薬剤師に将来性や未来はないのか?薬剤師の仕事がなくなる可能性はある?
「薬剤師は飽和状態になり、将来性がない」「AIや機械化で仕事がなくなる」というのを聞いたことはありますか?薬剤師の数は年々増加し、都市部では競争が激化しています。本当に薬剤師はいらない職業なのでしょうか。
この記事では、薬剤師の将来性、未来がどうなっていくのかを予想します。また今からの時代、薬剤師に求められるスキルについても考えてみましょう。
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薬剤師はいらない?
まず、「薬剤師はいらない」と言われるのはなぜかを確認してみましょう。
薬剤師は飽和状態なの?
1998年時点で約20万人だった薬剤師は、2016年には約30万人を突破しています。この背景には処方せん数の増加、薬学部の新設などがあります。
厚生労働省が発表した令和4年(2022年)薬剤師統計によれば、薬剤師の数は32万3690人で、前回(2020年)の調査より1708人(0.5%)の増加となっています。男性は12万4183人、女性は19万9507人です。
薬剤師の数は微増傾向ですが、日本の総人口は減少していきます。「将来的に薬剤師が必要なくなるのでは?」「薬剤師が飽和状態なのでは」という懸念が生じることと思います。
実際、薬剤師の偏在により、都市部では薬剤師が余っている状態です。
しかしながら、薬剤師はいらなくなったり、将来性がなくなったりする職業ではありません。その理由をひとつずつ見ていき、これからの時代に求められる薬剤師を考えてみましょう。
薬剤師の業務は薬剤師以外ができるの?
薬剤師業務の一部を行える資格に、登録販売者があります。登録販売者とは ドラッグストア、薬局などで風邪薬や鎮痛剤といった医薬品を販売できる専門資格です。この資格があれば、医薬品の多くを占める第二類・第三類医薬品の販売が可能になります。
もともと薬剤師は、調剤・販売業務の両方を行い、業務負担が大きかったのです。そこで、薬剤師の人手不足を補う目的で、登録販売者という資格が作られました。令和6年度(2024年)は新たに22,814人の合格者を出し、登録販売者の受験者数も増加傾向にあります。
この登録販売者資格により、薬局以外の大型ドラッグストア、スーパー、家電量販店などでも医薬品の販売ができるようになりました。インバウンドに対する需要などで、出店も増えています。
しかし、登録販売者と薬剤師には決定的な違いがあります。
それは、登録販売者は一般医薬品の第2類、第3類医薬品しか取り扱いできないことです。薬剤師は、処方せんを含むすべての医薬品を取り扱うことができます。
登録販売者から薬剤師になることもできますが、6年制の薬学部卒業、薬剤師国家試験の合格を考えると現実的ではありません。
登録販売者が薬剤師の仕事を奪うことはありません。共存することで、薬剤師は調剤業務や服薬指導などに集中することができます。
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薬剤師は将来性がない
薬剤師の将来性についてAIが業務を代替してしまうと心配する声も聞かれます。
薬剤師業務でのAI利用については、在庫管理、請求業務などの自動化が進むと思われます。
しかし、疑義照会や服薬指導などの高度なコミュニケーションに関しては、AIに取って代わられることはありません。薬剤師にとっては、AIの活用により業務負担が軽減され、対人業務に集中できるのが大きなメリットです。
高度なコミュニケーションは、調剤薬局、病院薬剤師、在宅医療などで必要とされる能力です。これらの分野は需要が十分にあり、薬剤師の将来性は明るいと考えられます。
しかしながら、自らのスキルアップも大切です。
研修認定薬剤師として専門性を高めることは、かかりつけ薬剤師としての必須条件となっています。専門の資格取得を考えているなら、専門医療機関への転職も近道です。また、在宅医療の患者数もここ数年急増しています。薬剤師としての在宅医療の知識や経験はこの先もニーズがあります。
日々の忙しさはあると思いますが、コミュニケーション、スキルアップを意識して、患者さんから選ばれる薬剤師を目指しましょう。
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薬剤師に求められること
それでも薬剤師として不安を感じている方がいれば、求められる薬剤師になれる準備をしておきましょう。キーワードはセルフメディケーション、地方での薬剤師不足、在宅医療、IT化です。それぞれについて見ていきます。
セルフメディケーションによる需要
セルフメディケーションとは、世界保健機構で「自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当をすること」と定義されています。セルフメディケーションを推進し、個人個人が自発的な健康管理をすることで、医療費の適正化が可能になります。さらに厚生労働省は、所得控除が受けられるセルフメディケーション税制も実施しています。
薬剤師は、セルフメディケーションにおいて、患者さんの健康相談、体調管理、市販薬の利用や病院の受診などをサポートする役割を持っています。患者さんが症状に合った薬を使えるためにも薬剤師としての知識をつけておきましょう。
地方はまだまだ薬剤師不足?
