トレーシングレポートがうまくなる3つの簡単なコツ
これまで、トレーシングレポートの基本やどのような書き方があるのかを見てきました。今回は、実際にトレーシングレポートを書く際に重要になる書き方のポイントをまとめてお伝えします。
薬局で知り得た情報を医師に有効活用してもらうためには、伝わりやすい書き方で作成することが重要です。文章が苦手な方でも、読んでもらえるトレーシングレポートを作るためにぜひ参考にしてみてください。
トレーシングレポートの書き方ポイント
質の高いトレーシングレポートは、薬剤師の伝えたい内容を医師に正しく伝えるための文書です。ここでは読みやすく、納得してもらえるトレーシングレポートを書くためのポイントをお伝えします。
簡潔にわかりやすく書く
読んでもらう相手にとってわかりやすく書く文書のポイントは以下のとおりです。・ひとつの文章に多くの情報を書かないようにする
・要点を明確にして書く
・ていねいで読みやすい字で書く
トレーシングレポートは薬局と医療機関の大切な伝達手段のひとつです。場合によっては書き方で不快な気持ちになる医師がでてきてしまうかもしれません。トレーシングレポートは医師に対して、より良い治療を行うための提案というスタンスを忘れないようにしましょう。
事実やエビデンスに基づいた内容
トレーシングレポートでは、事実を正しく伝えることが重要です。提案の際は、薬剤師の主観ではなく、エビデンスに基づいた意見を述べましょう。誤字脱字を防ぎ、読みやすい文章を書こう
トレーシングレポートは、医師へ情報を伝える手紙とも言えます。相手に読んでもらうために書いているものなので、読みやすい文字で丁寧に書きましょう。きれいな文字を書く自信がない場合は、パソコンのワープロソフトを使って記載するのも良いでしょう。ワープロソフトの方が、書いた場所を消して書き直したり、新たな情報を付け加えたりする場合にも都合が良いです。
また、誤字脱字にも十分に注意しましょう。書き間違いや漢字の変換ミス、薬の規格の記入漏れなども情報を受け取りづらくなる原因となります。一度、書いた文章は少し時間をあけて再度自分で読み直したり、可能であるならば同僚など別の人にも読んで確認してもらうと良いです。
項目を整理して箇条書きにする
上記の基本的な文章の書き方をクリアした上で、より具体的な書き方のポイントを見ていきましょう。
情報は簡潔に分かりやすく伝える必要があります。その際におすすめの方法は箇条書きにすることです。文章があまり得意でないという人はだらだらと長文にしてしまうことがよくあります。もし文章を書くことに不安がある場合は、箇条書きにして要点だけを伝えてみましょう。
文章 | 箇条書きを含めた文章 |
本日、患者家族が来局されて、患者さん本人の薬がたくさん余っていると相談されました。日常の認知機能の低下は、患者家族からの聞き取りではなさそうです。家族には医師に情報を共有し、薬局としても次回の来局時に本人に確認するとお伝えしました。 本人はしっかりと飲んでいると話をしているようなので服薬することへの意識が下がっているかもしれません。次回の診察時に、先生からもご確認いただけると助かります。 余っている薬が◯◯日分あるので、こちらの残薬を使用するために処方日数の調整もあわせてお願いします。 また、コンプライアンスを上げるために一包化の検討も必要かもしれません。一包化の際は「一包化指示」を処方箋にいただけますと幸いです。 |
取得情報 ・薬局に来局した患者家族からの相談 ・しっかり飲んでいると話すが残薬が多い ・普段の受け答えなどはしっかりしている 提案内容 ・残薬整理のための日数調整 →◯◯日分残薬あり ・認知機能の確認 ・服薬アドヒアランス向上のために服用することの重要性の再指導 対応 ・医師に情報を共有し、薬局からも次回の来局時に服薬状況を確認するとお伝え 日常に問題はないようなので認知機能の低下ではなく、服薬への意識の低下があるのではと思われます。次回の診察時に、先生からもご確認いただけると助かります。 また、コンプライアンスを上げるために一包化の検討も必要かもしれません。一包化の際は「一包化指示」を処方箋にいただけますと幸いです。 |
文章 | 箇条書きを含めた文章 |
本日、患者家族が来局されて、患者さん本人の 薬がたくさん余っていると相談されました。 日常の認知機能の低下は、患者家族からの聞き 取りではなさそうです。 家族には医師に情報を 共有し、薬局としても次回の来局時に本人に 確認するとお伝えしました。 本人はしっかりと飲んでいると話をしている ようなので服薬することへの意識が下がって いるかもしれません。次回の診察時に、先生 からもご確認いただけると助かります。 余っている薬が◯◯日分あるので、こちらの 残薬を使用するために処方日数の調整も あわせてお願いします。 また、コンプライアンスを上げるために一包化 の検討も必要かもしれません。一包化の際は 「一包化指示」を処方箋にいただけますと 幸いです。 |
取得情報 ・薬局に来局した患者家族からの相談 ・しっかり飲んでいると話すが残薬が多い ・普段の受け答えなどはしっかりしている 提案内容 ・残薬整理のための日数調整 →◯◯日分残薬あり ・認知機能の確認 ・服薬アドヒアランス向上のために服用することの 重要性の再指導 対応 ・医師に情報を共有し、薬局からも次回の来局時に 服薬状況を確認するとお伝え 日常に問題はないようなので認知機能の低下ではなく、 服薬への意識の低下があるのではと思われます。次回 の診察時に、先生からもご確認いただけると助かります。 また、コンプライアンスを上げるために一包化の検討 も必要かもしれません。一包化の際は「一包化指示」 を処方箋にいただけますと幸いです。 |
また、下記を意識して箇条書きの項目を作るとさらに効果的です。
- 誰から得た情報なのか
- いつ、どのような場合に得た情報なのか
- その際にどのような対応をしたのか
- 情報を提供した理由と提案
この情報を読む医師をイメージして、どのように記載すれば読みやすく意味のある情報になるかを頭の中で整理してから書くようにしましょう。
書式の工夫
これまで、いくつかのトレーシングレポートの書式を紹介してきましたが、自社で書きやすいような書式を作成して提出しても構いません。
例えば厚生労働省の書式1)を見たとき、報告する内容によっては使用しない箇所があるかもしれません。そのような場合は、空欄にして提出するのではなく、欄そのものを消してしまっても良いでしょう。伝えたい情報を確実に伝えることが大事ですので、記載しないのであれば内容から外してしまいましょう。
また、こちらの書式では「情報提供の概要」と書かれている箇所が全体の核であり、最も伝えたいところなのですが、他と同じような見た目になってしまっています。そのため、ここを大きく目立たせることも有用です。忙しい合間で医師は情報に目を通すので、パッと見た時に、この情報は何を伝えたいものなのかが分かると効果的です。単に目を通すだけで良いのか、返答が必要なのかも分かるようにしておくことも重要です。
伝えたい情報がたくさんあって、あれもこれもとなる場合が多いと思います。しかし、冒頭で述べたように医師へ送る手紙なので、こちらの伝えたいことが確実に伝わることが最も重要です。読みやすい文字やレイアウトで、簡潔に分かりやすく伝える必要があります。そして前回にもお伝えしましたが、医師へ指示や命令をするのではなく、報告と提案をして一緒に患者さんの治療を考えるという気持ちでトレーシングレポートを作成しましょう。