複数の点眼薬がある時、間隔をあけずに連続で使うとどうなるのか?

複数の点眼薬が処方されている場合、ある程度の時間間隔をあけて点眼するのがセオリーですが、もし連続で点眼するとどうなるのか。その参考になる論文を紹介します。

複数の点眼薬が処方されている場合、点眼薬の性質(例:水性か懸濁性か)に合わせて適切な順序で、さらに最初に点眼した薬を洗い流してしまわないように、次の点眼薬はある程度の時間間隔をあけてから使う、といった注意を払う必要があります。しかし、朝の忙しい時間帯には、こうした手間が面倒なことも多く、患者さんからは「連続での点眼」をしても良いか尋ねられることもあります。今回は、そんな相談を受けた時に参考になる論文を紹介します。
参考になる論文
J Pharm Sci . 1976 Dec;65(12):1816-22.

(概要)
「ピロカルピン」と「生理食塩水」の点眼を、様々な間隔で行い、それぞれ房水内薬物濃度がどう異なるかを測定・比較した、ウサギを用いた動物実験。
(結果)
・連続で点眼すると、先に点眼した薬は25%程度しか吸収されない
・5分の間隔をあけると、先に点眼した薬の“洗い流し”はほぼ起きない
- 点眼薬を連続で使うと、先に使った点眼薬は大部分が洗い流されてしまう恐れがある
- 複数の点眼薬を使う際は、5分程度の間隔をあけるのが無難
複数の点眼薬が処方されているときの基本
点眼薬を連続で使うと、先に点眼した薬液が、後から点眼した薬液で洗い流されてしまうため、必要な効果を得られないことになります。そのため、複数の点眼薬を使う場合には、ある程度の時間間隔をあけて点眼する必要があります。
このとき必要な時間間隔は、点眼薬の性質によって異なり、「水性」の製剤であれば5分程度、「懸濁性」や「ゲル化」製剤であれば10分以上の間隔が必要とされています(☞参考:https://pharmacist.m3.com/column/special_feature/5312)。
しかし、こうした時間間隔をあけた点眼は非常に面倒なため、「連続で点眼をしてしまいたい」、あるいは「1~2分の間隔でも十分ではないか」といった相談を受けることもあります。そんなとき、薬剤師としてどこまでのショートカットを許容できるのか、あるいは許容できないのか、これを考える上で重要な参考情報になるのが、今回の論文です。
今回の論文では、通常は5分程度の間隔が必要とされる水性点眼薬に関して、30秒、1分、2分、5分の間隔で生理食塩水を点眼し、どのくらい“洗い流しの影響”があったかをウサギを用いて検証しています1)。セオリー通りに5分の間隔をあけた場合は、特に“洗い流し”の影響は確認されなかったものの、1~2分の間隔では先に点眼した薬物は40~50%が洗い流されてしまっている、という結果になっています。つまり、吸収の早い水性点眼薬でも、やはりセオリー通りに5分の間隔は必要で、1~2分に短縮できるわけではなさそうです。
それでも「どうしても面倒」な場合は…
とは言え、それでも面倒で、「5分」にこだわるあまり、そもそもの治療を挫折してしまいそうな場合には、何か別の方法を考える必要があります。