石原さとみさん「尊敬と感謝の気持ち伝えたい」インタビュー後編
2020年の主役は「病院薬剤師」――毎週木曜よる10時より全国フジテレビ系で放送中の医療ドラマ「アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋」皆さま、もうご覧になりましたか?病院薬剤師 葵みどりが、一人一人の患者と向き合いながら、退院後の“当たり前の日常”を取り戻すために奮闘する姿を描く本作。これまでの医療ドラマではスポットライトを浴びることのなかった薬剤師の仕事に注目したヒューマンドラマは、多くの現役薬剤師たちから支持を得ています。第4話の放送を前に、m3.comでは主演の石原さとみさんにインタビューを実施。後編ではコロナ禍で撮影中断を余儀なくされたステイホームのエピソードや、医療従事者へのメッセージを紹介します。
コロナ禍で撮影中断、ステイホームを乗りこえ…
本作は当初、2020年4月に放送開始を予定されていましたが、新型コロナウイルス感染症の影響で撮影中断と放送延期を余儀なくされました。どんなお気持ちでしたか?
自粛期間中は、新型コロナウイルスの情報が多すぎて、何を信じたらいいのか分からないですし、「いつ撮影を再開できるんだろう?」という不安がありました。
ただ、ステイホーム期間中もプロデューサーさんはじめスタッフの方々とはやりとりをしていて、楽しみにしてくださっている視聴者の方々に「アンサング・シンデレラ」という作品を忘れられないように「何かしたい」という思いがあって。この状況の中でもできることは…と考えを巡らせた結果、スペシャル動画として「葵みどりのお薬講座」の制作を提案させていただきました。
「葵みどりのお薬講座」は実際の服薬指導にも使えそうな充実した内容ですね。
ありがとうございます。提案したものの、できあがった台本がとっても長くて…(笑)ただ、こうした取り組みがあったので、「セリフを覚えて演技をする」ことを忘れずにいられましたし、動画の中で衣装を身につけて葵みどりを演じることで、撮影再開後も“久しぶり”という感じにはならずにすみました。
撮影再開後も病院での撮影が難しくなるなど、さまざまな困難があったと聞きました。
そうですね…撮影を再開した日からは「もし私が油断したら、また撮影が中断して迷惑をかけてしまう」という緊張感や、怖さも感じながら撮影に臨んでいます。プライベートでも、いまは友達に会いたいと思ってもなかなか…。
ただ、すごく不思議なんですけれど、共演者の皆さんとはステイホームの2ヵ月間、会えていなかったのに前よりも仲良くなれたんです。ステイホーム期間を一緒に乗りこえた仲間として、信頼感がより深まったのかもしれませんね。キャスト同士の会話もすごく多くなりましたし、会えない時間に愛を育んでいた…わけではないんですけど(笑)安心感や、居心地の良さが増して、お芝居もよりナチュラルになっていると思います。
スタッフの皆さんもそれぞれに工夫をしてくださって、スタジオのなかに「萬津総合病院」を作って下さったんです。これまで病院のロケで撮影していたシーンが、スタジオ内で撮影できるようになったのはとてもありがたいですね。換気もしっかりして、私たちが安心してお芝居ができる環境を整えていただいています。
満を持しての放送開始、お気持ちはいかがですか?
放送開始前から、多くの薬剤師の方から期待を寄せていただいていたこともあり、楽しみにしてくださっていた視聴者の方には「お待たせしました!」という気持ちでいっぱいです。一般の方は皆さん、ステイホーム期間を経て、薬剤師や医療従事者の方々への思いが変化したのではないかと思います。私自身も、今放送することに意味のある作品にしたいという思いで、日々撮影に臨んでいます。
「葵みどり」のネームカードは撮影開始時からの相棒。細部までこだわりが詰まっており、まるで本物のようです。
撮影中、ほとんどのシーンで身につけている葵みどりのポシェット。中には調剤の必需品、はさみやボールペンが収納されています。
ときにバッシングも…女優の「アンサング」な一面とは?
本作は薬剤師に注目したドラマですが、どんな職業にも「アンサング(称賛されない)」な一面があり、そうした人たちにスポットを当てる“お仕事ドラマ”でもある、と伺いました(「ドラマ「アンサング・シンデレラ」プロデューサーが描く薬剤師の苦悩とは? 」)。石原さんは、女優としてご活躍ですが、女優のお仕事にも葵みどりのように「アンサング」な一面はあるのでしょうか?
うーん…なんだろう…難しいな。女優って、表に出る仕事ではあるんですけど、ファンの方から直接感謝されたりとか、それこそ「ありがとう」と言われる機会ってファンレターを除いては、あまりないかもしれないですね。SNSもそんなに見るタイプではないので。たとえばスポーツ選手の方は試合中に「がんばれー!」って声援を浴びていますけど、そういうのは意外とないのかも。
それよりも、マネージャーさんや事務所の方、ドラマに関わって下さるスタッフの方々こそ「アンサング」ななかで支えてくださっていると感じますね。どんな仕事にも陰と陽があって、女優は表に立つので注目を浴びます。だけどその裏にはたくさんの方々が関わって、支えてくださっている。
葵みどりという薬剤師役を演じて、「自分の仕事は多くの人たちに支えられているんだ」ということを改めて強く感じることができました。
「尊くてかっこいい!」薬剤師の仕事、ドラマを通じて伝えたい思い
最後に、m3.com読者の薬剤師、医療従事者の方々にメッセージをお願いします!
まだまだ新型コロナウイルスが猛威を振るうなか、目に見えないウイルスと戦うのは、すごく怖くて、不安だと思います。寝る時間を割いて、自分の命をかけて、多くの患者さんを救ってくださる医療従事者の皆さんには、感謝と尊敬の気持ちでいっぱいです。
防護服を着用されている間は、水を飲むこともままならない過酷な現場だと聞きました。検査や治療のAI化が進む中でも、やっぱり人を救えるのは人なんですよね。薬剤師の友人から、(新型コロナウイルス感染症から)治癒された患者さんからお礼を言われたときに、涙が流れたと聞きました。薬剤師、医師、看護師、栄養士、SPさんも…多くの医療従事者の方々がいるからこそ、いまの私たちの生活が成り立っている。心から「ありがとうございます」という気持ちです。
「今はそれどころではない」という薬剤師、医療従事者の方も多いと思います。だから、今すぐでなくてもいい、お仕事が落ち着いてから「アンサング・シンデレラ」というドラマがあることを知っていただいたときに、皆さんを少しでも励ますことができるような作品になっているといいな…と、思っています。
薬剤師、医療従事者のお仕事は本当に「尊くてかっこいい!!」ということを、本作を通じて多くの方に伝えられたらうれしいです。
連続ドラマ史上初!病院薬剤師が主役の医療ドラマ「アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋」は、毎週木曜よる10時より全国フジテレビ系で放送中。石原さとみさん演じる主人公 葵みどりの奮闘はじめ、多くの薬剤師の思いや、一人一人の患者さんの生活に寄り添うヒューマンドラマ、ぜひご覧ください。
メイク:猪股真衣子(TRON)
スタイリング:外山由香里