オンライン服薬指導をする薬剤師に必要なことは?向いている人の特徴も解説


コロナ禍の制約の多い状況のなかで、ネットを通じたコミュニケーションが一気に広がりました。一般企業ではネット会議が一般的になり、医療現場でもオンライン診察が広がりを見せています。それに伴って、オンライン服薬指導も注目を集めています。
オンライン服薬指導には、患者の利便性向上や感染リスク低減など、多くのメリットがあります。
本記事では、オンライン服薬指導の概要や薬剤師の役割、必要なスキル、転職方法などを詳しく解説します。
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オンライン服薬指導とは

医療のデジタル化やオンライン化のなかにオンライン服薬指導も含まれています。
まず、医療現場のオンライン化についてみていきましょう。
オンライン診察とは
オンライン診察とは、患者がスマートフォンやパソコンを使用して、ビデオ通話を通じて医師の診察を受けることを指します。オンライン診察により、自宅に居ながらにして医師の診察を受けることができます。
オンライン診察は、対面診察と適切に組み合わせて実施することが基本とされています。また、原則としてかかりつけの医師が担当します。
オンライン服薬指導とは

引用元:オンライン診療について /厚生労働省
オンライン服薬指導は、薬剤師がビデオ通話アプリを使って患者に服薬指導を行うサービスです。患者は自宅にいながら薬の使用方法や注意点について薬剤師から説明を受け、必要な薬を入手することができます。
オンライン服薬指導は、主にオンライン診察によって処方箋が発行されたケースや、在宅医療の患者さんに対して行われています。
オンライン服薬指導は調剤報酬の加算対象
患者さんの病気を扱う医療行為は、直接患者さんの身体の状況を確認しながら行うことが基本です。
しかし、社会で高齢化が進む一方で、地方では過疎化に伴って医療施設が減少し、受診が困難な高齢者が増加することが問題となってきました。
そのような状況を改善するため、1997年に当時の厚生省によって遠隔診療が始まりました。その後、遠隔診療へのニーズの高まりに従って対象となる範囲が拡大していきます。
そして、コロナ禍のなかオンライン診療が一気に広がることになりました。
保険薬局に対しても、2020年に厚生労働省から時限的にオンライン服薬指導を解禁する「0410対応」が発出されました。
また、2022年4月からは薬機法の規制が緩和され、より利用しやすくなりました。
2024年度調剤報酬改定において、連携強化加算の施設基準の要件に「オンライン服薬指導の体制整備」が追加されました。
このように、法的にもオンライン服薬指導は推進されています。この流れは今後も続くと考えられます。
オンライン服薬指導の法的な情報を知りたい方は、厚生労働省の次のページを参考にしてください。
参照:オンライン服薬指導に関する情報 /厚生労働省
オンライン服薬指導のメリット

オンライン服薬指導には多くのメリットがあります。
まず、患者の通院負担が軽減されます。特にアクセスの悪い地域や高齢者、介助が必要な患者さんにとって大きなメリットとなります。
また、薬局内での待ち時間や対面での服薬指導による感染リスクを避けられます。そのため、感染症対策にも効果的です。
これまでは、在宅医療を受けている患者さんには、患者さんの家を薬剤師が訪問して対面指導をする必要がありました。オンライン服薬指導によって、患者さんだけでなく、薬剤師の負担も軽減されることになりました。
このように、オンライン服薬指導は薬剤師の勤務に関してもメリットがあります。
従来は、薬剤師がオンライン服薬指導を実施する場所は薬局内とされていました。しかし、社会のオンラインの広がりに従って、薬局以外の場所からも服薬指導が行えるようになりました。薬剤師も柔軟な働き方が可能となっていくでしょう。
オンライン服薬指導の流れ

オンライン服薬指導の基本的な流れは以下の通りです。
1. オンライン診療
患者さんが医療機関を受診します。この受診は、対面のケースもオンライン受診もあります。
2.処方箋の受付
処方箋が薬局に提出されます。
医療機関から薬局にFAXやオンラインで処方箋データが送付される、患者さんがアプリを利用して送付するといった方法があります。
3.オンライン服薬指導の予約
患者さんが、アプリや薬局サイトを通してオンライン服薬指導を予約します。
4.ビデオ通話による服薬指導
予約した日時に薬剤師がオンラインで服薬指導を行います。
5.薬の配送
決済後、薬を患者さんの家へ配送します。
6.医療機関から処方箋が送付される
医療機関から処方箋の原本が送付されるので、受領し、保管します。
オンラインでのピルの処方

避妊や生理のコントロールのためのピル処方もオンラインのニーズが高くなっています。
ピルの処方にも医師の診察が必須です。インターネットやアプリを通じてオンラインで受診後、問題がなければピルが発送されます。
なお、緊急避妊薬の処方に関しては、医療機関でのオンライン診察後に、医療機関から送られた処方箋データをもとに、来院する患者さんに服薬指導を行い、服用していただくというケースもあります。
緊急避妊薬について、詳しくはこちらのサイトをご覧ください。
参照:オンライン診療に伴う緊急避妊薬の調剤について /厚生労働省
オンライン服薬指導での薬剤師役割と働き方

