分かりやすい!薬剤師のための法律「薬機法」

更新日: 2022年1月13日 大西 純一

法律から解釈する薬剤師の「情報収集」

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相談3

服薬指導中に医薬品に関する疑問が生じました。まずは添付文書を見ようと思います。

法律

  • 薬機法
  • 独立行政法人医薬品医療機器総合機構法

省令

  • 薬機法施行規則

事例チェックポイント

薬剤師業務で医薬品に関する事項で疑問が生じた場合まず見るもののひとつに添付文書があります。すでにご経験されていると思いますが、本年8月1日より医薬品包装に添付文書を同梱されていないケースがあります。

添付文書は令和元年改正された薬機法第52条等で「医薬品は、これに添付する文書又はその容器若しくは被包に、当該医薬品に関する最新の論文その他により得られた知見に基づき次の事項が記載されていなければならない。」とされています。

次の事項とは、用法、用量その他使用及び取扱い上の必要な注意などがあります。

薬機法については令和2年政令で第52条は「医薬品(次項に規定する医薬品を除く。)は、その容器又は被包に、電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて厚生労働省令で定めるものにより、第六十八条の二第一項の規定により公表された同条第二項に規定する注意事項等情報を入手するために必要な番号、記号その他の符号が記載されていなければならない。ただし、厚生労働省令で別段の定めをしたときは、この限りでない。」と改正され、添付文書は紙ではなく電子化されることになりました。

MRさんあるいはダイレクトメールや卸販売業者より添付文書の改訂情報がもたらされることを幾度となく経験された薬剤師が多数存在すると思われます。しばらくすると机の上に案内文書が山積みになっていることもあります。上記に記載したように添付文書等は最新の科学的知見に基づいた情報を提供することが必要で、添付文書が頻回に改訂されることも仕方のないことなのです。

また、紙媒体で提供することになっていましたので、改訂された添付文書が医薬品等のパッケージに同梱されるまでタイムラグがあることを経験することも多く、同梱されている添付文書が最新の情報ではなくなっている場合もみられていました。

昨今、小包装の医薬品を納入している医療機関が増加していると推測されますが、添付文書がすべての製品に同梱されており、開封と同時にゴミ箱行きとなり、紙資源の浪費につながっていることも事実です。

重大な副作用など添付文書が改訂されると製薬企業は概ね1ヶ月以内に、当該情報を医療機関に伝える義務があり、また、改訂に伴い同梱する添付文書の差し替えや「新添付文書包装品」記載追加によるパッケージ変更などで数百万円かかるとも聞いており添付文書の電子化は紙の無駄な消費のみでなく多くのメリットをもたらすと考えられます。

これらの問題点を踏まえ、添付文書電子化の運用が令和3年8月1日から施行されたのです。経過措置として翌年7月31日までに製造販売された製品については、添付文書の同梱でもよいとされていますので、電子的提供の完全実施は2023年8月1日からとなります。今しばらくは新旧のパッケージが混在して納品されることが考えられます。

最新の添付文書情報へのアクセスを可能とする情報を製品の外箱等に表示し、情報が改訂された場合には紙媒体等により医療機関等に届けるシステムが構築されます。

ただし、一般用医薬品等の消費者が直接購入する製品は、使用時に添付文書情報の内容を直ちに確認できるよう現行のまま紙媒体が同梱されます。また、製造販売業者の責任において、必要に応じて卸販売業者の協力のもと、医薬品等の初回納品時に紙媒体での提供が行われます。

紙媒体での情報提供の変わるものとして、医薬品等の使用及び取扱い上の必要な注意等の事項(「添付文書等記載事項」が「注意事項等情報」に名称が変更となります。)についてはPMDAのHPでの公表という電子的な方法による情報提供が基本となります。

「医療用医薬品の電子化された添付文書の記載要領について」という局長通知が発出されています。(・医療用医薬品の電子化された添付文書の記載要領について(◆令和03年06月11日薬生発第611001号))この中で、「この法改正に伴い機構のホームページに掲載されることとなる注意事項等情報等の事項が記載された文書については、「電子化された添付文書」と呼称することとする。」さらに、「「電子化された添付文書」の略称については、「電子添文」とする。」とされ、慣れ親しんだ「添付文書」という文言は少し形は変わりますが目にすることができそうです。

