トレーシングレポートで医師に提案を伝える書き方
前回に続いて今回もトレーシングレポートの書き方について解説します。今回は情報の報告だけではなく、医師への提案を行う「処方提案タイプ」について考えていきます。
第二回目にお伝えしたような、情報を報告・共有するだけではなく、医師への提案も行う場合は、その提案を医師が読んで判断しやすいように記載しなければなりません。患者さんから聞き取った情報だけではなく、それまでの状況や、薬剤師としての評価、その提案をするに至った根拠などをあわせて記載する必要があります。
レーシングレポート(服薬情報等提供書)とは?
トレーシングレポート(服薬情報等提供書)は服薬指導や服薬フォローアップを行った時に、医師が知らないであろう、患者の薬物療法に有用と思われる情報を得た際に、処方医へその情報を報告する手段です。
特定薬剤管理指導加算2、吸入薬指導加算、調剤後薬剤管理指導加算等の算定要件に文書による情報提供が含まれるなど、調剤報酬を算定していくのにも必要となります。
しかし、その調剤報酬を算定すること以外にも様々なケースでトレーシングレポートは活用できます。ここでは医師に対して文書で情報提供する際の一般的な注意事項について解説します。
どんなシーンでトレーシングレポートを提出するのか?
実際にどのような時にトレーシングレポートを医師に提出するのかあげてみます。
平成30年の調剤報酬改定で新設された服用薬剤調整支援料(現:服用薬剤調整支援料1)から、ポリファーマシー対策として減薬の提案をしなくてはならない…と思い込んでいる薬剤師さんをよく聞きます。
たしかに緊急性のない問題がある多剤併用を見かけたらトレーシングレポートを提出する、または疑義照会するということはぜひ行っていきたいですし、求められていることでもあります。
他にも、令和2年4月の調剤報酬改定で新設された、特定薬剤管理指導加算2をイメージして、専門性の高い報告をしなくてはならない…と自らを追い込んでしまっている薬剤師さんもいます。
薬剤師として専門性を発揮することもとても重要ですし、積極的に行っていきたいところですんで、もう実施できている方は継続しましょう。でも、まだ一度もトレーシングレポートを書いていないという方は、まずは簡単なことからトレーシングレポートを始めてみましょう。まず行動してみる、これがとても大事です。
どのような提案をするべきか
では、どのような提案をすることがあるかを考えてみたいと思います。
早期に副作用を発見するために、定期的な血液検査を行うことが求められている薬があります。そのような薬を服用している患者さんとお話していると、副作用の兆候に気付いたり、あるいは血液検査を最近受けていないという情報を得たりすることがあると思います。こういった場合、検査の実施を提案できます。
また、1日3回毎食後に服用している患者さんが、夜勤のシフトで勤務している場合、服用のタイミングは個別に考える必要があります。場合によっては、服用回数の異なる同効薬への変更を提案する方が良いかもしれません。
他にも、ポリファーマシー対策のための減薬、相互作用や加齢による薬の変更や減量なども考えられます。緊急性は高くないが、患者の治療をより良くさせると薬剤師が判断したものは、医師に積極的に情報を提供しながら提案を行いましょう。