「こんな医療シーンも見たい!」今後に期待する薬剤師ドラマのテーマは?
m3.comの薬剤師会員へ、ドラマ『アンサング・シンデレラ』の評価をうかがったところ、「面白かった」と「まあ面白かった」が同率の41%でした。共感したキャラクターをお聞きすると、成田凌さん演じる小野塚綾が44%と最も高く、続いて田中圭さん演じる瀬野章吾が40%、石原さとみさん演じる葵みどりが38%、桜井ユキさん演じる刈谷奈緒子が30%という結果でした。
本作の主人公、葵みどりは「薬は患者の今後の生活につながるからこそ、その人自身を知る必要がある。それが、薬剤師にとって何より大切だ」という信念を持っているキャラクター。つい患者に深入りして時間をかけてしまい、他の薬剤師からはもっと効率的に仕事をすべきだと叱られることもありました。そんな葵みどり以外を主人公にするなら、誰を主人公にしたドラマを見たいですか?と聞いたところ、瀬野省吾が34%で首位に!続いて、小野塚綾が24%、相原くるみが20%という結果でした。他のキャラクターがもし主人公だったら、いったいどんなストーリーが紡がれるのか、想像を膨らませるだけでも楽しいですよね。
また今回は、今後の薬剤師ドラマへの期待として「薬剤師が関わるこんな医療シーンを取り上げてほしい」というテーマについてもうかがいました。是非、ご覧ください。
Q: ドラマ「アンサング・シンデレラ」の評価を教えてください。
Q: ドラマを「見た」先生に伺います。共感したドラマのキャラクターをお選びください。(いくつでも)
Q: もし葵みどり以外を主人公にするなら、だれを主人公にしたドラマを見たいですか?
Q: 「薬剤師が関わるこんな医療シーンを取り上げてほしい」というテーマを教えてください
チーム医療に関わる薬剤師の姿
- 病院薬剤師のドラマですので、院内での医療従事者(医師、看護師、理学療法士、ソーシャルワーカーなど)との連携における薬剤師の活躍を見てみたい。
- 初めのβ遮断薬投与されていた患者を救ったのはスカッとした。もっと医師に感謝されるような具体例を盛り込んでくれると、これからのチーム医療に関わる薬剤師の役割が一般の方々や医師、看護師の方に理解していただけると思う。
- 患者側に寄り添った話も大事だが、患者さんに投与される薬について薬剤師と医師がディスカッションをしている場面をもっと増やしてほしかった。また、薬剤師ばかりでなく、チーム医療の中の薬剤師(感染、栄養、褥瘡など)を多岐にわたってアピールしてほしかった。
- 重症感染症に対して、検査の追加依頼、薬の選択や投与量、投与時間やルートの選択、点滴の落とす順番や、状態に合わせてメインの点滴変更など細かい点まで治療方針を提案し、医師もその方針に乗ってくれ患者が良くなっていく。日ごろ医師や看護師からも信頼を得られているからこそのチーム医療を取り上げてほしいです。
- 誰かが悪者になったり、薬剤師がヒーローになったりするのではなく、チーム医療が成功して患者さんが助けられる、あるいはHappyになれるというような設定が欲しい。それが本来目指している方向であり、医師や看護師と対決していては医療は進歩しないということを一般の方に知っていただきたい。
- カンファレンス中に薬物療法の問題を指摘し、使用薬剤を変更する提案をするシーン、または、原因不明の症状を副作用の可能性を指摘して治療方針に意見するという、医師中心のカンファ内で薬剤師も十分に専門知識を発揮して治療に参加している場面。
-
もっと日常のちょっとしたこと、看護師や栄養士とのやり取りも大切です。
医師との疑義照会でのやり取り、医師から「ありがとう」と言われること、医師や看護師と一緒に考えて患者に関わっていることを取り上げてほしい。
救急での瀬野さんは医師と協力していますが、葵さんは医師からも看護師からも信頼されている場面はなく、協力する場面よりもスタンドプレーばかりが目立ちます。
患者との対話や服薬指導
- 認知症気味の在宅患者の服薬指導の難しさと、その家族を絡ませて。
-
もっと何気ない日常を丁寧に描いて欲しいです。
