調剤、監査、服薬指導、そして多職種連携。毎日の仕事に追われるなかで、「自分はこのまま薬剤師を続けていていいのだろうか」「違う仕事に挑戦してみたい」と考えることもあるのではないでしょうか。ただ、猛勉強をして国家試験を突破し、手にした薬剤師免許。それを置いて別の道へ進むことには迷いがあるかもしれません。
本記事では、薬剤師を辞めて違う仕事がしたいと考えている方へ、その理由の深掘りからメリット・デメリット、そして資格を活かせる異業種まで徹底的に解説します。
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薬剤師を辞めて違う仕事がしたいと考える理由
なぜ、一般的には勝ち組と言われている薬剤師が「辞めたい」と感じるのでしょうか。一見恵まれた資格職に見えますが、薬剤師が「辞めたい」と思う背景には、薬剤師特有の労働環境や職能の限界が隠れています。
労働環境が悪い
薬局や病院の現場では、深刻な人手不足が常態化しているケースが少なくありません。たとえば、門前薬局の場合、クリニックの診察が長引けばそれに合わせて開局時間も延びるため、残業となってしまうことがあります。また、サービス残業が暗黙の了解となっていたり、一人薬剤師として勤務する時間が長く、自分一人の肩に全ての責任がのしかかる重圧に耐えかねたりすることもあるでしょう。
こうした過酷な状態が続くと、心身ともに疲弊してしまいます。現在の状況を変えるためには転職するしかない、と考えるようになるのです。
ルーティンワークが続く
調剤室での作業は、正確性が求められる一方で、どうしても同じことの繰り返しになりがちです。ピッキング、監査、薬袋作成……。対人業務の重要性は増していますが、毎日ルーティンワークを繰り返すなかで、自分が成長しているという実感を持てず、「この先もずっと同じことを繰り返すのか」と将来の展望を持てないこともあるでしょう。
医療現場のプレッシャーが厳しい
薬剤師の仕事はミスが許されない世界です。常にヒヤリハットに怯え、監査台の前で神経を研ぎ澄ます毎日は、私たちが想像する以上に精神を疲れさせます。このプレッシャーから解放されたいと願うのは、決して甘えではありません。
緻密な作業が向いている人もいますが、それ以外の仕事のほうが実力をのびのびと発揮できるタイプの人もいます。自分に向いている仕事を探して医療現場以外を考えるようになるのも、現場を経験したからこそ判断できる、現実的な選択だといえるでしょう。
土日が休めない
総合病院勤務では、土日も関係なく勤務があり、夜勤や当直がある場合もあります。門前薬局は、病院の診療日に営業を合わせなければなりません。ドラッグストアは年中無休で夜遅くまで営業しています。このように、薬剤師の多くは、世間が休んでいる土日祝日でも働いています。
土日勤務のため、友人と予定が合わない、子供の行事に参加しづらい。このような周囲との生活リズムのずれにストレスを感じる人も少なくありません。平日休みは役所や銀行の利用には便利ですが、土日の予定には対応しづらいのが現実です。こうした状況が続くなかで、土日休みが確保できる一般企業などへの転職を検討する人も出てきます。
人間関係がよくない
職場の人間関係は、仕事の満足度に大きく影響します。薬剤師の場合、狭い調剤室という密室で、長時間同じメンバーと顔を合わせる環境は、人間関係のトラブルを生みやすいといえます。
相性の悪い同僚や高圧的な上司、さらには癖のある医師とのやり取り。小規模な職場で、異動の可能性がない場合は、退職という選択肢が現実的になるかもしれません。
将来のキャリアビジョンが描けない
専門職である薬剤師は、キャリアパスという面では広がりに欠ける面があります。
職場の規模が小さく、薬剤師の人数が少ない場合、働き続けたとしても管理職に就ける可能性は低いかもしれません。また、管理薬剤師や薬局長になった後、その先のキャリアが見えないことに不安を感じる人もいます。
現在の職場でキャリアパスがない場合は、自分が望むキャリアビジョンを実現するためには転職するしかない、ということになります。
