「病院薬剤師 葵みどり」に立ちはだかる医療業界の問題は?
新型コロナウイルスの影響により撮影・放送が延期されていたドラマ「アンサング・シンデレラ」の放送が7月16日、ついにスタートしました。「病院薬剤師 葵みどり」の活躍を心待ちにされていた方も多いのではないでしょうか。そこで「クレデンシャル8月号」と「m3.com」で薬剤師約2,500人にアンケートを実施。今回は「主人公の葵みどりに立ちはだかる、病院、医療業界の問題は?」についてです。
Q: ドラマ「アンサング・シンデレラ」で石原さとみさん演じる主人公・葵みどりに立ちはだかる病院、医療業界の問題は何だと思いますか?
薬剤師の立場が低い
- 薬剤師は医療現場では立場が低い。何故なら薬剤師だけでやれる権限が少ないため。もう少し薬の事に関して薬剤師が処方権限を変更できるような仕組みができたらいいのではないかと思う。
- 薬剤師は医師の言う通りに処方さえしていればよいという考えが未だに根強く残っていることが問題。薬剤師は患者を守る最後の砦であることの認識が広がることを望みます。
- 薬剤師の決定権の無さです。法律上、調剤は医師でもできます。調剤の独占権がない。処方権もない。主人公みどりが医師免許持ちの薬剤師なら病院の医師に挑戦的に病院の問題点に意見や提案していけるのでしょうけど。病院は医師が全てですから。
- 昔は、薬剤師の側も勉強不足があり、処方提言などできない薬剤師が多かった。なので、当然医師側も薬剤師の意見に耳を傾ける医師が少なかった。しかし、徐々に十分な知識を持つ薬剤師が増え、最近の若い医師は、処方提言なども結構受け入れてくれる方が多くなっているように思います。ただ、薬剤師のレベル・意欲にも個人差があり、受け取る側の医師の薬剤師に対する認識も個人差があります。また、職場によっても大きく違います。最初に勤めた職場の雰囲気は、後々まで大きく影響するのではないでしょうか。(ただただ仕事を流していく職場か、患者のために考えて行動する職場か)
薬剤師の業務への理解
- みどりのように自分の仕事に境界線を作らず働く薬剤師に対して、同業者、他職種からよく思われないという障害。
- 薬剤師の業務に対して理解が無い医師がまだ少なからず存在すること。薬剤師からの提案は「薬物療法」を主眼に置いた提案になるため、その患者の医療全体から見た場合「薬物療法」は一部である。たとえ提案した「薬物療法」が正論であっても、その提案を採用しないことがある。
- 医師からの薬剤師の職能理解がないこと、病院内での存在意義を理解してもらえていないことはずっと問題です。役割に対する評価(対価という意味でも)が低すぎるということ、それでいてハードなことを求められるため、薬剤師になっても病院に勤めたいと思っている薬剤師は少ないです。少数の病院薬剤師の負担だけが大きくなっている現実もあります。使命感ややりがいで頑張る病院薬剤師を守り、新人を迎え入れて、より医療に貢献できるフィールドに・・・と発展してほしいと願います。
薬剤師自身の仕事への姿勢
- 薬剤師は医師の処方権を侵害する存在であると誤認される背景には、薬剤師に投薬後の最終的な責任が発生しないことに起因する。薬物治療の最終的な責任は主治医にある、という考え方から薬剤師自身が脱却しない限り、地位向上はない。
薬を調剤し、患者に投薬・服薬してもらう以上はその後のモニタリングを薬剤師の責任において実施しなければならない、と考えている薬剤師は一体どのくらい存在しているか疑問である。 - 臨床現場での薬剤師の位置づけの低さと、ドクターとの立場のギャップを少しでも減らすにはどうしていくかを薬剤師全体で考える必要性を痛感しています。そのためには、病棟カンファレンスへの積極参加などを通じて、患者さんのベッドサイドでの服薬状況などをタイムリーにドクターに伝えるなど、現在の臨床症状を総合的に判断し、次の治療に繋げる一助になることを理解してもらう努力をすべきではないでしょうか。
薬剤師間の連携不足
- 病院薬剤師と保険調剤薬剤師の連携の不十分さ。医師などとの関係性も重要かもしれませんが、同じ薬剤師同士の関係性も問題だと思う。在宅医療の問題。保険薬局だけでなく病院薬剤師も訪問薬剤管理に関われるが、おそらく人員の問題もあり現状では積極的な参加はないのではと思っています。今後、保険薬局だけでは在宅医療(訪問薬剤管理)はできないのではないかと思っています。
その他
- 病院からの薬剤師としての扱われ方や他業種(医師・看護師)との連携の壁。医療業界の問題点は、薬剤師の対人業務の積極的な介入ができるかどうかだけでなく、スキルミックス(薬剤師が医師の仕事ができるようになる)にあると思う。
- 全ては医療制度の中での問題である。街の薬局を単なる薬の販売とみなしてしまったことは薬剤師の位置を自らさげすむものとなった。患者住民に信頼されれば医師も認めざるを得ない。ちゃんと進言も聞いてもらえる。「適切な指導を有難う」と言われるように「くすり師」を目指すこと。
- 医療のプロフェッショナルが、経営(効率)を意識しないといけないこと。自身の正義よりも売り上げ重視となってしまうことによる査定への影響。
- 経営陣と医療スタッフの関係。利益追求か患者の満足度を目指すかではないでしょうか。
患者の満足度と医療の安心度を追及すると経営が成り立たなくなっていく。
大病院じゃない地方の小さい病院では医療機器も満足に購入できず医療スタッフも集まらない現状なので、このドラマを機に医療スタッフを目指す学生が増えてほしい。
病院薬剤師だけでなく、薬剤師をとりまく医療業界の問題としては、「薬剤師の地位の低さ」や「薬剤師業務への理解」といった回答が多く集まりました。一方、「薬剤師自身も考え方を変える必要がある」という意見も同様に寄せられています。
ドラマ「アンサング・シンデレラ」によって、医療従事者だけでなく、一般の方にも「薬剤師の仕事」に視線を向けるきっかけとなるのではないでしょうか。医療業界が抱えるさまざまな問題に対して、葵みどりたちが、今後どのように立ち向かっていくのか、これからの展開が楽しみです。