「調剤ロボットの役割とは?メリットや薬剤師が不要になる説を解説
AIをはじめとするテクノロジーの進化は、医療の現場にも大きな変革をもたらしています。薬剤師の世界でも、全自動分包機などの利用は欠かせないものとなっています。
この流れのなかで、調剤業務におけるロボットの導入も進んでいくでしょう。
2019年には、日本で初めて調剤作業を完全に調剤ロボットに任せた「調剤ロボット薬局」も誕生しています。
しかし、調剤ロボットが進むと薬剤師の仕事はどうなるのか、不安に感じている人もいるのではないでしょうか。
ここでは、調剤ロボットの現状やそのメリット・デメリットについて深く掘り下げていきます。併せて、これからの調剤の姿や薬剤師の仕事がどうなるのかについても考察します。
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調剤ロボットとは
調剤ロボットとは、文字通り、ロボット技術を活用して医薬品の調剤業務を自動化するシステムのことです。
まず、調剤ロボットの内容や、どのように展開されてきたかについて確認してみましょう。
調剤ロボットの種類
調剤ロボットと一口に言っても、その種類は多岐にわたります。
主な調剤ロボットには、次のようなものがあります。
・散薬調剤ロボット
処方せんに基づき、複数の散薬を自動で計量し、分包するシステムです。秤量ミスを防ぎ、衛生的な調剤が可能です。
・全自動錠剤分包機
処方箋データに基づいて、必要な錠剤やカプセルを自動でピッキングし、払い出すシステムです。
・水剤自動分注機
処方箋に基づき、液体医薬品を正確に計量し、容器に分注するシステムです。計量ミスを防ぎ、作業時間を短縮できます。
・注射薬自動払出しステム
注射薬のピッキング、ラベル貼付、個人セットなどを自動化するシステムです。高度な管理が求められる注射薬の安全性を高めます。
これらのなかから、薬局の規模や取り扱う医薬品の種類、導入目的などによって適切なシステムが選ばれることになります。
近年では、これらの機能を複合的に備えた、より高度な調剤ロボットシステムも登場しており、薬局のニーズに合わせた導入が可能になっています。
調剤ロボット導入の背景
なぜ今、調剤ロボットの導入が進んでいるのでしょうか。
その背景としては、薬局をとりまくいくつかの要因があげられます。
まずあげられるのは、薬剤師の業務負担の軽減です。
複雑化・高度化する医療において、薬剤師の業務は増大の一途を辿っています。忙しくなると、ヒューマンエラーによる調剤過誤の可能性も高まってしまいます。
また、政府の方針により、薬剤師の仕事は対物業務から対人業務へとシフトする流れのなかにあります。
ロボットが単純作業を代替することによって、薬剤師の対物業務の負担が減り、より患者さんへの対応に集中できるようになります。
高齢化が進む現代において、医療費の抑制は重要な課題です。医療費削減という面でも、ロボットによる効率化には大きなメリットがあるのです。
また、地方や中小規模の薬局では、薬剤師の人手不足が深刻化しています。調剤ロボットの導入は、限られた人員で効率的に業務を行うための有効な手段となります。
このようなさまざまな要因のため、調剤ロボットの導入は進められているのです。
調剤ロボットの歴史
次に、調剤ロボットはどのように展開されてきたのかを確認してみましょう。
引用元:薬剤師バリューを最大化するための一包化調剤を中心とした調剤ロボット・機器の活用/薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関するワーキンググループ (厚生労働省)
調剤機器の開発は、1960年代に始まりました。
散剤の分包機から始まり、現場のニーズに応えるかたちで、錠剤の分包、軟膏や水薬へと対応する範囲が増えていきました。
当初は、大規模な病院を対象としたものが中心でしたが、技術の進歩とともに小型化・高性能化が進み、調剤薬局への導入も進んでいくことになります。
2000年代に入ると、技術革新が進み、よりコンパクトで安価な調剤ロボットが登場し始めました。
先ほど解説したように、調剤過誤防止や薬剤師の業務効率化への意識が高まったことなども、一般の薬局に調剤ロボットが導入される後押しとなりました。
近年では、AI(人工知能)やIoT(Internet of Things)といった最新技術と連携した、より高度な調剤ロボットシステムも開発されています。
調剤業務をすべて調剤ロボットに任せる薬局も登場しており、その進化は今後も加速していくと予想されます。
調剤ロボットを活用するメリット
このように広がってきた調剤ロボットですが、調剤ロボットを導入することによって、薬局や薬剤師にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
ミスを防止することができる
調剤ロボットの最大のメリットの一つは、ヒューマンエラーによる調剤過誤を大幅に削減できることです。
バーコード照合や画像認識などの高度な技術により、患者さんの処方箋と払い出す医薬品を正確に照合し、取り間違いや数量間違いを防ぎます。
特に、類似した名称の医薬品や、複数の規格が存在する医薬品の取り扱いにおいてその効果は大きいといえます。
また、散薬の計量や水剤の分注においても、ロボットは常に正確な作業を行うため、秤量ミスや容量ミスといった人為的なミスを排除することができます。