オンライン服薬指導によって、薬剤師の役割や仕事はどのように変わるのでしょうか。
オンライン化への対応について確認してみましょう。
薬剤師の役割
オンライン服薬指導における薬剤師の役割は多岐にわたります。
オンラインであっても、対面の場合と同じように薬の効果や副作用の説明、正しい服用方法の指導、患者の疑問や不安への対応が主な業務です。
また、患者さんが指示された通りに薬を飲んでいるかという服薬アドヒアランスの向上支援や、他の薬との相互作用の確認も重要な役割です。
また、オンラインのメリットとして、患者さんの自宅の様子が把握しやすいことがあげられます。残薬の状況を確認したり、生活の状況を聞き取ったりしていきながら、生活習慣改善のアドバイスも行っていきましょう。
どこで働くの?
オンライン服薬指導は、従来は薬局内で行うことが基本でした。
しかし、一般的な在宅勤務の広がりもあり、薬局以外の場所でオンライン服薬指導を行うことができるようになりました。
自宅からリモートワークとしてオンライン服薬指導を行うことも可能です。子育てや家事と仕事を両立したいママ薬剤師や、配偶者の転勤に伴って引っ越しせざるを得ない薬剤師にとって、大きなメリットといえます。
オンライン医療の広がりに伴って、薬剤師のリモートワークも増えると予想されます。
オンライン服薬指導に必要なスキル

オンライン服薬指導を行うために薬剤師に必要なスキルにはどのようなものがあるでしょうか。
ITスキル
オンライン服薬指導には一定のITスキルが求められます。
ビデオ通話ソフトの操作やオンライン予約システムの使用に習熟する必要があります。
オンラインでの個人情報のやり取りも多いため、セキュリティ対策を理解し、確実に実践していくことも重要です。
また、スマートフォンやPCの扱いに慣れていない患者さんの状況を確認し、使用方法をフォローすることも必要となってきます。
コミュニケーションスキル
服薬指導においては、オンラインであってもコミュニケーション能力が不可欠です。
画面越しの患者さんの状況から患者さんの状況を読み取る、より細やかな対応が必要となります。
非言語コミュニケーションの活用や、患者の理解度の確認と適切なフォローアップなど、対面とは異なるコミュニケーションスキルが求められます。
情報収集力
オンライン診療やオンライン服薬指導は現在広がりを見せている分野です。厚生労働省の対応や法律も変化しています。また、ウェブ上でも次々に新しいサービスが登場しています。
このような状況のなかで、薬剤師の側でも常に最新の医薬情報を収集し対応していかなければなりません。
オンライン服薬指導に向いている薬剤師

オンライン服薬指導に向いている薬剤師の特徴として、以下のようなものがあげられます。
オンライン服薬指導に向いている薬剤師の特徴3つ
- IT技術に興味があり、新しいツールの習得に積極的な人
- コミュニケーション能力が高く、画面越しでも患者との信頼関係を構築できる人
- 自宅で家事や育児と仕事を両立させたい人
新しいデジタル技術や法律の変化に柔軟に対応しながら、画面越しても患者さんとリアルと同じようにコミュニケーションをとっていける薬剤師は、働きやすさを感じることができるでしょう。
オンライン服薬指導の職場に転職するには

このように働き方の自由度が高いオンライン服薬指導に魅力を感じ、転職したいと考える人も多いのではないでしょう。
オンライン薬剤師として働くにはどうすればいいのでしょうか。
転職エージェントに登録する
オンライン服薬指導の仕事に就きたい場合は、薬剤師専門の転職エージェントを利用することをおすすめします。
オンライン服薬指導は、近所の薬局で探す、知人から紹介してもらうといった従来の方法で探すのは難しいでしょう。
転職エージェントに登録して、オンライン服薬指導で働きたいという希望を伝えておけば、オンライン服薬指導の求人が出た場合に紹介してもらえます。具体的な働き方についても相談に乗ってもらえるでしょう。
ネットで自分で探す
オンライン服薬指導に関しては、さまざまな企業が新しいアプリやサービスを開発しています。そのようなサービスがオンラインで働ける薬剤師を募集していないか探してみることもできます。
この分野は変化が激しいので、常にアンテナを張って情報をキャッチするようにしましょう。
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まとめ

オンライン服薬指導は、医療のデジタル化が進む中で、薬剤師の新たな活躍の場として注目されています。患者の利便性向上や感染リスクの低減など、多くのメリットがあり、これからますます広がっていくと考えられます。
オンラインの方面にキャリアを広げたいと考える人は、従来の対面での服薬指導のスキルに加えて、ITスキルやオンラインコミュニケーション能力を磨いていきましょう。
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