新型コロナのmRNAワクチン、接種すると不妊になるって本当?
新型コロナウイルスワクチン(mRNAワクチン)に関しては様々なデマ情報が流れていますが、その代表的なものの1つがこの「不妊になる」というものです。こんな不安を相談された際、どんな対応をすれば良いでしょうか。
新型コロナのmRNAワクチン、接種すると不妊になるの?
SNSやYouTubeでは「新型コロナウイルスワクチン(mRNAワクチン、以下、「ワクチン」)の“危険性”」を強調するようなデマ情報によく遭遇します。「不妊になる」という情報もその1つですが、そんな情報を見てしまった患者さんは強い不安を感じて当然です。場合によっては、「危険なワクチンを接種してしまった」という後悔の念に苛まれてしまうケースもあります。もしこんな相談をされた場合は、無用の不安や後悔をしなくて良いよう、しっかりと誤解を解消できる説明をすることが重要です。
服薬指導アップデートの要所
- 「ワクチン接種で不妊になるという報告はない」ではなく、「ワクチン接種で不妊にならないことは確認済」
- むしろ新型コロナウイルスに感染した時の方が、現実的な不妊リスクが確認されている
参考になる論文「新型コロナウイルス感染症ワクチンの生殖能力に対する影響」
Vaccine . 2022 Sep 12;S0264-410X(22)01118-5.
(概要)
生殖能力に対する新型コロナのワクチン接種の影響を調査した、29件の研究のメタ解析。ワクチン接種歴のある人とない人で、生殖能力の各種パラメータや臨床的な妊娠成功率に差は観察されなかったため、「ワクチン接種で不妊になる」という心配をする必要はない、ということが明らかになった。
(主な結果)
・女性
エストラジオール値:3,509pMol/L vs 3,214pMol/L (差なし)
臨床的妊娠成功率 :0.45 vs 0.47 (差なし)
・男性
精子の運動率:44% vs 43% (差なし:42%以上で正常)
精液の量 :2.6mL vs 2.7mL (差なし:1.4mL以上で正常)
精子の濃度 :5,060万/mL vs 5,540万/mL (差なし:1,600万以上で正常)
☞論文のPOINT
男女ともに、ワクチン接種歴の有無で生殖能力に差は生じていない
ワクチン接種に「不妊になる」というリスクは潜んでいないことが確認された、と言える
「不妊になるという報告はない」ではなく、「不妊にはならないという報告がある」