全薬剤師必読!バイタルサインを学ぼう

更新日: 2024年10月7日 薬剤師コラム編集部

「バイタルサインを学ぼう④脈拍」薬剤師が覚えたいフィジカルアセスメント

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脈拍とは

脈拍は、左心室が収縮する際に、大動脈に送り込まれる血液の圧波が、全身に分岐した動脈内に波動的に伝わり、表在する末梢動脈で触知されるものである。

その性状は、1分間の脈拍数とリズムで表現される。脈拍の正常値は毎分60-80回で、50回以下を徐脈(bradycardia)、100回以上を頻脈(tachycardia)と呼ぶ。脈拍の数やリズムの所見を取ることにより、薬剤の副作用発現や効果の確認に役立つことがある。

1) 脈拍測定

以下の手順で行う
1.手首の橈骨動脈に人差し指、中指と薬指を当てて、脈拍を感じ取って数える(親指で測ると自分の脈拍の振動が伝わりやすい)。

2.左右差がないかを確認する。

3.15秒間の脈拍を数えて4倍する(20秒間の3倍でよい)。

4.リズムに注意し不整脈があれば1分間数える。

脈拍のそれぞれの測定部位について図1に示す。

追記事項として、正しい腕帯の巻き方、正しい持ち方、3つのモードの使い分けについては、図2に示す。

脈拍数と心拍数の違い

一定の時間内に心臓が拍動する回数を心拍数という。通常は1分間の拍動の数をいう。心臓が血液を送り出す際に、動脈に脈拍が生じるので、この回数が脈拍数である。

単に脈拍ともいう。脈拍と心拍数の数は、正常に心臓が拍動している人は同じだが、不整脈を打っている人は一致しない。

図1脈拍の測定部位

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脈拍の変化について

脈については、脈拍数と不整脈の有無とをチェックするが、簡便に心臓の動きを間接的に知ることができる非常に有用な方法である(激しい運動や、精神的興奮、入浴等による体温の上昇とともに、脈拍数は増加する)。

初めての患者に対しては、必ず脈の左右差がないかをチェックすべきである。心臓へ影響を及ぼす薬剤も多いので、薬物療法時には注意が必要である。最近の電子血圧計であれば血圧のみならず脈拍も表示される。年齢層と脈拍数を表1 に示す。

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1)頻脈

脈が速くなるときには、循環血液量の減少あるいは交感神経の刺激が生じていないかを考える。

前者では、利尿薬(絶対的な循環血液量の減少)や降圧薬・亜硝酸薬(血管拡張による相対的な循環血液量の減少)の使用によるものが考えられる。後者では、昇圧薬のほか、β刺激薬である気管支拡張薬によるものが考えられる。

ここで重要なことは、「最近、脈が急に速くなることがある」などと訴えてくる場合は特に注意が必要である。

2)徐脈

脈拍が遅い場合には、β遮断薬などの交感神経遮断作用および、ジギタリス製剤の陰性変時作用の影響を考慮しておく。

特に、ジギタリス製剤はTDM対象薬剤なので、血中濃度の上昇による徐脈の可能性も考慮すべきである。なお、投薬内容で薬剤性とは考えづらい場合には、加齢による自律神経失調の症状や房室ブロックなど徐脈の原因となる心臓疾患があるかもしれない。

ここで重要なことは、「最近、脈が急に遅くなることがある」などと訴えてくる場合は特に注意が必要である。スポーツ心臓を有する患者の脈拍は40回/分前後の場合があるため患者のスポーツ歴にも気をとめるべきである。

3)不整脈

不整脈は、さまざまな要因で起こるが、抗不整脈薬の多くは催不整脈の副作用を有するので注意が必要である。

また、ジギタリス製剤や三環系抗うつ薬、向精神薬の副作用として不整脈がみられる場合がある。どのような不整脈なのかをその場で知りたい場合には、携帯可能なポケットサイズの家庭用心電計(図2)により簡単に調べることができる。

例えば、三環系抗うつ薬による心室性不整脈の場合はR-R間隔不定で幅の広いR波が液晶画面に心電図として表示される。

ここで、コロトコフ音に関係する聴診間隙について説明しておく。

コロトコフ音第1相~第2相の間で音が聴こえなくなる現象で、数十mmHgにおよぶこともある。その理由は、
1)血液量が少ない時点で血管の開きが大きくなるために、血流速度が低下し第1相の清音(トントン)が消失する。
2)乱流を形成できるほどの血流量がないため、第2相の濁音(ザーザー)も生じない。

聴診間隙が生じる場合は触診法での値を参考にすべきである。聴診間隙は高血圧や動脈硬化で起こりやすい。

図2 家庭用心電計(パラナテックツ社EP-202)

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執筆:髙村徳人

Souce:
「一般社団法人日本病院薬剤師会:薬剤師によるフィジカルアセスメント~バイタルサインを学ぶ~(医薬品に関連した副作用として身体所見把握するための基礎を修得する),2012年6月9日. (https://www.jshp.or.jp/activity/guideline/20120622-1.pdf)2024年4月15日参照」

※上記は2012年に執筆された寄稿です。

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