「薬剤師は“最後の砦”。旧世代からのバージョンアップを」アンサングシンデレラインタビュー
(C)荒井ママレ/コアミックス
世界初!病院薬剤師が主役として活躍するエンタテイメント作品であり、石原さとみさん主演ドラマの原作としても話題沸騰の漫画『アンサングシンデレラ 病院薬剤師 葵みどり』(コアミックス)。全国の薬剤師の皆さま、もうチェックはお済みですか?m3.comでは今回、同作漫画家の荒井ママレさん、医療原案担当の現役薬剤師 富野浩充さんに独占インタビュー。漫画の見どころについて語っていただいた前編に引き続き、後編ではお二人から薬剤師の皆さまへのメッセージをお届けします。
薬剤師は“最後の砦”。旧世代からのバージョンアップを
荒井さんは本作を手掛けられるまで薬剤師に関してはほとんどご存じなかったということでしたが、現在ではどんなイメージを持っていますか?
荒井ママレさん(以下 荒井)
確かに、この作品に関わるまでは「薬を出してくれる人」というくらいの、ざっくりしたイメージしか持っていませんでした。連載がスタートしたのが2018年の5月ですが、本作に携わって約2年がたった現在では、漫画でも描きましたが、私たちを守ってくれる「最後の砦」だと思っています。
1巻52p
(C)荒井ママレ/コアミックス
最後の砦、というのは薬剤師側としても嬉しいですよね。富野先生は現役の病院薬剤師でいらっしゃいますが、このあたりいかがでしょう?漫画でも描かれていたように、薬剤師はAIで代替可能な職業と言われてしまうこともありますが…
富野浩充さん(以下 富野)
20世紀世代のピッキング専門の仕事だけであれば代替できるのではないでしょうか。けれど、薬剤師も、当時の薬剤師1.0からはバージョンアップしていて、仕事内容が変化しているように感じています。
「1.0世代だけやっていれば良い」と思っている薬剤師は、今後淘汰されてしまう可能性があるかもしれないですね。
1巻16p
(C)荒井ママレ/コアミックス
たしかに「ただ薬を詰めて出すだけの人」にはならないよう、薬剤師側にも努力が必要ですね。荒井さんは「薬剤師がもっとこうだったらいいなぁ」と思われるようなことはありますか?
荒井
そういえば、ストーリーを作っていると「素人目にはできると思っていたのに禁止されていること」が結構あるな、という印象がありますね。
最近では「病院側からは退院後のかかりつけ薬局を紹介できない」ということを知って驚きました。利益供与になるから、というのも理解はできるのですが、病院間では紹介状のやり取りも含め、患者さんを紹介しあっていますよね?病院同士はいいのに、病院と薬局だとダメなの?と少し疑問に感じました。
病院薬剤部と市中の薬局の話で言うと、7.8話(2巻)で描かれていた、主人公の葵みどりと、ドラックストア薬剤師のやり取りが非常に印象に残っています。両者で意思の疎通が取れて、業務上も連携があることで、患者さんにとってはプラスもあるかと思うのですが、実際は制度上や利益供与の問題もあって難しいですね。
2巻64p
(C)荒井ママレ/コアミックス
失敗も糧に、薬剤師成長のカギは?
ドラマの葵みどりは、ある程度経験を積んだ中堅の薬剤師として描かれていますが、漫画の葵みどりは26歳。また後輩も登場し「新人薬剤師の成長」もひとつの見どころかと思います。富野さんは、新人薬剤師が心がけておくといい仕事・医療者としての心構えについてどうお考えですか?
富野
実際に患者の立場になるのは難しいですが、どの方も「自分の患者だ」と思って、当事者意識をもって接するといいです。4巻ではくるみちゃん※が一皮むけるストーリーがあります。これは荒井さんすごい!と思わずうなりました。参考になると思います。
患者さんから「名前で呼んでもらえるってうれしい」というシーンがあるのですが、これには私も共感しました。認めてもらえた、という感じがするんですよね。
※相原くるみ:主人公の葵みどりとともに働く新人薬剤師
新人のうちは、いろいろ失敗すると思います。それをどうリカバリーするか。反対に、周りが失敗したときにどうフォローするのか、そんなことを考えられるようになれればよいのではないでしょうか。
薬剤師は他の医療職と違って、サラリーマン的な「一ヵ所に勤め上げるのが偉い」というような精神が残っている部分もあるのではないでしょうか。けれど、若いうちはいろんな施設を見るのもいいと思います。極端な話をすれば、薬剤師以外の、他職種を経験してみるのもいいと思います。たとえば医師でも、他職種を経験した人とそうでない人では人当たりや深みが違いますよね。
富野さんもこうした病院の外での活動をしていらっしゃいます。たしかに、一か所、ひとつの職種にこだわるのではなく、いろいろ可能性を広げられると面白いですね。
最後になりましたが、たくさんのm3.com読者がこれからの展開に期待しています。ぜひメッセージをお願いします。
荒井
薬剤師の方がご覧になると、いろいろとつっこみたい部分もあると思いますが、忙しいお仕事の気分転換に、漫画を楽しんでいただけたらうれしいです。漫画を通じて、陰ながら応援しています!
漫画『アンサングシンデレラ 病院薬剤師 葵みどり』は「月刊コミックゼノン」(コアミックス)で絶賛連載中。コミックス1〜3巻発売中、最新4巻は4月20日発売。また、石原さとみさん主演『アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋』は、7月16日(木)夜10時より全国フジテレビ系にて放送予定です。荒井ママレさん、富野浩充さん、どうもありがとうございました!