これにより、患者さんに安全で確実な医薬品を提供することが可能になります。
調剤作業の負担が減る
薬剤師の業務のなかで、ピッキング、計量、分包といった作業は、単純作業でありながら気を抜くことができず、精神的にも時間的にも負担が大きいものでした。
このような作業を調剤ロボットによって自動化することで、薬剤師の肉体的・精神的な負担を軽減することができます。
一日に多数の処方せんを処理する大規模な薬局だけでなく、ダブルチェックが難しい一人薬剤師の薬局においてもその効果は大きいといえます。
調剤作業の自動化により、薬剤師は煩雑な作業から解放され、より付加価値の高い業務に集中できるようになります。
例えば、薬歴管理、患者さんへの服薬指導、医師や他の医療従事者との連携といった、薬剤師の専門性が求められる業務に時間を割くことができるようになります。
患者さんへの服薬指導に注力できる
ロボットが調剤業務を効率的に行うことで、薬剤師は時間に余裕が生まれ、患者さん一人ひとりに丁寧な服薬指導を行うことができます。
患者さんの疑問や不安に寄り添い、医薬品の効果や副作用、服用方法などを丁寧に説明することで、患者さんのアドヒアランス向上や治療効果の向上に貢献できます。
また、患者さんの生活背景や既往歴などを考慮した服薬指導を行うことも可能になります。
調剤ロボットは、薬剤師が本来果たすべき「患者さんのための薬の専門家」としての役割を強化する上で、強力なツールとなり得るのです。
調剤ロボットによって薬剤師の仕事がなくなる?
調剤ロボットの導入が進むにつれて、「薬剤師の仕事はロボットに奪われるのではないか?」と心配する声が聞かれることがあります。
調剤ロボットが進むと、薬剤師の仕事はなくなってしまうのでしょうか?
調剤ロボットで代替できる業務と代替できない業務がある
調剤ロボットは、主に定型化された調剤業務、すなわち、処方箋に基づいた医薬品のピッキング、計量、分包、分注といった作業を効率化し、精度を高めるものです。
これらの業務は、手順が明確であり、データに基づいて自動化しやすい領域です。
一方で、患者さんとのコミュニケーション、薬歴の確認と評価、相互作用や副作用のチェック、医師への疑義照会、そして患者さん一人ひとりに寄り添った服薬指導といった業務は、患者さんの状態や状況を理解し、専門的な知識や判断力、コミュニケーション能力が求められるため、現時点ではロボットが代替することは困難です。
このように、どんなに調剤ロボットが高度化しても、ロボットで対応できない業務は残ることになります。
調剤ロボットの導入度合いは薬局によって異なる
調剤ロボットシステムの導入は、薬局の規模、取り扱う医薬品の種類、経営状況などによって大きく異なります。
現在でも、大規模な病院や調剤薬局チェーンでは積極的に導入されています。
一方、中小規模の薬局ではそこまで導入は進んでいません。
また、導入するロボットの種類や機能も薬局によってさまざまであり、すべての調剤業務が自動化されるわけではありません。
それぞれの薬局のニーズに合わせて、適切なテクノロジーが導入されることになります。
そして、それに対応して業務を行うことが薬剤師には求められます。
薬剤師の仕事は対人業務へとシフト
調剤ロボットの導入が進むことで、薬剤師の業務の中心は、調剤という「作業」から、患者さんと向き合う「対人業務」へとより一層シフトしていくと考えられます。
ロボットが調剤というルーチンワークを担うことで、薬剤師は患者さんとのコミュニケーションに時間を割き、より質の高い医療サービスを提供できるのです。
具体的には、患者さんの病状や生活習慣、服薬状況などを丁寧にヒアリングし、それに基づいた個別化された服薬指導やアドバイスを行うこと、病院や介護施設などと連携して患者さんの治療をサポートすること、そして地域住民の健康増進に貢献することなどが、今後の薬剤師の重要な役割となっていくでしょう。
調剤ロボットによって薬剤師の仕事がなくなることはない
以上の点をふまえると、調剤ロボットは薬剤師の仕事を奪うものではなく、薬剤師がより専門性を発揮し、患者さんのために貢献するための強力なサポートツールであると言えます。
テクノロジーを活用することで、薬剤師はより人間的な触れ合いを大切にし、患者さん中心の医療を提供していくことができるのです。
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まとめ
調剤ロボットは、調剤業務の効率化、調剤過誤の防止、そして薬剤師の負担軽減に大きく貢献しています。
調剤ロボットを導入することで、薬剤師は煩雑な単純作業から解放され、患者さんへの服薬指導や多職種連携といった、より専門性の高い対人業務に注力できるようになります。
テクノロジーは進化していきますが、患者さんの状態を理解し、適切な情報を提供し、寄り添うという薬剤師の根幹的な役割はロボットに代替できるものではありません。
むしろ、調剤ロボットを賢く活用することで、薬剤師は自身の専門性を発揮して、患者さんにとってかけがえのない存在となることができるでしょう。
変化を恐れるのではなく、テクノロジーを味方につけて使いこなしていく姿勢がこれからの時代の薬剤師には求められているといえます。
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