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薬剤師業界トップインタビュー

更新日: 2020年4月11日

診療報酬改定 日本薬剤師会山本会長インタビュー【後編】

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「対物から対人へ」の流れを受けた2020年度の診療報酬改定。前回(『2020年度診療報酬改定は合格点』日本薬剤師会山本会長)に続き、これから求められる薬剤師像について日本薬剤師会の山本信夫会長にうかがいます。

(参考)厚生労働省【令和2年度診療報酬改定について】 

求められる薬剤師像の答えは短冊にある

今回の診療報酬改定では「対物から対人へ」のシフトがより鮮明になりました。こうした中で今後求められる薬剤師像についてどのようにお考えですか。

診療報酬の観点からいえば、短冊(個別改定項目)の点数に薬剤師の将来像が込められているといえます。私のひとつ前の世代は「調剤して渡せばいい」という時代で、私たちの頃は「患者さんの情報を取れ」といわれるようになり、いまは「相談を受けて服薬中、フォローアップしなさい」となっており、調剤の概念が幅広くなってきています。

これは「(目の前の)その患者」に対して最適な薬物治療を提供できるかということです。かつては大人と子ども、男性と女性、高齢者と若者等の区別ですみましたが、いまは、英語の「a patient」と「the patient」の含む意味が異なるように、「その(the)患者」に対して薬剤師がどれだけ自分たちの知識を提供できるかが問われています。

それがかかりつけ薬剤師ということでしょうし、そういう薬剤師像が地域包括ケアシステムの中で求められている薬局・薬剤師だと思います。

患者の個別性を重視した対応が必要になるということですね。

そうです。薬歴などをもとに、患者の症状ばかりでなく、生活習慣まで見通すような視点で患者を見ることが大切です。必要ならば検査値を参照することもあるでしょうし、血圧も確認するでしょう。

ただ、「バイタル」ありきではなく「患者を個別化」する手段で、「この患者にとっては必要だが、あの患者には必要ない。なぜならば…」という判断が必要です。そうでないと、薬剤師はワン・オブ・ゼム、「どの薬剤師でも同じ」ということになりかねません。

診療報酬改定 日本薬剤師会山本会長インタビュー【後編】日本薬剤師会 山本信夫会長の画像

日本薬剤師会 山本信夫会長

薬剤師は業務範囲を自ら狭めている

すごくハードルが高く感じますが、「患者の個別性を重視した対応ができる」レベルに達している薬剤師は現状で何%くらいいると思われますか。

かなりの数いると思いますよ。なぜなら、患者は行きたくない薬局には行かないと思います。いつも行く薬局があるということは、薬剤師がそれなりの対応をしているからだと考えられます。少なくとも今回の薬剤報酬改定の点数をみると、そういう薬剤師が相当数いるという前提になっていると思います。

調剤の概念が幅広くなってきているというお話でしたが、そうすると仕事の範囲も当然広がってきますね。

そうです。ただ、現実には薬剤師は業務範囲を自ら狭めている面があるように思います。たとえば医師との関係でも、オーバーラップする部分は相互に信頼関係が築かれていれば、タスクシェアをすればいいのですが、薬剤師は、オーバーラップする部分をことさら狭め、なるべく決められた範囲だけで作業する姿勢になっていないでしょうか?仕事の範囲を狭めたほうが楽だと思っているのかもしれませんが、かといって業務範囲を決めれば薬剤師は満足するのでしょうか。

実際に、「範囲を決めろ」という声もありますが、少なくとも私は「決めません」と明言しています。決めないほうがいいと思っているからです。業務範囲を狭めたほうが楽だけど、職能としての特徴がなくなってしまいますし、なるべく幅を広げておいたほうがいいと私は考えています。

テクニシャン導入には薬剤師の判断責任が伴う

薬剤師の業務を支援する人材「ファーマシー・テクニシャン」についてはどうお考えですか。欧米ではすでに浸透しているようですが。

テクニシャンの議論は長年続いていますが、「なぜ」テクニシャンを導入するのかという「なぜ」に対して、個人的に思うところがあります。ですから、日薬としての意見ではありません。薬剤師を雇うと人件費が高いから、テクニシャンを使おうという声も聞かれますが、それには違和感があります。

もちろん、テクニシャン導入の理由は結局、人件費問題にいきつきますが、では薬剤師は何をするのか?この仕事は薬剤師だけど、この部分はテクニシャンに任せますよという判断を薬剤師が実務的にも法的にもしなければいけません。法律はあとからついてくる話ですが、実務面で仕事を任せた結果、問題が起こった場合、薬剤師がすべての責任を負わなければなりません。任せたテクニシャンが悪いとはいえません。いまの薬剤師にその判断の覚悟を持ってどこまでできるか。

 欧米諸国のテクニシャンにはいろいろありますが、きちんとした人たちは薬学教育を受けています。最終的に責任を取るか取らないかという時に、自分は取りたくないからテクニシャンでいいというケースも多いと聞きました。ですから単に誰でもいいからやらせるというのとは、少し違うのではないかと思います。いずれテクニシャンの議論は避けられませんが、いますぐにということではないような気がしています。

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