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臨床論文で服薬指導をアップデート!

更新日: 2025年9月12日 児島 悠史

「ハチミツ」は、風邪をひいた子どもの“夜間の咳”を減らす?薬と比べて効果は?

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患者
患者

夜、子どもが咳でつらそうにしている。もっと「咳止めの薬」をもらえないか。

風邪、インフルエンザ、新型コロナなどの上気道感染症では“咳”の症状がよく現れますが、夜間の咳は睡眠を妨害するため、心身ともに大きな負担に繋がります。特に、子どもが夜間を通して咳をしていると、親も心配になって親子ともに眠れなくなり、著しいQOLの低下を起こす恐れがあります。そのため、「咳止めの薬」を求められることも多いですが、有効性や安全性の観点から「咳止めの薬」を安易に増やすことも望ましくありません。今回は、そんな場面で思い出してもらいたい論文情報を紹介します。

参考になる論文

Pediatrics. 2012 Sep;130(3):465-71.

「ハチミツ」は、風邪をひいた子どもの“夜間の咳”を減らす?薬と比べて効果は?の画像

(概要)
上気道炎で咳をしている1~5歳の小児300名に対し、就寝前に各種ハチミツかナツメヤシシロップ10gを摂取させ、夜間の咳の頻度・重症度・睡眠状況を比較した、二重盲検のランダム化比較試験。

(結果)
・ユーカリ、シトラス、シソのハチミツは、ナツメヤシシロップよりも咳の頻度


☞アップデートの要所
  • 小児の“咳止め”として「ハチミツ」は有用(科学的根拠もある)
  • 特に、夜間の咳で親子の睡眠が妨げられているような場合には、就寝前に10gの摂取を提案できる

上気道感染症による咳の症状と、薬の限界

風邪やインフルエンザ、新型コロナなどの上気道感染症でよく現れる“咳”の症状は、体力を消耗するだけでなく、睡眠も妨げる1)ことがある、非常に厄介なものです。そのため、「咳止めの薬」に対する需要・期待は大きく、必要以上に薬を求められるケースも少なくありません。

しかし、こうした上気道感染症による急性の咳に対し、薬はほとんど有効ではなく2)、“薬の追加や増量”を行っても薬学的なメリットはほとんど期待できません。そのため、患者の求めに対して、言われるがまま「咳止めの薬」を増やすのは、あまり良い対応にはなり得ません。…とは言え、患者が直面している「子どもの夜間の咳」という困り事に対し、打つ手が全くなければ、そんな正論を述べたところで何の解決にもなりません。

こういった事情から、ほとんど薬学的なメリットを期待できない“薬”であっても、プラセボ代わりに使わざるを得ないということも多く、薬剤師として悩ましいところです。

就寝前の、「ティースプーン1杯のハチミツ」という選択肢

または

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児島 悠史
こじま ゆうし

薬剤師 / 薬学修士 / 日本薬剤師会JPALS CL6。
2011年に京都薬科大学大学院を修了後、薬局薬剤師として活動。
「誤解や偏見から生まれる悲劇を、正しい情報提供と教育によって防ぎたい」という理念のもと、ブログ「お薬Q&A~Fizz Drug Information」やTwitter「@Fizz_DI」を使って科学的根拠に基づいた医療情報の発信・共有を行うほか、大学や薬剤師会の研修会の講演、メディア出演・監修、雑誌の連載などにも携わる。
主な著書「薬局ですぐに役立つ薬の比較と使い分け100(羊土社)」、「OTC医薬品の比較と使い分け(羊土社)」。

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