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薬剤師業界トップインタビュー

更新日: 2020年4月3日

「20年度改定は合格点」日本薬剤師会山本会長【前編】

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2020年度の診療報酬改定では、「対物から対人へ」の流れを受け、薬剤服薬歴管理指導料で吸入薬指導加算や調剤後薬剤管理指導加算等が新設される一方、同一敷地内薬局の報酬が引き下げられました。今改定の評価とこれから求められる薬剤師像について日本薬剤師会の山本信夫会長にうかがいます。

(参考)厚生労働省【令和2年度診療報酬改定について】 

改定で重視したのは日数倍数制の調剤料

2020年度の診療報酬改定に点数をつけるとしたら何点でしたか。

評価が分かれるので一概には言えないですが、合格点はもらえるかなと思っています。学校の通信簿(5段階評価)で言えば3以上、5まではいかない感じです。全体としてはプラス改定になりましたし、医科歯科調剤の比率(1:1.1:0.3)もそれなりに守られました。

最大の収穫は、2016年度、18年度と外枠(大型門前薬局の評価の適正化として、実質的にはマイナス改定)があった分が今回はそうした措置はなく、そっくり取れたので、そこは非常によかったと思っています。

日本薬剤師会として今回の改定で最も重視した点はどこだったのでしょうか。

長年言われている話ですが、日数倍数制の調剤料が常に議論されていて、これまでも処方期間が長期化する中で調剤料は実質的にかなり下がってきました。

現行の調剤報酬中でも日数倍数制の調剤料は精緻にできた仕組みだと思いますが、今回は「骨太の方針2019」の中で「調剤報酬を大胆に適正化すべき」という議論があり、調剤料は14日分以下が見直され、7日分以下は28点、8~14日分は55点となりました。

日数が増す分、手間が掛かっていることも確かなので、バランスを取りながら、急激な変化による影響も考えて、基本方針に沿った改定になったと思います。

一方、「対物から対人へ」へという評価の中で、薬剤服薬歴管理指導料で吸入薬指導加算や調剤後薬剤管理指導加算等が新設され、吸入薬を使う患者や糖尿病患者への指導の評価ができたのは新しい方向だと思います。点数(ともに30点)的にも適切で、芽出しとして評価できます。

また、診療報酬改定前の薬機法改正で、地域連携薬局や専門医療機関連携薬局という特定の機能を持つ薬局の認定制度が導入されました。地域医療連携、チーム医療の中での薬剤師の役割という視点で、今回の改定を見ると端々にその意図が感じられる評価項目になっていると思います。

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日本薬剤師会 山本信夫会長

かかりつけ薬剤師指導料の算定要件はそれほど厳しくない

かかりつけ薬剤師指導料が現行の73点から76点に引き上げられましたが、同時に「パーテーション等で区切られた独立したカウンターを有するなど患者プライバシーへの配慮」が施設基準になりました。

いずれ具体的な通知が出ると思いますが、いままでもたとえば健康サポート薬局もそうですが、そもそも薬局とはそういうところだから、広いカウンターでやっていた時代からだんだん小さくなり、流れとしては隣の人が見えない、聞こえないように工夫をしてきました。

プライバシーを守るというのは医療者としては当然のことなので、これまでもきちんとしてきたと考えています。洋服の試着室のようなカーテンで覆うような外部から見えない構造が設備されていればなお良いとは思いますが、患者さんのプライバシーがきちんと守られる環境が望ましいというのは、それほど厳しい条件だと私は思っていません。いろいろ工夫はできます。

重複投与に対して、服薬薬剤調整支援2(100点)が新設されました。薬剤を減らす実効性についてどのように見ておられますか。

実効性の問題は、医師との連携が必須なことになるので、薬剤師と地域の医師が連携のとれる体制が構築されないと絵に描いた餅になります。

どのくらい進むかは予測なのでわからないですが、いままでうまく連携できていて、薬を減らしてきた薬局にとっては非常に良い評価項目だと思います。

一方で、いままでなんとなく形式的な問い合わせをしていた薬局にとっては、かなり厳しいかもしれません。これは形式的な問い合わせで終わってしまってはいけないというメッセージでもあります。

疑義紹介には薬剤師の十分な準備が不可欠

薬剤師の疑義照会に対する医師側の対応は変わってきているのでしょうか。

疑義照会に対する医師側の反応は180度変わったと思います。ただ、医師の方々も忙しいですから、「ではどうするのか」と医師から問われた時に、「決めてください」というのではなく、「これがあります、あれもあります、この薬はこうしたほうがいいと思います」といった処方提案ができれば、かなりの効果が期待できます。

そのためにはこちらがよほど準備して、自分たちなりに考えないと難しい。医師は全身を診ていますが、われわれは処方しか見ていないし、しかも記録しか分からないわけですから。

具体的に薬が減れば、薬剤師が減薬に貢献しているということだから、薬学的にみれば大きな役割だと思います。ただ、疑義照会は往々にして処方批判ととられがちなので、やり方やルールをそれぞれの薬局が連携先医療機関ときちんと決めなければなりません。たしかに難しいことではありますが、動き出せば実効性があり、いい評価項目だと思います。

同一敷地内薬局、いわゆる院内薬局について、特別調剤基本料が11点から9点に引き下げられました。

門前薬局について、塩崎元厚労大臣が2015年に「病院前の景色を変える」ということをおっしゃったけれど、日本薬剤師会もあの環境はよくないと思っています。今回は診療所の敷地内薬局も引き下げの対象になりました。患者さんの利便性などを考えれば、門前薬局が悪いかは一概に言えない部分もありますが、敷地内は論外だと思います。

後編は「薬剤師の将来像」について山本会長にうかがいます。

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