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薬剤師を辞めて違う仕事をするメリット
薬剤師を辞めて違う仕事に転職することには不安がつきものです。しかし、薬剤師以外の仕事に就くことには、人生に大きな変化をもたらす可能性があります。
仕事に関する視野が広がる
医療業界の外に出ることで、ビジネスの仕組みや多様な働き方に触れる機会が増えます。医療の世界から一歩外に出れば、「ビジネスの仕組み」や「マーケティング」「IT」「法律」など、医療とは異なる原理で動く世界が広がっています。
薬剤師として働くことに疲れ、自分は社会人としてだめなのではないかと感じている人も、異業種に転職して、自分の思わぬ強みを発見することがあります。成果が数字や評価として見えたり、裁量を持って仕事を進められたりすることに、これまでになかったやりがいを感じられるかもしれません。また、コミュニケーション力や調整力など、薬剤師として培った力が別の形で評価されることもあります。
仕事をさまざまな角度から捉えることができるのは、転職の大きなメリットだといえるでしょう。
ワークライフバランスがよくなる
一般企業であれば、土日祝の休みやゴールデンウィーク、夏季休暇などがしっかりと確保されている会社が多いでしょう。 また、リモートワークやフレックスタイム制を導入している企業もあります。
心身に余裕が生まれることで、家族との時間や趣味の時間など、仕事以外の時間も大切にできるようになるのは大きなメリットです。
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薬剤師を辞めて違う仕事をするデメリット
一方で、薬剤師を辞めて違う仕事をすることにはリスクも伴います。転職に関しては、これらのデメリットを理解したうえで決断する必要があります。
給与が下がる可能性がある
薬剤師の初任給は比較的高めで、年収の水準は一貫して高いといえます。また、たとえパート薬剤師であったとしても、一般的なパートの2倍の時給となっています。
しかし、未経験の異業種に転職する場合、これまでの収入より低い給与からのスタートになることも少なくありません。 薬剤師免許という強力な加算がなくなることによる給与の差は、転職先によっては大きくなるかもしれません。特に転職直後は、収入面でのギャップを感じやすいでしょう。
転職先が限られる
薬剤師は非常に強い資格なので、薬局やドラッグストアであれば転職先がないということはありません。
しかし、30代中盤を過ぎて完全に未経験の異業種に飛び込むのは、想像以上にハードルが高いのが現実です。企業側はポテンシャルの高い20代を優先する傾向があるため、その業種での経験がないと厳しい場合も多いでしょう。
異業種への転職を考える際には、実際に採用される可能性がどのくらいあるかを客観的に考えることが大切です。
せっかく取った資格やスキルが活かせない
6年間の薬学部での勉強・研究と国家試験を経て得た知識をまったく使わない仕事を選んだ場合、これまでの努力が無駄になったように感じる瞬間があるかもしれません。この気持ちの整理ができていないと、「やはり薬剤師を続けていればよかったのでは」という転職後の後悔につながりやすくなります。
薬剤師としての資格を使わない働き方を選ぶのであれば、なぜそれでも転職したいのか、自分が何を優先したいのかを事前にしっかり自分で確認しておくことが大切です。
新しいスキルを学ばなくてはならない
PCスキル、ビジネスマナー、専門用語、職場での習慣……。異業種に転職すると、薬剤師の世界では当たり前だったことが通じない世界で、新しいことを一から学び直すエネルギーが求められます。
業界が変われば、必要とされる知識やスキルも大きく異なります。柔軟な姿勢で学び直しが必要になることは覚悟しておきましょう。
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薬剤師の資格が生かせる仕事
