片頭痛治療薬「トリプタン」は、できるだけ我慢してから使うのが良い?


片頭痛治療薬の「トリプタン系薬」は片頭痛の症状が現れてから使う薬ですが、「少しでも症状が現れたら使う」のか、あるいは「なるべく頭痛を我慢してから使う」のか、その“適切なタイミング”の判断は意外と難しいところです。今回は、そんな頓服薬を使う“タイミング”を考える上で重要な論文を紹介します。
参考になる論文
Cephalalgia . 2012 Feb;32(3):226-35.

引用元:片頭痛に対する「トリプタン系薬」を服用するタイミングの時間差比較図(筆者作成)
(概要)
片頭痛に対する「トリプタン系薬」を服用するタイミングを、「発症1時間以内」と「発症から1時間以上が経過してから」に分けて、その効果を比較検証した研究。
(結果)
- 2時間後の頭痛解消率は52.8%と30.2%で、「発症1時間以内」に服用したグループの方がよく効いていた
- 「発症から1時間以上が経過してから」のグループも、「発症1時間以内」に服用のタイミングを切り替えると、頭痛解消率は53.7%にまで改善した。
☞アップデートの要所
- 「トリプタン系薬」は、片頭痛だと気づいたら早めに服用した方が、より高い効果を期待できる
- 「トリプタン系薬」の早期使用をためらう色々な理由を踏まえた、必要な情報提供とアドバイスが重要
「トリプタン系薬」は、なぜ“我慢”してから使われるのか
片頭痛治療薬の第一選択薬は、「ナラトリプタン」や「スマトリプタン」といった「トリプタン系薬」です。基本的に、この「トリプタン系薬」はどの薬も半減期が短いため、片頭痛が発症する前に予防的に服用しても効果は期待できません。かといって、冒頭で紹介した報告のように、症状が重くなってから飲んでも、十分な効果が得られなくなってしまう恐れがあります。
そのため、「トリプタン系薬」は“片頭痛だと気づいたらすぐに使う”ことが重要になります。しかし、いくつかの事情から、こうした片頭痛の早期治療はそう簡単なものではありません。
片頭痛かどうかの見分けは、片頭痛患者にも難しい
まず、日ごろよく片頭痛に悩まされている患者でも、いま自分が感じている頭痛が片頭痛なのか、あるいは緊張型頭痛なのか…といった頭痛の見分けが非常に難しい、という点が挙げられます。「トリプタン系薬」は“痛み止め”ではないため、緊張型頭痛には全く効きません。そのため、“片頭痛であるという確信”が得られるまでは「トリプタン系薬」の使用を控える、といった判断がよく行われることになります。
これを防ぐには、患者自身が自分の片頭痛の特徴やパターンを把握し、片頭痛であるかどうかの見分けを正確にできるよう、「頭痛日記」などをつけることが重要になります。
登場してすぐの頃は、“我慢してから使う”薬と思われていた
また、「トリプタン系薬」は発売されてすぐの頃、既存薬のような“頭痛を感じたらすぐに使う”といった使い方が推奨されなかったために、“我慢してから使う薬”だと印象づけられてしまったという過去があります1)。さらに、発売当初の「トリプタン系薬」は1回あたり1,000円以上もしたため、この経済的コストが早期治療をためらう大きな理由にもなっていました2)。