フリーランス薬剤師という選択。年収や働き方、仕事の獲得方法など解説


働き方の多様化が進むなかで、フリーランスという働き方も広がってきました。
薬剤師は調剤薬局や病院などの固定された職場で安定して働くというイメージがあります。しかし、もっと自由に働きたいと感じている人もいるのではないでしょうか。
薬剤師がフリーランスで働くことは可能なのでしょうか?また、フリーランスとして働くためにはどうすればいいのでしょうか?
ここでは、フリーランス薬剤師の働き方や仕事の探し方、収入などについて詳しく解説します。
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フリーランス薬剤師の働き方

まず、フリーランス薬剤師とはどのような立場になるのかを確認してみましょう。
フリーランス薬剤師とは
フリーランス薬剤師は、特定の企業と雇用契約を結ぶのではなく、個人事業主として独立して仕事をする薬剤師のことです。
フリーランス薬剤師と勤務先は業務委託契約を結んで働くのが一般的です。
仕事の内容、働く場所や時間は自分で選びます。仕事を探して契約することや、仕事のあとの報酬のやりとりや税金の手続きなども、基本的に自分で行うことになります。
派遣薬剤師との違い
フリーランスと同じように自由な働き方として、派遣薬剤師を思い浮かべる人もいるのではないでしょうか。しかし、フリーランスと派遣には大きな違いがあります。
派遣薬剤師は、派遣会社に雇用され、そこから薬局やドラッグストに派遣されて仕事をするという働き方です。立場としては、派遣会社に雇用された社員ということになります。雇用期間に制限があり、ボーナスもありませんが、産休や育休などの制度も法律に準じて整っています。派遣の場合、仕事先は派遣会社が探して紹介してくれます。
一方、フリーランス薬剤師は、自分自身でクライアントと契約を交わし、報酬や時間についても交渉します。有給休暇や産休・育休などはありません。
フリーランスは派遣薬剤師より自由度が高い反面、安定性に欠ける面もあります。
フリーランス薬剤師の仕事内容

フリーランス薬剤師の仕事は何かで決まっているということはありません。自分で新しく作ることも可能です。
ここからは、フリーランス薬剤師が行っている主な仕事について紹介します。
1. 調剤薬局・ドラッグストア・病院で働く
フリーランスであっても、一般的な薬剤師と同じように、調剤薬局やドラッグストアで働くことができます。この場合は、勤務先と業務委託契約を結ぶことになります。
働き方はお互いのニーズに応じてさまざまです。フルタイム薬剤師と同じように働く場合もあれば、限定された業務や、短時間勤務のみということもあります。勤務先と交渉しながら決めることになります。
2. メディカルライター
医薬品に関する専門知識を活かして、医療記事やコラムを執筆するメディカルライターという働き方もあります。
医薬品に関する記事には、薬機法をふまえた正確さが求められます。専門家である薬剤師に対するニーズは高いのです。
メディカルライターの活動場所は、医療系の広報誌や雑誌などのほか、医療系メディアなどに広がっています。
3. 医療翻訳
語学力が高い人であれば、医療翻訳という選択肢もあります。
医療翻訳では、日本語・英語の医療に関する文献や、医薬品のドキュメント、臨床試験データなどの翻訳を行います。
語学力に加えて高度な専門知識が必要ですし、常に新しい情報をキャッチアップしていくことも求められます。
医療翻訳は高いスキルを必要としますが、安定した需要があるので、報酬も高水準が見込めます。
4. サイトを運営する
薬剤師向けの情報発信サイトや一般向けの健康情報サイトを自分で運営し、広告収入やアフィリエイトで収益を上げる方法もあります。YouTubeなどの動画配信サイトで健康に関する動画を配信することもできます。
5. 薬局のコンサルタント
ドラッグストアや調剤薬局で働きながら大きな成果を上げた人が、そのノウハウを伝えるコンサルタントとして独立するという道もあります。
経営コンサルタントが企業や店舗に対して売り上げアップのためのコンサルティングを行うように、薬局経営者に対して、業務改善や集客支援、スタッフ教育などのコンサルティングを提供します。
コンサルティングを行いながら、そのノウハウをインターネットで発信したり、メディカルライターとして執筆したりというように、仕事の幅を広げていくことも効果的です。
フリーランス薬剤師のメリット

