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臨床論文で服薬指導をアップデート!

更新日: 2020年10月27日 児島 悠史

「予防接種したのに、インフルエンザにかかった」と不信感を抱く患者への説明

臨床論文で服薬指導をアップデートの画像1

患者さんの質問に対して、回答に困ったことはありませんか? このシリーズでは臨床論文から得た知識を活用し、より説得力のある服薬指導をめざします。
実際の服薬指導のシーンを想定した会話形式で紹介します。第5回はインフルエンザワクチンについてです。

今回の論文

N Engl J Med.369(26):2481-91,(2013) PMID:24328444
内容:3~8歳の小児5,000人を対象にした、4価のインフルエンザワクチン接種の効果を検証した研究で、感染を55.4%、重症化を73.1%抑制した、というランダム化比較試験。

ポイント

pointインフルエンザのワクチン接種で得られる感染予防効果は、およそ60%程度
pointワクチンが防ぐ重症化とは、死亡や入院といった生命に関わるような事態のこと
point「ワクチン接種したのに発症した」という経験から、ワクチン軽視に繋がらないよう丁寧な説明を

服薬指導をアップデート!去年の経験から今年のワクチン接種を悩んでいる親御さんに、ワクチンで得られる効果を正確に伝えるとともに、去年の選択も間違いではなかったと肯定する寄り添いを。

患者

インフルエンザの予防接種、子どもには今年も受けさせた方が良いでしょうか?

薬剤師

そうですね、毎年の接種をおすすめはしていますが、何か気になることでもありましたか?

患者

実は、去年も一昨年もちゃんと予防接種していたのに、2年連続でインフルエンザにかかってしまったんです。

薬剤師

そうだったんですね…それは大変でしたね

患者

はい、熱も39℃を超えてしんどそうだったし、予防接種の意味はなかったのかなって。

薬剤師

なるほど、予防接種したのにインフルエンザにはかかるし高熱は出るしで、ワクチンって何だったのか、ということですね。

患者

そうです、お金を払って、子どもにも痛い思いさせたのに、なんか期待外れだなって。

薬剤師

確かに、インフルエンザワクチンの感染を防ぐ効果は60%くらい(※1)なんです。ですから、予防接種をしても感染・発症することも、実は結構起こってしまいます。

ちょっと解説※1

本論文の他にも、インフルエンザワクチンの感染予防効果を検証した研究は数多くあります。シーズンによって40~70%で変動します1)が、平均すると60%くらいです。これは、100人中10人が発症する事態を、100人中4人が発症する事態にまで抑えられることを意味します。

患者

へぇ、そこそこは防いでくれるものなんですね

薬剤師

はい、確かに100%防げるわけではないのでやや物足りなさはあるのですが、確実にリスクは下げてくれます。

患者

じゃあ去年と一昨年は運悪くインフルエンザになってしまったので、予防接種をした意味はなかったってことですね…

薬剤師

いえ、実は予防接種をしていると、もし運悪くインフルエンザにかかってしまっても、重症化して命に関わるような事態になってしまうことをかなり減らせる(※2)

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児島 悠史
こじま ゆうし

薬剤師 / 薬学修士 / 日本薬剤師会JPALS CL6。
2011年に京都薬科大学大学院を修了後、薬局薬剤師として活動。
「誤解や偏見から生まれる悲劇を、正しい情報提供と教育によって防ぎたい」という理念のもと、ブログ「お薬Q&A~Fizz Drug Information」やTwitter「@Fizz_DI」を使って科学的根拠に基づいた医療情報の発信・共有を行うほか、大学や薬剤師会の研修会の講演、メディア出演・監修、雑誌の連載などにも携わる。
主な著書「薬局ですぐに役立つ薬の比較と使い分け100(羊土社)」、「OTC医薬品の比較の比較と使い分け(羊土社)」。
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