頼関係を築く能力は持ちません。薬剤師にとって、患者さんと適切にコミュニケーションをとっていくことの重要性はますます強くなっていくといえます。

AIを適切に使う力

AIツールを効果的に活用するためには、その仕組みを理解して適切に運用することが必要となります。
同時に、AIツールの限界についても理解して、必要な部分は確認したり、薬剤師自身が担当したりする判断力が求められます。

AIが提案した情報をどのように患者ケアに利用するかを決定するのも薬剤師です。
AIは適切に利用すれば非常に大きなサポートとなります。新しいことに尻込みせずに積極的に学んで使っていく姿勢が大切だと言えます。

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まとめ

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AIの進化は、薬剤師の業務効率化を大きく進めています。
そして、AIの登場は、人間にしかできない役割をより際立たせているとも言えます。
どんなにAI化が進んでも、対人業務である薬剤師の仕事がAIに完全に代替されることはありません。

これからは、薬剤師が上手にAIを活用して、患者さんのケアをさらに深めることが重要です。
AI時代を迎えるにあたり、薬剤師はAIを使いこなす力とともに、人間らしさがより必要になると言えるでしょう。

ご希望にあった職場への転職、お気軽にご相談ください。

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薬剤師コラム編集部

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