「薬剤師を辞める=免許を捨てる」ではありません。その知識を武器に、病院や薬局の外で活躍する道はたくさんあります。ここでは、薬剤師としての資格や経験を活かしながら働ける道についてみてきましょう。
医薬情報担当者(MR)
医薬情報担当者(MR)は、製薬会社の営業職として医師や薬剤師に医薬品の情報提供を行う仕事です。一般的な薬剤師業務に比べて高い年収が期待できるほか、ビジネスの最前線で通用する営業スキルを磨ける点が大きな魅力です。最近は採用基準が厳しくなりつつありますが、現場経験豊富な薬剤師免許保持者にはアドバンテージがあるともいえます。
臨床開発モニター(CRA)
臨床開発モニター(CRA)は、新薬開発のプロセスにおいて、治験が計画通り適切に行われているかをモニタリングする職種です。責任の重い仕事ですが、医療の進歩に直接貢献できるやりがいを感じることができます。キャリアを積むことでさらなる高収入も目指せます。
治験コーディネーター(CRC)
治験コーディネーター(CRC)も治験に関連する仕事ですが、医療機関の側で治験を円滑に進めるために、製薬会社や医師との間に立って治験を受ける患者さんをサポートします。
病院という医療現場で、患者さんの不安に寄り添いながらコミュニケーション能力を存分に活かせるのが特徴です。薬剤師として培った知識があれば、治験の仕組みや薬の作用を患者さんにわかりやすく説明する際に大きな武器となるでしょう。
製薬会社や化粧品メーカー
製薬会社や化粧品メーカーには、医薬品や化粧品、サプリメントなどの研究開発だけでなく、品質管理や安全管理、薬事申請など、薬剤師の知識を活かせるさまざまな仕事があります。
大手企業や医薬品の研究職は倍率が高く狭き門ですが、中小企業や開発関連の仕事であれば、薬剤師としての経験を活かして転職できるポジションがあります。
公務員薬剤師
公務員薬剤師は、行政の立場から保健所などで公衆衛生のために働きます。転職の難易度は高くなりますが、厚生労働省の技官や麻薬取締官として働く道もあります。
公務員薬剤師の魅力は、地域社会や国全体の医療制度を支えるという、薬局勤務とはまた異なる視点での社会貢献が行えることです。また、公務員であるため、昇給をはじめとした給与や待遇も安定しています。
大学の教員
大学で教員として研究・教育の道に進むという選択肢もあります。薬学部の場合、研究畑を歩んできた教員がメインとなっていますが、近年では実務経験を重視する「実務家教員」としての登用も増えています。
「実務家教員」とは、企業・官公庁・医療現場などでの実務経験を活かして教育を行う教員のことです。研究者としてのキャリアが中心の「研究者教員」とは異なり、現場で培った実践的な知識やスキルを学生に伝える役割を担います。学校の先生になりたかった人や、職場での実習指導や新人教育が得意だった人には向いているといえるでしょう。
メディカルライター
メディカルライターは、雑誌やWEBの健康や医薬品に関する解説記事や、製薬会社のプロモーション資材などを作成する仕事です。
在宅勤務が可能な案件も多いため、自由な働き方を求める人や、文章を書くことが好きな人に向いています。医療関係の記事は専門性とともに信頼性も大切なので、薬剤師資格を持っているライターは重宝されます。資格のない一般的なライターよりもよい条件となっていることが一般的です。
ただ、薬剤師という職業が高収入であるため、それに比べると収入が低くなり、安定もしていないことには注意が必要です。
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薬剤師が辞めて違う仕事をするときの注意点
「もうこの仕事は嫌だ」と勢いだけで辞めてしまうと、後悔につながることもあります。実際に転職活動を始める前に、以下のステップを踏んで、自分と向き合ってみましょう。
転職の理由をはっきりさせる
転職を考えるときは、いまの仕事がつらいから、というあいまいな気持ちのまま動くのではなく、現状の何に対して不満を抱いているのかを具体的に言語化することが大切です。
現在の仕事で不満に感じていることは何でしょうか。
- 業務内容か?
- 給与か?
- 勤務時間か?
- 働いている場所か?