前述したように、薬剤師は令和4年(2022年)に32万3690人を数えます。厚生労働省の統計によれば、10年前の2012年時点では20万5716人であり、右肩上がりに増えてきました。
これだけの数の薬剤師がいても、地方では依然として薬剤師の人材不足が続いています。
全国の薬局、医療機関の「人口10万人対薬剤師数」を見てみましょう。
令和4年(2022年)の厚生労働省のデータでは、全国平均が202.6人。1位は徳島県の244.0人、2位が兵庫県の236.6人、3位は東京都235.7人です。平均を超えている都道府県は12県しかなく、地方では薬剤師不足が続いています。徳島県の薬剤師数が多いのは、国立大学と私立大学の2つに薬学部があるためです。薬剤師が一番少ないのは、149.4人の沖縄県。福井県163.6人、青森県167.2人が続きます。
薬剤師は都市部に集中し、地方の特に病院では人員不足に陥っています。不足を補うために、地方では給与を高く設定している病院・薬局が多くあります。地方では薬剤師が活躍する場が多くあるといえるでしょう。
在宅医療
在宅医療とは、患者さんが住んでいる家もしくは施設で行う医療行為のことです。これには医師、看護師、薬剤足、介護士などが関わっています。対象となる人には、高齢者、がん患者、難病の患者や障害者などが含まれます。
在宅医療では、医師を中心とした医療チームの中で薬剤師は活躍します。在宅医療で薬剤師がやるべきことは「薬物療法」です。患者さんの健康状態を把握し、安全な服薬をサポートすることが求められます。
そのためには患者さんの自宅へ薬を届け、服薬指導をすることが必要です。また、医師、看護師とはチームとなるので、チーム力、コミュニケーション力があると、活躍の場が広がります。
ITを使いこなす
調剤薬局にもIT化の波が押し寄せています。
身近なところでは電子薬歴があります。患者さんの薬の処方歴、副作用歴、服薬指導や疑義照会などを記録し、残すことができます。これには薬歴の紛失を防ぎ、添付文書が参照できるなどのメリットがあります。
また、患者さん側でも「電子お薬手帳」をスマホアプリで利用する方が増えています。患者さんとしては、お薬手帳を忘れることなく、緊急時にも医療機関に常用薬を提示することが可能です。2022年時点では、電子お薬手帳の普及率は50パーセント程度であり、今後の普及が課題となっています。
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まとめ 薬剤師に未来はない、将来性がないは嘘
薬剤師の将来性と職業がなくなってしまう可能性について考えてきました。
薬剤師は登録販売者に仕事を奪われることはありません。それどころか、セルフメディケーションの推進、地方の薬剤師不足、在宅医療の拡大、IT化・AIの活用により、活躍の場が広がっていくことでしょう。
時代の変化により、薬剤師の仕事は対物から対人への比重が増しています。コミュニケーション能力が高く、対人業務ができる薬剤師はいつの時代も必要な存在です。ぜひとも求められる薬剤師を目指したいものです。
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