全薬剤師必読!バイタルサインを学ぼう

更新日: 2024年9月26日 薬剤師コラム編集部

「バイタルサインを学ぼう③血圧」薬剤師が覚えたいフィジカルアセスメント

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血圧とは

血液は心臓のポンプ作用により体内に送られるが、その血液の圧力が動脈壁に及ぼす力が血圧である。部位により圧分布があり(だから血流が生まれる)、大動脈では最大血圧(120mmHg)最低血圧(60mmHg)、毛細血管では20 mmHg位(静脈域はそれ以下)であり、基本的に末梢にいくに従い低くなる。

血圧を測定することにより、高血圧症などの有無や、降圧薬の有効性や薬の副作用などを知ることができる。

1)血圧測定

エレマーノ血圧計(テルモ電子血圧計H55)を用いた血圧測定について解説する。自動測定と聴診測定があり、基本操作の流れは図1の通りである。

図1 エレマーノ血圧計の基本操作の流れ

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追記事項として、正しい腕帯の巻き方、正しい持ち方、3つのモードの使い分けについては、図2に示す。

図2 エレマーノ血圧計の正しい腕帯の巻き方、正しい持ち方、3つのモードの使い分け

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こんなときどうする(トラブルシューティング)については、図3に示す。

図3 エレマーノ血圧計のこんなときどうする(トラブルシューティング)について

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ここで、触診法での血圧測定について説明しておく。
1.橈骨動脈を触れながらカフを急速に加圧していくと拍動が消える。

2.この点よりさらに加圧し30-40mmHg上昇させる。加圧を止めると自動的にゆっくり減圧される。

3.脈拍を触れるようになった点が収縮期(最高)血圧である。

4.ショック時など聴診法でコロトコフ音が聞こえない時にも有効である。

ここで、聴診法について詳細に説明しておく。
1.上腕動脈拍動上に膜型聴診器をあてる。

2.マンシェットで聴診器を圧迫しないように、特に拡張期血圧測定時は聴診器で強く動脈を圧迫しないように注意する。

3.ノーマル/スローモードの自動測定や触診法でもとめた収縮期圧(最高血圧)よりさらに30-40mmHg速やかに加圧する。加圧を止めると自動的にゆっくり減圧される。(水銀血圧計のような減圧テクニックはいらない)。

4.拍動ごとにコロトコフ音(少なくとも2つ)が聞こえてきた点(Swan第1点)を収縮期血圧、完全に消失した点(Swan第5点)を拡張期血圧とする。

コロトコフ音の変化について図4に示す。

図4 コロトコフ音の変化

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ここで、コロトコフ音に関係する聴診間隙について説明しておく。

コロトコフ音第1相~第2相の間で音が聴こえなくなる現象で、数十mmHgにおよぶこともある。その理由は、
1)血液量が少ない時点で血管の開きが大きくなるために、血流速度が低下し第1相の清音(トントン)が消失する。
2)乱流を形成できるほどの血流量がないため、第2相の濁音(ザーザー)も生じない。

聴診間隙が生じる場合は触診法での値を参考にすべきである。聴診間隙は高血圧や動脈硬化で起こりやすい。

血圧の値について

血圧は140/90mmHgを基準に考える。しかしながら、糖尿病や脂質代謝異常、喫煙など動脈硬化のリスクファクターが多い場合にはもう少し低めに設定すべきである。

血圧判定の参考として、日本高血圧学会がまとめた「高血圧治療ガイドライン2009」の成人の診察室血圧の分類を示す(表1)。

表1 成人の診察室血圧(日本高血圧学会がまとめた「高血圧治療ガイドライン2009」より引用)

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1)血圧が高い場合

血圧の上昇は、循環血流量の増加、交感神経刺激による心拍出量の増加や末梢血管抵抗の上昇にある。これは投与薬剤によっても引き起こされるため注意が必要である。

その代表的な薬剤としては、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、グリチルリチン製剤、免疫抑制薬、副腎皮質ステロイド、三環系抗うつ薬・四18環系抗うつ薬などがある。それらの血圧上昇の理由を示す(表2)。

表2 代表的な薬剤と血圧上昇の理由

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2)血圧が低い場合

低血圧では、安静時に血圧が低い場合もあるが、臨床的に問題となるのは、立位をとったときに血圧が低下し、めまいやふらつきなども伴う起立性低血圧である。

起立性低血圧は、循環血液量の減少や自律神経失調によって起こるケースが多い。薬剤師が疑うべき主な薬剤は、降圧薬、利尿薬、亜硝酸薬および向精神薬などである。

降圧薬に注意する例として、血液透析患者は透析施行中および終了後の血圧の著しい低下が起立性低血圧も含め問題となることが多いため、透析開始前には仰臥位と長坐位で血圧を必ず測定しておかねばならない。この際、降圧薬服用の有無をチェックする必要がある。

参考として、聴診器について説明を加えておく(図5)。

図5 聴診器の膜型とベル型の使い分け

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■文献
・山内豊明:目と手と耳でここまでわかる.医学書院,2010.
・狭間研至,薬剤師のためのバイタルサイン.南山堂,2010.
・大津史子,浜六郎:患者の訴え・症状からわかる薬の副作用.じほう,2007
・日野原重明,他:フィジカルアセスメント、ナースに必要な診断の知識と技術第4版.医学書院,2007.

執筆:髙村徳人

Souce:
「一般社団法人日本病院薬剤師会:薬剤師によるフィジカルアセスメント~バイタルサインを学ぶ~(医薬品に関連した副作用として身体所見把握するための基礎を修得する),2012年6月9日. (https://www.jshp.or.jp/activity/guideline/20120622-1.pdf)2024年4月15日参照」

※上記は2012年に執筆された寄稿です。

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