薬歴ビフォーアフター~薬歴の悩み、解決します~

更新日: 2020年10月11日 岡村 祐聡

初回服薬指導ではどんなアセスメントで薬歴を書くのがいいのでしょうか?

初回服薬指導ではどんなアセスメントで薬歴を書くのがいいのでしょうか?のメイン画像1

今回は、現場で働く薬剤師からのお悩みが届いています。正しい薬歴と現場のルールが違うと混乱を招くこともあるようですね…。

お悩み

私はある調剤薬局で働く薬剤師です。岡村先生の著書を読み「初回服薬指導でアセスメントしていない場合は、SOAPでは書かない。箇条書きで患者さんから情報収集したことと、指導したことを簡潔に記載すればよい」と教わりまして、とても納得しました。そのため、初回の患者さんに箇条書きで薬歴を書いたところ、薬局長から「ちゃんとSOAPで書きなさい」と怒られてしまいました。さらに「薬剤師としてのアセスメントがない薬歴はダメ」ときつく言われました。こんな場合は、何を書けば怒られずにすむでしょうか?

薬局ごとのルールは正しい薬歴のためにあるのか?

初回服薬指導はSOAPではなく箇条書きで書く方が良いということはすでに取り上げた通りです。ところがこの相談者は、その通りに書いたら、上司に怒られてしまいました。それは困りましたね。雇われている一薬剤師としては、今決まっている薬局のルールを、自分で勝手に変えることはできません。でも、そのルール自体が必ずしも正しいとは限らない場合は…。そんなお悩みのようです。

(症例)
7歳の男の子です。かゆみを訴え、体中かきむしってしまうため、受診。あせもができているのですが、それもかきむしって血だらけになってしまうとのこと。


〈処方〉
アレグラドライシロップ5% 0.6g 分1 就寝前 5日分
パルデス軟膏0.05% 10g 1 日1~3 回 顔に塗布
ヒルドイドクリーム0.3% 75g 1 日1~3 回全身に塗布 ※1
マイザー軟膏0.05% 15g 1 日1~3 回全身に塗布 ※2
※1と※2をmix

初回服薬指導ではどんなアセスメントで薬歴を書くのがいいのでしょうか?の画像1

薬歴Before

  • あせもと乾燥とで痒みがあると診断された。
  • アレグラは抗アレルギー剤。皮膚のかゆみを抑える効果がある。症状を予防するので5日分すべて服用するようにと先生より指示あり。
  • パルデスは優しいステロイド剤。肌を清潔にしてから薬を使用して治れば中止。軟膏基剤日焼けに注意。この薬は顔に使用すること。
  • mix の塗り薬は、保湿剤とステロイド剤を混ぜてある薬。当薬局で混ぜてあるので使用期間は3 カ月程度。首から下の肌荒れに使用して治れば中止。
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「初回服薬指導でアセスメントを書く」というルールはナンセンス

まずは基本からおさらいしておきますが、初回服薬指導は、患者さんの現状を把握することと、処方された薬に関する基礎的な情報をお伝えすることで、ほぼ手一杯になるはずです。したがって、初回服薬指導と2回目以降の服薬指導とはまったく別物だと考えてください。
そしてSOAPとは、Problem Orientedに患者さんを見る、つまりプロブレムを抽出するときの分析手法ですから、プロブレムが想定されていない状態でアセスメントを云々するのは、そもそもおかしいのです。単なる形式だけのルールで「アセスメントを必ず書け」と決めるのは、やはりナンセンスだと言わざるを得ません。
これを読んでくださっている薬局長や薬局経営者のみなさんは、ぜひ薬剤師スタッフがのびのびと働けるような、それぞれの実力を存分に発揮できるような、正しいルールを作っていただきたいと思います。

正しい薬歴を書けるように独力で努力する

そうは言っても、薬局に勤めている身としては、自分で勝手にルールを破ることはできません。そんな時はどうしたら良いのでしょうか?
まず、自分自身は正しい考え方で患者さんを見ることができるように、独力で実力をつけてください。そして正しい薬歴をきちんと書けるようになりましょう。その上で、どのように対処すべきか考えてみましょう。

解決!

薬剤師として何を求められているのか、その意味をよく考えよう


上司から「薬剤師としてのアセスメントをしなさい」と言われたということですが、それはどういうことなのか、一体自分は何を求められているのか、よく考えてみてください。上司の方はきっと「薬剤師としてその処方は本当に適切なものなのかどうか、きちんと考えたのか?」と言うことをおっしゃりたかったのでしょう。薬剤師の医療の本質とは多少違う議論になってしまいますが、言わんとすることはわかります。それではそれに応えれば良いわけです。

それでは薬剤師としてどのようなことが考えられるのか、整理してみましょう。

  • アレグラは眠くなりにくい薬ではあるが、寝る前で処方されているのは、眠気への配慮であろう
  • パルデスは(Medium)のステロイド剤であり、弱い部類に属する。顔に使用するために弱いステロイドを選択されたのだろう
  • mix のステロイドであるマイザーは(Very Strong)であり、顔は避け、首から下の肌荒れに使用するように選択されていると思われる。また、ミックスしているため、3カ月以内に使い切ってほしい

これらに着目してアセスメントすれば良いのではないでしょうか。ここではそれぞれについて「医師の処方は薬剤師として妥当であると考えられる」と表現しても良いと思います。ただし、少し表現がきつくなりますので、「医師はこのように判断したのだろう」という書き方をすれば、「医師の処方意図を推測し、その判断が妥当である」という意味合いは込められます。

それでは実際に書いてみましょう。ここではアレグラについて取り上げてみました。

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岡村 祐聡
おかむら まさとし

有限会社服薬ケア研究所所長。明治薬科大学薬学部薬剤学科卒業。
都内調剤薬局や調剤薬局チェーンの教育担当管理職を経て、1997年に『服薬ケア研究所』を設立。
「服薬ケア」理論を各地で提唱し続け、全国各地で開催される研修会や服薬セミナーなどでも精力的な活動を行っている。 2002年に設立した「服薬ケア研究所」は、2021年に「一般社団法人服薬ケア医療学会」へと組織変更。理事長へと就任。薬剤師の医療の向上のため活動を続けている。

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