診療報酬改定 日本薬剤師会山本会長インタビュー【後編】

「対物から対人へ」の流れを受けた2020年度の診療報酬改定。前回(『2020年度診療報酬改定は合格点』日本薬剤師会山本会長)に続き、これから求められる薬剤師像について日本薬剤師会の山本信夫会長にうかがいます。
求められる薬剤師像の答えは短冊にある
今回の診療報酬改定では「対物から対人へ」のシフトがより鮮明になりました。こうした中で今後求められる薬剤師像についてどのようにお考えですか。
診療報酬の観点からいえば、短冊(個別改定項目)の点数に薬剤師の将来像が込められているといえます。私のひとつ前の世代は「調剤して渡せばいい」という時代で、私たちの頃は「患者さんの情報を取れ」といわれるようになり、いまは「相談を受けて服薬中、フォローアップしなさい」となっており、調剤の概念が幅広くなってきています。
これは「(目の前の)その患者」に対して最適な薬物治療を提供できるかということです。かつては大人と子ども、男性と女性、高齢者と若者等の区別ですみましたが、いまは、英語の「a patient」と「the patient」の含む意味が異なるように、「その(the)患者」に対して薬剤師がどれだけ自分たちの知識を提供できるかが問われています。それがかかりつけ薬剤師ということでしょうし、そういう薬剤師像が地域包括ケアシステムの中で求められている薬局・薬剤師だと思います。
患者の個別性を重視した対応が必要になるということですね。
そうです。薬歴などをもとに、患者の症状ばかりでなく、生活習慣まで見通すような視点で患者を見ることが大切です。必要ならば検査値を参照することもあるでしょうし、血圧も確認するでしょう。ただ、「バイタル」ありきではなく「患者を個別化」する手段で、「この患者にとっては必要だが、あの患者には必要ない。なぜならば…」という判断が必要です。そうでないと、薬剤師はワン・オブ・ゼム、「どの薬剤師でも同じ」ということになりかねません。

日本薬剤師会 山本信夫会長
薬剤師は業務範囲を自ら狭めている
すごくハードルが高く感じますが、「患者の個別性を重視した対応ができる」レベルに達している薬剤師は現状で何%くらいいると思われますか。
かなりの数いると思いますよ。…