解説

Point 1
「注意事項等情報」を上手く活用しよう。

PMDAのHPの右側に「PMDAメディナビ」というバナーがあります。これをクリックし、登録することで「マイ医薬品作成サービス」が受けられます。

薬局で採用している医薬品を登録すると、登録した添付文書、医薬品インタビューフォーム、患者向医薬品ガイド等が一覧表示されます。 登録医薬品の更新情報をメールで知らせてくれる機能や、注意事項等情報の新旧を表示する機能もありますので使ってみてはどうでしょう。

また、PMDAのHPには安全性情報や使用上の注意改訂指示通知など多くの情報が掲載されています。


Point 2
スマートフォンに電子添付文書アプリをイントールしてGS1バーコード読み取り活用しよう。

医薬品等のパッケージ等に記載された符号(GS1バーコード)をスマートフォンのアプリで読み取ることでPMDAのHPで公表している情報を閲覧することも可能となります。

薬機法第68条の2に基づき製造販売業者等は順次対応しているようですが、GS1バーコードは2年間の経過措置期間がありますので読み取れない医薬品もあることを知っておいてください。

わが国では、医療用医薬品について2006年にバーコード表示の実施要領を通知し、GS1規格に基づくバーコードの表示の普及・データベース登録が推進されています。すでに医薬品パッケージやPTPシートなどでこのGS1バーコードを目にしていると思われますが、医薬品、医療機器等にバーコードを表示することで、製品追跡(トレーサビリティ)システムの構築が可能となり、物流や医療現場での様々な活用が期待されるものです。


Point 3
他の情報も活用しよう。

注意事項等情報のみでなく、各医薬品の情報としてはインタビューフォームや患者向医薬品ガイドが掲載されています。これらについてはご覧になられた薬剤師も多数存在すると思いますが、新薬については審査報告書も閲覧することが可能です。

製造承認申請における審査過程において提出された治験成績等について医学専門家からの質問に申請者が回答しているものが報告書として提供されています。特許に関連する情報等は黒塗りとされていますが、興味ある内容が記載されています。

新薬が発売になる際には、当該製薬企業に説明をお願いするために勉強会なるものを開催して薬剤等情報を収集している薬局もあると思いますが、説明会に先立って審査報告書を一読して説明を聞くのもよいかと思います。

さらに学べる法律の知識

今般、ジェネリック医薬品メーカーの不祥事が相次いで報告されていますが、後発品であろうと製造承認が必要であることは当然のことです。

承認を受けた製造方法を変更することは違法であるということは誰でもが解ることです。まして、添加剤を変えて製造していたということなど信じることができません。

軽微変更届出という制度もありますが、これらは軽微といえる変更ではなく、生物学的同等性の評価にも疑義が生じる可能性があると思われます。

ジェネリック医薬品メーカー(一部先発医薬品メーカーでも当てはまる事例がありますが…)は医療に携わる企業としての自覚が必要でしょう。モラルの問題という以前に何のために法律で縛られているのかを自問自答するよい機会でしょう。

他方、今回の問題でジェネリック医薬品の製造について興味あるが事例が明らかになってきました。それは自社で製造するのではなく、委託製造した医薬品があることです。

薬機法第2条の定義では、「この法律で「製造販売」とは、その製造(他に委託して製造をする場合を含み、他から委託を受けて製造をする場合を除く。以下「製造等」という。)をし、又は輸入をした医薬品(原薬たる医薬品を除く。)、医薬部外品、化粧品、医療機器若しくは再生医療等製品を、それぞれ販売し、貸与し、若しくは授与し、又は医療機器プログラム(医療機器のうちプログラムであるものをいう。以下同じ。)を電気通信回線を通じて提供することをいう。」とあるように委託製造は法律としても認められています。ただし、製造を委託した業者にも責任があることを忘れてはいけません。

ためになる法律概論

今回の問題で厚生労働省保険局医療課より「後発医薬品の出荷停止等を踏まえた診療報酬上の臨時的な取扱いについて」という文書が事務連絡として令和3年9月21日に発出されています。薬局も混乱していますが、行政もその対応に追われているのが現状です。

ジェネリック医薬品の使用が推奨されていましたが、後発医薬品の信頼低下は否めないでしょう。といっても後発医薬品の使用推奨は続いており、新たに後発品が販売になると選択に悩む薬局も多いと思います。

国立医薬品食品衛生研究所 (National Institute of Health Sciences)のジェネリック医薬品品質情報検討会(ブルーブック一覧 - ジェネリック医薬品品質情報検討会)を参考にしてもよいし、PMDAのサイトからジェネリック医薬品の品質情報(ジェネリック医薬品の品質情報 | 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構)へアクセスすることでも閲覧できますので、採用品を決める時の参考にしてください。

参考までに生物学的同等性試験(BE試験)で興味ある事例を提示しておきます。インタビューフォームなどに記載されていますので興味ある方は確認してください。また、MRさんに依頼すれば被験者個々の推移など詳細な情報を入手したりすることが可能です。

事例とした医薬品名はベザフィブラート徐放錠100mgですが、沢井、日医工と日本ジェネリックの3社の製品です。被験者数、各パラメータが見事に一致します。偶然でしょうか?

