1日1回の降圧薬は「朝」と「夕」どちらに服用するのが効果的か?


ARBやACE阻害薬、Ca拮抗薬などのよく使われる降圧薬には1日1回で服用する薬が多いですが、一般的に服用のタイミングが指定されているわけではありません。そのため、患者さんごとの状況に合わせて「朝」か「夕」に服用するのが基本です。
このとき、降圧薬は「朝」に服用するのと、「夕」に服用するのとで効果に差が生じるのであれば、安易に服用のタイミングを変えることはできません。一方で「朝」でも「夕」でも効果に大差ないのであれば、服薬アドヒアランスを重視した対応も可能です。
今回は、そんな場面で参考になる論文情報を紹介します。
参考になる論文
Lancet . 2022 Oct 22;400(10361):1417-1425.

心血管イベント発生率の追跡調査結果
(概要)
降圧薬で治療を行っている高血圧患者を対象に、「すべての降圧薬を朝に服用」と「すべての降圧薬を夕に服用」にグループ分けし、心血管イベントの発生率を追跡調査した研究。
(結果)
・心血管イベントの発生率は、追跡5.2年の間に3.7%と3.4%で差はなかった。
- 1日1回の降圧薬は、「朝」服用でも「夕」服用でも効果は変わらなさそう
- 患者さんにとって“飲み忘れ”が少なくなるタイミングで服用してもらうのが良さそう
主要降圧薬の用法
ARBやACE阻害薬、Ca拮抗薬、β遮断薬、MRA、利尿薬といった薬は、「1日1回」で安定した降圧作用を発揮できるように改良されてきました。そのため、現在使われている主要降圧薬の多くは、「1日1回」の服用で治療ができるようになっています。
この「1日1回」の服用タイミングについては特に指定がなく、また「朝」と「夕」のどちらで服用した方がより高い効果を得られるのかもハッキリしていませんでした。そのため、個々の事情に合わせて人それぞれの方法で服用をしている、というのが実情です。
結果として、せっかく「1日1回」の薬で治療を行っているのに、朝にも夕にも飲むべき薬がある、といった面倒なケースも少なくありません。
そんなとき、降圧薬は「朝」「夕」どちらかにまとめてしまっても良いのではないか、という着想から行われたのが、今回の研究です。
降圧薬の服薬アドヒアランスは、実際の効果に直結する
今回の研究結果は、降圧薬は「朝」と「夕」どちらで服用しても治療効果に大きな差は生じない可能性がある、ということを示しています。であれば、“なんとなく分かれてしまった服用のタイミング“にこだわるよりも、”患者さんにとって飲み忘れが少ないタイミング”で服用してもらうことの方がより重要です。
高血圧治療においては、薬をきちんと80%以上飲んでいる人と、半分以上飲み忘れている人とで、心筋梗塞や脳卒中の発生率は最大2倍程度の差が生じることがわかっています。1)そのため、服薬アドヒアランスの維持が非常に大きな意味を持っているといえるでしょう。
用法の変更によって、服薬アドヒアランスの大幅な改善が期待できる場合には、こうした“服用のタイミングを朝か夕どちらかにまとめてしまう”といった方法も選択肢になってきます。
あえて「朝」や「夕」が選択されている背景事情には要注意
ただし、ここで気を付けなければならないのが、「朝」や「夕」という服用のタイミングに重要な意味があるケースです。