1. 薬剤師トップ
  2. 薬剤師コラム・特集
  3. 臨床論文で服薬指導をアップデート!
  4. 「アムロジピン」を使い始めてから、どうも浮腫む…

臨床論文で服薬指導をアップデート!

更新日: 2025年6月8日 児島 悠史

アムロジピンで浮腫(むくみ)が起きたとき、シルニジピンに変更する?

臨アムロジピンで浮腫(むくみ)が起きたとき、シルニジピンに変更する?のメイン画像

主要降圧薬のCa拮抗薬では、しばしば浮腫の副作用が問題になりますが、浮腫が起きたからといって全てのCa拮抗薬が選択肢から外されてしまうわけではありません。

患者
患者

「アムロジピン」を使い始めてから、どうも浮腫(むくみ)があるんだけど…

主要降圧薬の1つであるCa拮抗薬は、高血圧治療において重要な役割を担っていますが、しばしば「浮腫(むくみ)」の副作用が問題になります。この副作用は全てのCa拮抗薬に共通するもののため、浮腫が治療上も問題になる場合には、Ca拮抗薬からARBやACE阻害薬などにカテゴリごと薬を切り替えるのが一般的です。しかし、Ca拮抗薬で治療を継続したい場合には、「シルニジピン」へ変更するという方法も選択肢になります。

参考になる論文

N Am J Med Sci . 2013 Jan;5(1):47-50.

(概要)
「アムロジピン」では浮腫が起きてしまった高血圧患者27名の薬を「シルニジピン」に変更し、4週間後の浮腫の指標(足首周囲・体重)と治療効果(血圧・脈拍)を検証した前後比較研究。

(結果)

  • 「シルニジピン」への変更で、全患者の浮腫が解消した。
  • 「シルニジピン」への変更で、降圧治療への影響はなかった。
「アムロジピン」では浮腫が起きてしまった高血圧患者27名の薬を「シルニジピン」に変更し、4週間後の浮腫の指標(足首周囲・体重)と治療効果(血圧・脈拍)を検証した前後比較研究の図

「アムロジピン」では浮腫が起きてしまった高血圧患者27名の薬を「シルニジピン」に変更し、4週間後の浮腫の指標(足首周囲・体重)と治療効果(血圧・脈拍)を検証した前後比較研究の図

☞アップデートの要所

  • Ca拮抗薬で浮腫が起こる場合、「シルニジピン」への変更で浮腫を解消できる可能性がある
  • 「シルニジピン」でも浮腫が“起こらない”わけではない点に注意

Ca拮抗薬で「浮腫(むくみ)」が起こるメカニズム

Ca拮抗薬は、細胞膜の膜電位依存性Caチャネルに作用することで血管収縮を抑制し、末梢血管抵抗を弱めて血圧を下げる効果を発揮します。このとき、末梢静脈よりも末梢動脈をより強く拡張させるために、末梢に流れ込む血液(動脈)に対して中枢に戻っていく血液(静脈)が少なくなり、毛細血管にかかる圧が高まります。これによって、血液中の成分が毛細血管の外に漏れだし、浮腫が生じることになります。

この浮腫は、「循環体液量の増加」ではなく「毛細血管にかかる圧が強くなっている」ことによって起こるため、利尿薬を使ってもあまり改善しません。そのため、降圧薬として利尿薬を併用していても起こることがあります。

また、この浮腫は作用メカニズム上、Ca拮抗薬では避けられない副作用のため、どのCa拮抗薬を使っていても起こることがあります。このことから、Ca拮抗薬で浮腫が問題になる場合には、使う薬をARBやACE阻害薬など別カテゴリの主要降圧薬に切り替えるのが一般的ですが、左室肥大や狭心症を伴う高血圧にはCa拮抗薬が積極的適応1)のため、安易にカテゴリを切り替えられないこともあります。その場合に選択肢となるのが、この「シルニジピン」への変更という方法です。

「シルニジピン」で浮腫が起こりにくいのは何故?

お題論文は、「アムロジピン」で浮腫が起きてしまったときに、薬を「シルニジピン」に変更することで、治療効果に影響することなく浮腫を解消できた、とする報告です。これは、Ca拮抗薬で起きた浮腫を、薬のカテゴリを変更することなく同じCa拮抗薬内の変更だけで解決できる可能性を示唆する重要なエビデンスと言えます。このようなことが起こる理由としては、「アムロジピン」と「シルニジピン」が作用するCaチャネルの「型」の違いが関係していると考えられます。

または

m3.com会員登録いただくと、医療ニュースや全てのコラム記事が読み放題&ポイントが貯まる

新規会員登録(無料)

こちらもおすすめ

児島 悠史の画像

児島 悠史
こじま ゆうし

薬剤師 / 薬学修士 / 日本薬剤師会JPALS CL6。
2011年に京都薬科大学大学院を修了後、薬局薬剤師として活動。
「誤解や偏見から生まれる悲劇を、正しい情報提供と教育によって防ぎたい」という理念のもと、ブログ「お薬Q&A~Fizz Drug Information」やTwitter「@Fizz_DI」を使って科学的根拠に基づいた医療情報の発信・共有を行うほか、大学や薬剤師会の研修会の講演、メディア出演・監修、雑誌の連載などにも携わる。
主な著書「薬局ですぐに役立つ薬の比較と使い分け100(羊土社)」、「OTC医薬品の比較と使い分け(羊土社)」。

キーワード一覧

臨床論文で服薬指導をアップデート!

この記事の関連記事

この記事に関連するクイズ

アクセス数ランキング

新着一覧

28万人以上の薬剤師が登録する日本最大級の医療従事者専用サイト。会員登録は【無料】です。

薬剤師がm3.comに登録するメリットの画像

m3.com会員としてログインする

m3.comすべてのサービス・機能をご利用いただくには、m3.com会員登録が必要です。

注目のキーワード

医薬品情報・DI 調剤報酬改定 薬物療法・作用機序 服薬指導 医療過誤・ヒヤリハット ライフ・雑学 医療クイズ 疾患・病態 診療報酬改定 ebm