薬歴ビフォーアフター~薬歴の悩み、解決します~

更新日: 2024年6月1日 岡村 祐聡

初回服薬指導での薬歴の書き方、初回の薬歴は箇条書きがベスト

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薬歴ビフォーアフターは、薬歴の書き方を岡村先生の添削前、添削後の薬歴でわかりやすく解説する企画です。
今回のテーマは「初回服薬指導」。正しい薬歴の書き方では、初回服薬指導の薬歴はアセスメントがないのでSOAPではなく箇条書きがベストとのこと。その理由を解説し、「初回服薬指導」の薬歴の書き方の実例を見てみましょう。


薬歴の書き方のお悩み

以前「初回服薬指導」はSOAPで書いてはいけないとありました。(第6回)私はAを書かずに、次のように書いていますが、これではどうでしょうか?正しい書き方を教えてもらいたいです。

患者さんは45歳 女性。歯科受診

【処方内容】
オラセフ錠250mg 3錠  分3 毎食後 3日分
ロキソニン錠60mg 3錠  分3 毎食後 3日分

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薬歴Before(以前の薬歴の記入)

【薬歴】
(初来局)

S) 歯を抜きました。
O)
    他科受診・併用薬・飲食物の摂取・後発品の希望・胃潰瘍歴・喘息歴:すべて無し。
P)
    薬情を用いて、効能・用法・副作用などを説明指導した。麻酔が切れて痛くなりそうな時は食後でなくても飲んで大丈夫です。そんな時は胃が荒れる事もあるので多めの水で飲んで下さい。
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アセスメントしていないのに、薬歴をSOAPで書くのはナンセンス

ご質問にもある通り、「アセスメントしていないときは、SOAPで書くべきでない」というのが基本中の基本です。何度も申し上げている通り、SOAPは患者さんを前にしてプロブレムを考えるときのガイドであって、思考ツールです。薬歴の「どこに何を書く」という書き方の決まりではありません。したがって、実際にはSOAPで考えていないのに、薬歴だけSOAPと行頭マークを付けて記載するのは、ナンセンスです。
 ただ、薬局で採用している薬歴ソフトが、初めからS、O、A、P、という記入欄に分かれていて、それ以外に書きようがないのであれば、仕方がないですね。薬局内でルールを決めて使うしかありません。
 これから薬局は淘汰の時代を迎えます。具体的にどのような形で淘汰されていくのか、まだ予断を許しませんが、いずれにしろ「世の中にとって価値のない薬局は生き残れない」ということは間違いありません。
 では生き残るためにはどうすればいいのでしょう。例えばPOS(ProblemOriented System/問題志向システム)は薬局での医療の質的向上を目指して導入されたシステムです。これを正しく利用していないと、淘汰される側になる可能性があるのではないかと思われます。とにかく、せっかくすでに“ある”システムですから、これを使わない手はありません。これからでも遅くありません。ぜひ正しいPOSを身に付け、あなたの薬局の医療の質を向上させましょう。

「初回服薬指導」の薬歴の書き方は2回目以降とは別物と考えるべき

薬剤師が関わる医療という観点では、「初回服薬指導」と2回目以降の来局時に行う「経過服薬指導」は、意味合い、やるべきことがまったく違うと私は考えています。つまりこれは別の医療行為であるということです。当然その記録も別物と考えなければいけません。
 初回服薬指導においては、まずひと通りの問診情報を集める必要があります。これは今後薬局、薬剤師にとって、基礎となる患者情報となります。処方薬に関連するかもしれない事柄であれば、お仕事や食事、睡眠などの生活サイクルなどをお聞きすることも大切ですね。そして処方されたすべての薬に対して、必要な情報を患者さんにもご理解いただく必要があります。もしかすると、患者さんはすべてを覚えることはできないかもしれませんが、たとえすべてを覚えることができなくても、やはり初回だけでもひと通り説明しなければ、初回服薬指導としては不足であるといえるでしょう。そのためにも情報文書や指導せんなどの文書を有効活用するべきと思います。
 2回目以降からは、すでに一定期間薬を飲んでいるため、薬の効果や副作用など、モニタリングの役割が重要になってきます。そのためには新たな他剤併用や他科受診がないかを毎回確認する必要があります。POSの「プロブレムごとに着目する」利点が大きく出てくるのは、2回目以降なのです。「プロブレムに着目する」とは、具体的には「それぞれのプロブレムをどのように捉えたのか、そのアセスメントを明らかにする」ことです。したがって、アセスメントがしっかりできているのかどうかが医療の質を左右することになります。

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岡村 祐聡
おかむら まさとし

有限会社服薬ケア研究所所長。明治薬科大学薬学部薬剤学科卒業。
都内調剤薬局や調剤薬局チェーンの教育担当管理職を経て、1997年に『服薬ケア研究所』を設立。
「服薬ケア」理論を各地で提唱し続け、全国各地で開催される研修会や服薬セミナーなどでも精力的な活動を行っている。 2002年には、服薬ケアを学ぶ全国の有志で設立された「服薬ケア研究会」から要請を受け、会頭に就任。最新著書は「10日間で極意をつかむ選ばれるかかりつけ薬剤師になる 患者応対技術と服薬ケアコミュニケーション」(診断と治療社)。書籍の詳細は服薬ケア研究所のホームページを参照。

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