このようにさまざまな働き方ができるフリーランスですが、どのようなメリットがあるのかをみていきましょう。
1. 時間が自由
フリーランスであれば、基本的には働く時間や日数を自分で決められます。
薬局などで勤務する場合は契約に従って働かなければなりませんが、どのくらいの時間働くかは、相手と相談しながら決めることができます。
また、メディカルライターや翻訳であれば、自分で仕事をする時間をコントロールすることができます。
ライフスタイルに合わせた働き方が可能なのがフリーランスの大きなメリットです。
2. 収入が増える可能性がある
フリーランスになると、収入面では振り幅が大きくなります。能力を認められて高い時給で業務委託契約を結んだり、結果を出して人気コンサルタントになったりすれば、正社員以上の報酬を得ることも可能です。複数の仕事を並行して収入を増やすこともできます。
自分の頑張りがそのまま反映するのがフリーランスの収入だと言えるでしょう。
3. 色々な仕事ができる
薬剤師の仕事は、調剤薬局、病院など職種によって違いはありますが、基本的に調剤が中心となります。また、ルーティンワークに陥りやすい面もあります。
フリーランスであれば、調剤だけでなく、執筆や翻訳、コンサルティングなど、幅広い活動をすることがあります。また、薬剤師の仕事にとらわれず、ほかの分野まで仕事を広げていくことも可能です。
4. 経費を利用して節税できる
フリーランスは個人事業主なので、お金の管理は自分でしなければなりません。
これは面倒に思えるかもしれませんが、通信費や交通費、書籍代などの業務に関連する費用を経費として計上し、節税につなげることができます。仕事に使うパソコン代や、自宅で仕事をしている人は家賃の一部も経費にすることができます。
自分で会計の勉強をする必要はありますが、経費や控除をうまく使って節税すれば、企業に勤務する薬剤師と同じ収入でも多くのお金を手元に残せることもあります。
フリーランス薬剤師のデメリット

次に、フリーランス薬剤師のデメリットについても確認しておきましょう。
1. 収入が不安定
フリーランスが結ぶ業務委託契約は、雇用契約ほど安定したものではありません。金額もまちまちですし、契約が途切れると収入がゼロになることもあります。
仕事が途切れることのないよう、複数の仕事を並行させたり、営業を続けたりする必要があるかもしれません。
フリーランスは自分の努力次第で高収入を得られる反面、このようなリスクがあることは考えておきましょう。
2. 年金や健康保険が全額自己負担になる
正社員として働いていると、年金や健康保険などの社会保険は会社が手続きをしてくれますし、保険料も半額は会社負担となります。
しかし、フリーランスは自分で国民健康保険や国民年金に加入するため、手間が増え、会社員時代より負担も増えます。
国民年金は厚生年金分の上乗せがないので、将来もらえる年金額は少なくなります。
国民健康保険には、傷病手当金や出産手当金といった、病気や出産で働けなくなった場合に支給される手当がありません。また、家族を扶養に入れることもできません。
社会保険に関しては、会社員のほうが有利な面があります。
3. 事務や営業の仕事が増える
正社員として働いている間は、会社が税金や社会保険の手続きをしてくれましたが、フリーランスになるとすべて自分で行わなければなりません。
仕事に関するお金のやり取りはすべて帳簿に記録して、確定申告を行う必要があります。
また、相手との契約交渉や請求書の作成など、実際の業務以外の事務作業が増えます。
仕事を絶やさないためには、自分で営業もしなければなりません。
このような、本業に付随して直接お金が発生しない仕事が増えることも知っておきましょう。
4. 社会的信用が下がる
フリーランスになると、社会的信用が下がる可能性があります。
安定した収入がない場合、ローンの審査やクレジットカードの発行、賃貸住宅の審査などで不利になる場合があります。
フリーランスであっても収入の実績があれば問題ありませんが、社会的信用が下がる可能性があることはあらかじめ把握して、対策しておくようにしましょう。
フリーランス薬剤師の収入

フリーランス薬剤師の年収は働き方や受注案件により大きく異なります。
安定して高額の仕事を得ることができれば、正社員と同じように稼ぐこともできます。また、コンサルタントとしてさまざまな依頼を受けるような立場になれば、年収1000万円を超えるような高収入を得ることもあるかもしれません。
一方、仕事の単価が低い場合や、単価は高くても仕事量が少ない場合は、低収入にとどまることもあります。
自分が希望する働き方でどのくらい稼げるかは、きちんと把握しておきましょう。
フリーランスの仕事の探し方

