杉山医師の「薬剤師に伝えたい医師のトリセツ」

更新日: 2020年8月9日 杉山 陽一

温故知新。「わかしおネットワーク」の取り組み

温故知新。「わかしおネットワーク」の取り組みの画像1

皆さん、こんにちは。この連載も5回目となり、今回を含めて残り2回となりました。前半3回は「医師」について述べ、前回の4回目では「医師から見た薬剤師」として、あくまで私の個人的な見解ながら、薬剤師の皆さんに、薬剤師を客観視してもらうことを目標に書きました。そこでは医療職の中にあって、薬剤師の独特の「患者さんとの距離感」についてお伝えしました。ともすると批判的な内容だったかもしれませんが、その向こうに「これからの薬剤師」の姿があると考えて掲載していただきました。さて、その薬剤師の未来像とは、どんなものなのでしょうか。本章ではタイトルの通り、「わかしおネットワーク」を通じて出会った、とある薬剤師さんの取り組みについてご説明したいと思います。

温故知新。「わかしおネットワーク」の取り組みの画像2

「わかしおネットワーク」での出会い

今から10年以上前、とある公立病院の総合診療科の医師として勤務していた私は、自身の医療技術が乏しいことには目をつぶって、介護保険制度や老々介護、介護負担感といった社会学的な視点で医療を見つめなおすことに熱心になっていました。その病院では「老人研究所」なる施設を併設しており、研究所に従事する方々に混じって、「参加自由」と書かれた多くの勉強会に参加していました。「医療は単体では提供できないサービスであり、政治学・経済学・社会学・宗教学・各国の歴史的背景などの多様な要素に立脚している」ことに興味があって医師を志した私にとっては、老人科を選択したことも、そして医療を支える制度・行政サービスに興味を持ったことも当然のことでした。
「医師不足」が社会問題となっていた当時、将来の医療政策のタネとなりうる「とある地域の成功例」を探して、各地で実験的な医療サービスが提供されていました。その1つが千葉県の東金(とうがね)病院を中心とした広域医療ネットワーク「わかしおネットワーク」でした。千葉県東部は地理的に同県西部と大きく異なり、医療過疎地域。当時は北部を旭中央病院が、中部を東金病院が、南部を亀田総合病院が中核となって地域医療を支えていましたが、少ない医師で広大な千葉県東部の医療を支えるのは困難を極めていました。そこで期待されたネットワークですが、私なりに簡単に言うと「地域丸ごと電カルでつなぐ」という感じでしょうか。東金病院での診療内容が電子カルテに記載されると、患者さんの住む地域のクリニックにも、地域の薬局にも情報が共有される。関わる医師・看護師・そして薬剤師(かかりつけ薬局の薬剤師)が相互にカルテ上でチャットしながら患者さんの情報を共有するのです。
(機能の一部を紹介します)

カルテ内容

医療機関や薬局には、ご本人の同意する範囲で情報が共有される


医師

今日の検査で、HbA1cが悪化していたので、糖尿病治療薬の〇〇を増量
次回、血液検査でフォロー予定

医師の画像
医師

◆◆薬局さん、内服薬の変更についてのご説明をお願いします!


薬剤師

本日の検査結果に応じて〇〇増量(薬局では検査結果の画面も閲覧可能)
→来店時に患者さんに説明を行う

薬剤師の画像
薬剤師

▼▼先生、了解しました!

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杉山 陽一

医療法人社団 永生会 特別顧問、医療教育サイトFUNMED代表、国立職業リハビリテーションセンター 医療情報助言者、日本老年医学会 代議員、杏林大学医学部同窓会 理事。m3.comでは「専門外だからできる医師のキャリア形成」、「杉山医師の『薬剤師に伝えたい医師のトリセツ』」、「ケイロンの学び舎」などの連載の他、コラムを担当。
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