「後発医薬品の生物学的同等性試験ガイドライン」がありますが、このガイドラインも度々の改訂があり、インタビューフォームには「平成13年5月31日、医薬審第786号」などと記載があり、試験はこの時有効であったガイドラインに基づいて行われたことを示していますので注意が必要です。

最新のガイドラインは「後発医薬品の生物学的同等性試験ガイドライン等の一部改正について」で見ることができます。

まとめ

ジェネリック医薬品メーカーの問題は調剤などを業務とする薬剤師にも言えることです。今、自分達が行っている業務にどのような意味があるのかを確認する絶好の機会です。生活のため賃金を得ることも大事な要因でしょうが、薬剤師となる志を持って薬剤師免許を取得したのであれば、そのほかにもっと大切なことがあるのではないでしょうか。きれい事で「患者さんのために」「患者さんに寄り添って」というだけでは薬剤師としての成長は期待できません。信頼できる薬剤師となるためにかかりつけ薬剤師となっても、その患者さんが他の薬局で薬をもらっているとなれば、それは自己満足でしかありません。

かつてより、かかりつけ医師を持ちましょうと言われていますが、これにより医師個人に特別な報酬が付いているという話は聞いたことがありません。大学病院や公的病院を退職して開業された医師の元へかつての患者さんが受診する光景を目にします。患者さん自らが信頼できる医師を頼っているからに他なりません。これこそが「かかりつけ」でしょう。

法律の世界も大きく変化していますが、医療の世界も大きく変わろうとしています。診療報酬が付いたからと何の展望もなく新たな業務を開始することが正解でしょうか。デジタル社会になれば、調剤は機械化され、調剤のみに専念し、ただ単に監査をクリアするために薬歴を記帳するという薬剤師であればその存在意義はなくなります。

少し厳しい意見を述べましたが、「薬剤師がいなければ困る」と言われる社会にするために薬剤師自らが何をすべきか考えましょう。

ちょっと休憩~一言後記~

添付文書の電子化が計画されたのは、1999年頃と記憶していますが、当時は記憶媒体の主流がフロッピーディスク(今ではUSBメモリーやSDカードですが)であり、まずは医療用医薬品からということで製薬企業からFD1枚に収まるようにとか、HPにアップするのにあまり高額になると協力できないなどの意見がありました。あれから20余年経過し、当たり前のように利用され法律化されるまでになりました。

フロッピーディスクの呼称が普及しましたが、法律の世界では「フレキシブルディスク」が用いられています。薬機法施行規則の第284条に「…これらの書類の各欄に掲げる事項を記録したフレキシブルディスクその他これに準ずる物として…」と記載されています。日本産業規格(JIS)の用語集にではフレキシブルディスクとされていますのでこれに沿ってのことです。

薬剤師のための法律「薬機法」のシリーズも今回でもって終了となりますが、今回の内容でも触れたように後発品、かかりつけ薬剤師などまだまだ議論しなければならない問題が山積しています。

参考文献)
ブルーブック一覧 - ジェネリック医薬品品質情報検討会 (nihs.go.jp)
ジェネリック医薬品の品質情報 | 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構 (pmda.go.jp)
後発医薬品の生物学的同等性試験ガイドライン等の一部改正について
医療用医薬品の電子化された添付文書の記載要領について

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大西 純一
おおにしじゅんいち

薬剤師・医学博士  元職 国際医療福祉大学大学院 創薬育薬医療分野 教授 / 大分大学医学部附属病院 臨床薬理センター客員教授 / 厚生省(現厚生労働省)医薬安全局 安全対策課 GPMSP査察官 / 医薬品機構(現医薬品医療機器総合機構:PMDA)治験指導部治験調査課長 / 香川医科大学(現香川大学)医学部附属病院 薬剤部 医薬情報室長 / 公立三豊総合病院 薬剤部 薬剤部長他 / 著書「これならわかる、使える 臨床研究に関する倫理指針」/ 「看護過程に沿った対症看護 病態生理と看護のポイント」/ 「CRCのための治験110番Q&A」/ 「治験事務局担当者のためのガイドブック」

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