それぞれについて、100点満点で点数をつけてみるのも効果的です。どのようなことをストレスに感じているのかが明らかになります。こうして不満が明確になれば、次の職場に求める条件が見えてくるでしょう。
「薬剤師を辞めたい」のか「今の職場を辞めたい」を見極める
薬剤師が転職を考える場合、ここが最も重要です。 「薬剤師を辞めたい」のか「今の職場を辞めたい」だけなのか、冷静に考えてみましょう。
「薬剤師という職種そのもの」がつらいのであれば異業種へ。「今の薬局の人間関係や残業」が嫌なだけであれば、別の薬局やドラッグストアへ転職すれば解決します。
薬剤師の仕事がつらいと思っていても、実際には職場を変えるだけで問題が解決するケースも少なくありません。もし、他の薬局に移っても同じ不満を抱きそうなら、それは薬剤師という仕事に限界を感じているサインかもしれません。
転職先に求める条件に優先順位をつける
転職を決めた場合は、まず、先に考えた仕事に対する不満を裏返して、転職して実現したい働き方を明確にしていきましょう。
ただ、自分が仕事に求める条件をすべて満たす職場はまずありません。実際に転職活動を行う際には、転職先に求める条件に優先順位をつけておくと、転職活動のさまざまな局面でどうするべきかを判断しやすくなります。
「年収は下がってもいいから、土日休みが欲しい」「土日出勤は我慢するから、年収を上げたい」など、自分の中で譲れない条件を明確にしておくことが大切です。
転職エージェントを活用する
異業種への転職を考えるときは、自分ひとりで考えるだけでなく、転職エージェントに相談することをおすすめします。 現在の自分のスキルが他業界でどう評価されるか、客観的なアドバイスをもらえます。さまざまな事例を見ているコンサルタントと話すなかで、現実的な選択肢が見えてくるでしょう。
転職エージェントは具体的な転職の予定がなくても登録できるので、情報収集の段階から利用するのもおすすめです。
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【Q&A】薬剤師を辞めて違う仕事をするときによくある疑問
薬剤師を辞めて違う仕事をしようとするときに浮かんでくる疑問についてまとめました。
薬剤師の資格があるのに辞めるのはもったいない?
薬剤師の資格は確かに簡単に取れるものではありませんが、「資格を持っている=必ず使い続けなければならない」わけではありません。人生全体で考えたときに、自分が納得できる働き方を選ぶことのほうが大切です。
もったいないかどうかは自分で決めるものです。たとえ異業種に進んだとしても、薬剤師になるために勉強してきた過程、そして薬剤師として働いてきたキャリアは決して無駄にはなりません。
また、薬剤師の資格は、いざというときの「お守り」としてもパワーを持っています。いつでも戻れる場所があるからこそ、思い切って新しい世界に挑戦できる。これこそが薬剤師免許を持つ人の最大の強みだといえます。
一度薬剤師を辞めても、また薬剤師に戻れる?
薬剤師を辞めたとしても、また薬剤師に戻ることはできます。実際、ブランクがあっても復職している薬剤師は多く、復職支援制度を設けている職場もあります。もし薬剤師に戻りたいと考えた場合は、「ブランク可」「未経験者歓迎」という求人を選べば安心でしょう。
ただ、一般的に2年以上のブランクがあると新薬の知識や調剤報酬改定に追いつく必要があります。そのための努力が必要なことは心得ておきましょう。
まわりに反対されたらどうしたらいい?
「薬剤師を辞めたい」と伝えると、せっかく好条件の薬剤師なのに、と家族や同僚が心配して反対することは珍しくありません。
しかし、あなたの人生の責任を取れるのはあなただけです。理解してもらえないことを悲しく感じるかもしれませんが、感情的に反発するのではなく、「なぜ辞めたいのか」「次に何をしたいのか」をきちんと説明し、最後は自分の意志で決めましょう。
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まとめ
薬剤師を辞めて違う道に進むことは、決して逃げでも甘えでもありません。それだけ真剣に自分の将来と向き合っている証拠です。大切なのは、「辞めたい」という気持ちの奥にある本当の理由を見つめ、自分に合った選択肢を探していくことです。
薬剤師としての経験は、形を変えて必ずどこかで役に立ちます。薬剤師として培った「正確さ」「責任感」「専門知識」は、どんな業界に行っても自分を支えてくれるでしょう。今の状況に息苦しさを感じているのなら、一度立ち止まって、調剤室の外に広がる世界を覗いてみてはいかがでしょうか。
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