「ハチミツ」は、風邪をひいた子どもの“夜間の咳”を減らす?薬と比べて効果は?


風邪、インフルエンザ、新型コロナなどの上気道感染症では“咳”の症状がよく現れますが、夜間の咳は睡眠を妨害するため、心身ともに大きな負担に繋がります。特に、子どもが夜間を通して咳をしていると、親も心配になって親子ともに眠れなくなり、著しいQOLの低下を起こす恐れがあります。そのため、「咳止めの薬」を求められることも多いですが、有効性や安全性の観点から「咳止めの薬」を安易に増やすことも望ましくありません。今回は、そんな場面で思い出してもらいたい論文情報を紹介します。
参考になる論文
Pediatrics. 2012 Sep;130(3):465-71.

(概要)
上気道炎で咳をしている1~5歳の小児300名に対し、就寝前に各種ハチミツかナツメヤシシロップ10gを摂取させ、夜間の咳の頻度・重症度・睡眠状況を比較した、二重盲検のランダム化比較試験。
(結果)
・ユーカリ、シトラス、シソのハチミツは、ナツメヤシシロップよりも咳の頻度
- 小児の“咳止め”として「ハチミツ」は有用(科学的根拠もある)
- 特に、夜間の咳で親子の睡眠が妨げられているような場合には、就寝前に10gの摂取を提案できる
上気道感染症による咳の症状と、薬の限界
風邪やインフルエンザ、新型コロナなどの上気道感染症でよく現れる“咳”の症状は、体力を消耗するだけでなく、睡眠も妨げる1)ことがある、非常に厄介なものです。そのため、「咳止めの薬」に対する需要・期待は大きく、必要以上に薬を求められるケースも少なくありません。
しかし、こうした上気道感染症による急性の咳に対し、薬はほとんど有効ではなく2)、“薬の追加や増量”を行っても薬学的なメリットはほとんど期待できません。そのため、患者の求めに対して、言われるがまま「咳止めの薬」を増やすのは、あまり良い対応にはなり得ません。…とは言え、患者が直面している「子どもの夜間の咳」という困り事に対し、打つ手が全くなければ、そんな正論を述べたところで何の解決にもなりません。
こういった事情から、ほとんど薬学的なメリットを期待できない“薬”であっても、プラセボ代わりに使わざるを得ないということも多く、薬剤師として悩ましいところです。