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臨床論文で服薬指導をアップデート!

更新日: 2020年11月17日 児島 悠史

「風邪なのに抗生物質を出してもらえなかった」と不満そうな患者への対応

臨床論文で服薬指導をアップデート!の画像

患者さんの質問に対して、回答に困ったことはありませんか? このシリーズでは臨床論文から得た知識を活用し、より説得力のある服薬指導をめざします。
実際の服薬指導のシーンを想定した会話形式で紹介します。

今回の論文

Ann Fam Med.11(2):165-72,(2013) PMID: 23508604
内容:上気道感染症(いわゆる風邪)に抗菌薬を使うことで、肺炎による入院リスクを僅かに下げられるが、1人の入院を防ぐためには12,255人に薬を使う必要がある、と推算されたコホート研究。

ポイント

point多くがウイルス性の風邪に、細菌を退治する抗菌薬を使っても、早く治ったりするわけではない
point以前は、悪化して肺炎になることを防ぐために使われることもあったが、その効果はとても小さい
point薬を「無意味」と表現すると、他の細菌感染症の際に自己判断で飲まなくなってしまう恐れがある


服薬指導をアップデート!風邪の時は抗菌薬を使わないといけない、と考えている人も多い。薬を使うメリット・デメリットをきちんと説明し、この誤解を上手に解く服薬指導をしよう。

患者

風邪だろうと言われたんですけど、今日は抗生剤(抗菌薬)って処方されていますか?

薬剤師

えっと、風邪ということなので、抗菌薬は処方されていないですね

患者

えっ、風邪は抗菌薬を使わないと治らないんじゃないですか?

薬剤師

いえ、風邪のほとんどはウイルスによるもの(※1)なので、細菌を退治する抗菌薬は基本的に必要ないですよ

ちょっと解説※1

いわゆる風邪症候群を引き起こす病原体の9割近くは、「アデノウイルス」や「ライノウイルス」といったウイルスです1)。一方、抗菌薬は細菌を退治する薬のため、風邪症候群に用いても基本的に効果はありません。実際、抗菌薬を使っても風邪の臨床転帰や患者満足度は変わらないという報告もあります2)

患者

風邪が悪化しないように抗菌薬を使う、と聞いたことがあったのですが、意味がなかったんですね

薬剤師

よくご存知ですね。確かに、昔はその目的でよく使われていました

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児島 悠史
こじま ゆうし

薬剤師 / 薬学修士 / 日本薬剤師会JPALS CL6。
2011年に京都薬科大学大学院を修了後、薬局薬剤師として活動。
「誤解や偏見から生まれる悲劇を、正しい情報提供と教育によって防ぎたい」という理念のもと、ブログ「お薬Q&A~Fizz Drug Information」やTwitter「@Fizz_DI」を使って科学的根拠に基づいた医療情報の発信・共有を行うほか、大学や薬剤師会の研修会の講演、メディア出演・監修、雑誌の連載などにも携わる。
主な著書「薬局ですぐに役立つ薬の比較と使い分け100(羊土社)」、「OTC医薬品の比較の比較と使い分け(羊土社)」。
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