臨床論文で服薬指導をアップデート!

更新日: 2024年9月24日 児島 悠史

新型コロナウイルス感染症の後遺症、良い薬はないかと相談されたら…?

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新型コロナウイルス感染症には様々な後遺症がありますが、後遺症に対する明確な治療薬や治療法は確立していないため、対症療法を行っていくしかありません。ここで1つ知っておきたいのが、「ワクチン接種」が後遺症の症状を軽減するかもしれない、という話題です。薬剤師として提案できる1つの可能性を紹介します。

新型コロナの後遺症に効果的な薬は?

患者

コロナになってから、咳や疲労感、筋肉痛といった症状が長引いていてしんどい。時間が経てば治ると言われたが、こういった症状を治すのに何か良い薬はないのか。

新型コロナウイルス感染症には様々な後遺症があります。この後遺症に対する明確な治療薬や治療法は確立していないため、個々の症状に合わせた対症療法を行っていくしかありませんが、疲労感や集中力障害のように対症療法の手立てが乏しい症状も多く、治療に難渋するのが実情です。

ここで1つ知っておきたいのが、「ワクチン接種」は後遺症のリスクを軽減するだけでなく、既に現れている後遺症の症状を軽減するかもしれない、という話題です。

■参考になる論文

Int J Infect Dis . 2023 Nov:136:136-145.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37717649/

(概要)
新型コロナウイルス感染症の後遺症(多いもの:疲労感81.9%、集中力障害47.0%、記憶障害39.8%、頭痛32.5%、息切れ31.5%)に悩んでいる患者83名を対象に、ワクチン接種の前後でその症状の変化を評価した前向きコホート研究。

(結果)

  • 症状の数:6.56 → 3.92へ有意に減少
  • WHOの精神的健康状態スコア:42.67 → 56.15へ有意に改善 (※100点満点のQOL評価)

☞アップデートの要所

  • ワクチン接種をしておくことで、罹患した際の後遺症リスクは大幅に減らせる
  • 既に現れている後遺症の症状も、ワクチン接種で軽減される可能性があるかも

■服薬指導アップデートのポイント①~コロナ後遺症に対する特異的な治療法はない

新型コロナウイルス感染症の後遺症としては、咳、息切れ、頭痛、腹痛、倦怠感・疲労感、不眠、筋肉痛、集中力障害、記憶障害、脱毛など様々な症状が報告されています。これらの後遺症は、事前にワクチン接種をしておくことでそのリスクを50~70%近く抑制できること1,2,3)、発症早期に抗ウイルス薬を使った治療を行うことでも20~30%程度は抑制できること4)が報告されていますが、既に現れてしまった後遺症に効果的な治療法はまだ見つかっていません。そのため、咳であれば咳止めや吸入薬、頭痛や筋肉痛であれば解熱鎮痛薬、不眠であれば睡眠薬…といったように困っている症状に合わせて1つずつ対症療法を行っていく、あるいは体質に合わせた漢方薬で治療を試みる、といった方法しかないのが現状です。

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児島 悠史
こじま ゆうし

薬剤師 / 薬学修士 / 日本薬剤師会JPALS CL6。
2011年に京都薬科大学大学院を修了後、薬局薬剤師として活動。
「誤解や偏見から生まれる悲劇を、正しい情報提供と教育によって防ぎたい」という理念のもと、ブログ「お薬Q&A~Fizz Drug Information」やTwitter「@Fizz_DI」を使って科学的根拠に基づいた医療情報の発信・共有を行うほか、大学や薬剤師会の研修会の講演、メディア出演・監修、雑誌の連載などにも携わる。
主な著書「薬局ですぐに役立つ薬の比較と使い分け100(羊土社)」、「OTC医薬品の比較の比較と使い分け(羊土社)」。

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