医師には言えないけど、「この薬は結局どうなの?」「友達から飲まない方がいいと聞いたけど、本当はどうなの?」という質問に対して、医師の指示どおりに服用してとしか服薬指導が出来ない薬剤師がいる。そんな薬剤師が、患者さんが何故本心を医師に言えない環境にあるのかを一緒に考えていくようなストーリーがいいと思います。患者さん本人も自分の気持ちや考えをよく理解出来ていないのが原因で発生する質問なので、ドラマのストーリーを一緒に追っていくことで、自身の考えを整理出来たら医療を提供する側も受ける側も助かると思います。 - 今回のドラマでも取り上げられてはいるが、患者との対話の様子はもっと取り上げて欲しかった。患者さんがどうでもいいと思っている内容から薬剤師が気付くことがある。例えば、入院前から水虫が治らないとか普段から便秘がちだとか趣味はどうだとか、受診疾患とは関係のないところから気付きを得る場面に薬剤師的な視点で注目した内容にして欲しい。
服薬アドヒアランスの向上
- 多数の医療機関を受診し、多剤処方されているが、アドヒアランスが不良の患者に対して、かかりつけ薬局・薬剤師がかかわることで薬の整理ができ、コンプライアンスが向上していく。
疑義照会の大切さ
- 疑義照会で医師に断られ、多職種と一緒に医師を説得していく様子が見たい。
- どれだけ疑義照会の意味があるかを、繰り返しやってほしい。安全性に対する最後の門番が薬剤師であり、基本、多くの医師はエフィカシーにしか興味が無いか、または副作用の発現が無いことだけにしか興味が無いのを知っているから。
日々の調剤業務
- ひたすら目の前の業務を無言でこなし続けるシーン。
- 地味なので映像化が難しいですが、調剤シーン(分包機との連携など)がもう少しあるとうれしいです。(職場によりますが、薬剤師は、分包機のメンテナンスや医薬品のマスターの管理もしています。)更に地味ですが、棚卸しのシーンもあるとうれしかったです。(ドラマにはSPDの概念があったので、難しいかもしれませんが。)
薬の効果や効用
- 一般の人にはわかりにくい薬の名称は、映像だけではなくてどういう薬なのかをわかってもらう必要があると思います。そこを工夫してもらえるといいと思います。
抗癌剤治療
- 外来で抗癌剤治療を続けながら働いている方を取り上げて欲しいです。癌になったらもうおしまい、ではなく、治療方法が多様化して生存率が延びてきた現在、癌になってからどのように生きていくのか、そこに薬剤師がどう関わるのかを描いて欲しいなと思います。
糖尿病治療
-
糖尿病の内服薬→球形吸着炭→透析に至るまでと、食事・運動療法で改善する例を比較。
血糖値を軽くみている患者さんが多いので、体調管理の大切さを示す意味で。
薬物動態と副作用
- 薬剤師が持つ薬物動態の知識を活用して、医師に対して患者に処方した治療薬の説明をしているシ-ン。例えば、睡眠薬の過剰服用で昏睡している患者さんが、睡眠薬の薬物動態と患者さんの生理的機能から、何時間後には覚醒しますということを知らせる。また患者さんに薬物動態の知識から薬の効果が現れる時間をお知らせする。オ-バ-ド-ズによる副作用の疑いについて、患者さんの血中濃度測定をして副作用を明確にする。血中濃度測定により、薬物治療の個別化ができます。また医師とのやりとりの中で、化学構造から副作用を類推することがあります。こうした情報は薬剤部のDI担当の薬剤師が持っていると思います。
災害時の薬剤師とお薬手帳
- コロナ禍の中、クルーズ船に長期間留まらないとならない乗客の慢性疾患治療薬のストックが切れ、処方箋に基づき調剤し服用を継続できる手助けを薬剤師が担った事実はあまり知られていないのではないか。大地震や洪水など電子カルテも使えなくなるような実際の大災害時に日頃からお薬手帳を活用していることによって災害時でも継続中の薬が服用できるということをドラマに取り入れると、実感として分かりやすく手帳活用の重要性が伝わるのではないかと思う。
その他
-
化学療法(レジメン審査)委員会、抗癌剤の監査、薬事委員会、MRとの関り、TDM、AST、緩和ケア等のチーム医療等々、調剤と服薬指導以外でもまだまだ題材はある。
プレアボイド事例が蓄積されている日本病院薬剤師会に協力してもらったら、病院薬剤師ならではの活躍場面が作れる。
薬剤師が関わる医療シーンとして、最も多くのご意見があったのはチーム医療に携わる薬剤師を描いて欲しいというものでした。目の前の患者に向き合い、薬学の専門家として時には医師や看護師とも対等に、治療のためにチームに貢献する薬剤師の姿です。
今回のドラマは医療従事者ではない多くの一般の方々に、薬剤師の仕事を知っていただく良い機会となりました。今後、医療ドラマの主役として医師や看護師と対等に、さまざまな薬剤師にスポットライトが当たり、”アンサングではない”薬剤師が活躍していく展開も楽しみです。