フリーランスとして働きたいと思ったとき、仕事はどのように探せばいいのでしょうか。
現在はフリーランスと相手先を結ぶさまざまなサービスが登場しています。
1. マッチングサービス
最近は、フリーランス薬剤師と、薬剤師を求めている調剤薬局やドラッグストアをつなぐ、フリーランスに特化したマッチングサービスが登場しています。
まだ一般的な求人サイトに比べると求人数は少ないですが、効率的に仕事を探すことができます。
2. クラウドソーシング
メディカルライティングや翻訳の仕事は、クラウドソーシングサイトで探すことができます。薬剤師の有資格者に対しては、通常よりも高い単価の案件も多くなっています。
3. 直接営業する
自宅の近くで探したい、この職場で働きたいという希望がある場合は、フリーランスとして働けないかと直接営業をかけることもできます。
相手先が薬剤師を必要としているタイミングでなければすぐに契約に結びつくことは難しいかもしれませんが、存在を知ってもらえれば、人が辞めたときなどに声をかけてもらえることがあるかもしれません。
4. 知人の紹介
薬剤師の業界はある意味狭い世界ですが、そのような業界だからこそ強いのが人のつながりだとも言えます。
どこかの薬局で人を募集している、フリーランス薬剤師が働いている職場がある、そんな情報は人を介して伝わってきます。また、以前働いていた職場で人が必要となったときに、フリーランスとして契約してもらえるかもしれません。
フリーランスというと人間関係に縛られないというイメージがありますが、実は大切なのが人脈です。薬剤師仲間や以前の職場との人間関係は大切にしましょう。
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フリーランス薬剤師になるステップ

フリーランスになるためにはどのようなことが必要なのでしょうか。ここからは必要なステップについて解説します。
1. 開業届を出す
個人事業主として仕事を始めるときには、税務署に開業届を提出します。
併せて、青色申告承認申請書も提出しましょう。青色申告承認申請書とは、確定申告のときに青色申告をするために提出する書類です。
開業届を出さなくてもフリーランスとして仕事をすることはできますが、何も手続きをしていないと確定申告の際に白色申告となります。
白色申告は青色申告に比べると税制面で不利になります。
青色申告をするためには開業届が必要となるので、フリーランスとして活動を始める際にはまず開業届を出すことをおすすめします。
2. 年金・健康保険の手続きをする
これまで勤務先で年金や健康保険に入っていた人は、国民年金や国民健康保険に切り替える手続きが必要です。国民年金の金額は一定ですが、国民年金保険は収入によって金額が変わります。
健康保険は前職のものを任意継続することもできますが、どちらのほうが金額が低いかはケースバイケースなので、きちんと確認してから判断するようにしましょう。
3. 保険薬剤師登録について確認する
保険薬局で調剤業務に必要な保険薬剤師登録についても確認しておきましょう。申告や変更の必要がある場合は手続きを忘れないようにします。
フリーランス薬剤師になる際の注意点

自由に働ける点が魅力のフリーランスですが、不安定な面も大きいため、注意しなければならないポイントがあります。
働き始める際には、以下のことを心にとめておきましょう。
1. 最初は副業や派遣薬剤師から始めるのがおすすめ
いきなり安定した仕事を辞めてフリーランスに転向するのはリスクが大きくなります。
フリーランスにはこうしなければならないというきまりやルートはないので、まずはリスクを抑えるため副業や派遣からスタートすることをおすすめします。
本業で安定した収入をキープしながら副業としてライターの仕事やウェブサイトの運営などを始めれば、どのくらい仕事があるのか、どのくらいの収入になるかをあらかじめ確かめることができます。
また、薬局勤務のフリーランスをめざす場合にも、派遣としてさまざまな職場を経験しておくとよいでしょう。
フリーランス薬剤師は忙しい職場のヘルプ要員として求められることも多いので、派遣薬剤師と立場が似ています。
派遣先でどのような仕事をするのか、スタッフとのコミュニケーションはどのようにとればいいのかなどを経験しておけば、フリーランスとして独立したときにも役立つでしょう。
また、派遣先とよい関係を作っておけば、独立したときに声をかけてもらえるかもしれません。
2. 金銭面で準備をしておく
フリーランス薬剤師は収入面が不安定となります。
フリーランスとしてスタートを切る際には、ある程度まとまった貯金をしておくと安心です。一般的には生活費の半年分を準備しておくとよいと言われています。
また、持っておきたいクレジットカードがある人は、正社員のうちに申し込みをしておきましょう。
3. 状況の変化に柔軟に対応する
フリーランスの働き方にこうしなければならないというきまりはありません。
フリーランスとして働いていることが知られると、思ってもみなかった仕事の依頼が来るかもしれません。さまざまな仕事に積極的にチャレンジすることが大切です。
一方で、思ったように仕事が見つからないこともあるでしょう。そのようなときには、派遣として働いてみたり、再び社員として働いたりしてもOKということも頭に置いておきましょう。
薬剤師免許があれば、再び社員として再就職することもスムーズです。
状況に応じて仕事の内容や働き方を柔軟に変えられるようにしておきましょう。
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まとめ

フリーランス薬剤師は自由度が高く、さまざまな働き方が可能ですが、その反面リスクも伴います。
フリーランス薬剤師として働き始める際には、できる範囲から始めて、自分のスキルやキャリア目標に合わせて働き方を広げていくことが成功の鍵となります。
薬剤師資格を活かしながら、理想とするライフスタイル、働き方にチャレンジしてくださいね。
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