医師に情報を共有するトレーシングレポートの書き方
前回は、トレーシングレポートの概要について説明しました。今回の記事では、実際にトレーシングレポートとはどのようなものなのかを解説します。
トレーシングレポートは大きく分けると、薬剤師が知り得た情報を医師に報告・共有するものか、その情報を使って処方内容や治療方針へ提案も行うものか、の2つに分類できます。今回は、報告を目的とした「情報共有タイプ」の書き方を見ていきましょう。
基本となるトレーシングレポートの書式を確認
まずは、前回の記事でもご紹介した厚生労働省の様式を確認しましょう1)。
(患者の服薬状況等に係る情報提供書1)から一部抜粋)
薬剤師が記載する内容はこのようになっており、1番上にはどのような情報を提供するのかを記載する箇所があります。次に、併用薬や服用状況、そして副作用の可能性のある症状などを記載する箇所があり、最後に薬剤に関する提案について記載します。
薬剤師がトレーシングレポートで報告できる有用な情報はたくさんありますが、まずはこちらに書かれている内容を覚えておくのが良いでしょう。では、実際にどのような情報を報告するかを考えてみます。
薬剤師が得た有用な情報をトレーシングレポートで積極的に伝える
前回の記事でもお伝えしたように、トレーシングレポートは緊急性や即時性はないものの、患者の治療に役立つ情報を医師に共有するツールです。
例えば、服薬指導の際に「薬を飲み始めてちょっと胃がムカムカすることがある」と言われたとしましょう。新しい薬を飲み始めたのであれば、その薬が原因かもしません。その他にも寝不足や食べ過ぎなどの生活習慣や、医師や薬剤師に伝えていない市販薬やサプリメントが原因の可能性もあります。
ひどい痛みを訴えていれば、すぐにその場で医師に連絡して、胃薬の追加提案や処方薬の変更、受診勧奨を行う必要があります。一方で、ちょっと気になる程度であれば、「少し様子を見て、続くようなら次回の受診の際に先生に相談してみてください」と指導することもあると思います。
このような場合、これまでは薬剤師から医師への情報提供は行わず、患者さん自身が次回の受診の際に伝えていました。しかし、次回の受診の際に症状が気にならなくなっていれば、患者さんは医師に伝えない可能性がありますし、他の話をしていて医師に伝え忘れることもあるでしょう。このような事態を避けるために、患者さんから得られた情報の共有を目的としてトレーシングレポートで報告することができます。
この情報を医師にトレーシングレポートとして送っておくことによって、医師が「この患者さんは胃のムカムカがあった」と事前に分かった状態で診察を行うことができます。すると、これまでよりもさらに精度の高い診察を行うことができるようになるでしょう。