薬歴ビフォーアフター~薬歴の悩み、解決します~

更新日: 2020年12月11日 岡村 祐聡

患者さんが投薬時に窓口で長話をしてくるのですが、どのように対応し、薬歴に反映させるべきですか?

薬歴ビフォーアフターの画像1

今回は患者応対についての相談をいただきました。すべての薬剤師のみなさんに考え直してほしい大切なことだと思ったので、今日はその話題を取り上げましょう。

お悩み

忙しいさなかに、自分としてはかなり時間をかけ、患者さんに一生懸命応対しました。お会計も終わりお帰りかなと思ったのですが、その患者さんはまた違う話題を持ち出してなかなか帰りません。ほかの患者さんもたくさんお待ちですし、気が気ではありませんでした。こんな場合どうしたら良いのでしょうか。また、患者さんとの会話は薬歴にはどのように書けばいいでしょうか?

患者さんがあなたと話したいと願っています

まず、間違いなくいえることは、患者さんは、あなたと話したいと願っているということです。これは素晴らしいことです。きっとあなたの応対が素晴らしく、患者さんとしては「この薬剤師さんなら、話を聞いてもらえる」と思ってくださったのでしょう。これは誇るべきことであり、困るようなことではありません。もっと胸を張ってしっかりとお話を伺ってください。「どうしたらよいのか」の答えは「もっとお話を伺いましょう」です。

もちろん、本当に忙しいときはそうもいっていられませんね。私も大学病院の前にあるかなり忙しい薬局で新人から数年を過ごしましたので、忙しいときの大変さはよくわかっているつもりです。

患者さんの気持ちに真摯に応えることが私たち医療者の務めであり、「忙しいから早く帰れ」と考えるようでは、医療者失格であるということです。そこを絶対に勘違いしてはいけません。忙しいからという理由で、「早く帰ってほしい」という気持ちになっているのならば、言語道断です。そのような考えでは、これから来る薬局淘汰の時代に生き残ることはできないでしょう。だからこそ服薬ケアでは、短時間に効率良く最大の患者満足度を得ることができるようにさまざまな方法論が用意されているのです。

早く帰っていただくためには、思いっきり話を聞くこと

私自身が気を付けていたことは、忙しいときほど、真剣に相手の話を聞くことでした。実はそのほうが結果的に患者さんは早く帰ってくださいます。まずこれを信じてください。もしあなたが、心の中で「忙しいから早く帰ってほしいのに、まだ話が続くの?」と思っていたら、相手はあなたのその気持ちを非言語で感じ、もっと自分の方に気を引きたくて、さらに話が長くなります。ですから、とにかく真剣に、本気になって話を聞くことです。どんなときもこれを心がけてください。

ただ、ときに患者さんの方が周りを見ず、話が終わらないことがあるかもしれません。そんな時は、一定時間本気になって話を聞いた後、患者さんが少し満足してきたと感じるころ合いを見計らって、ストレートに「○○さん。私はあなたのお話をもっと聞かせていただきたいのですが、今はごらんのように混んでいますので、申し訳ないですが、夕方の○時頃、また来ていただけませんか?」と言って断りましょう。もし空いている曜日があるなら「○曜日に来て下さい」でも構いません。とにかく大事なことは、「あなたのお話は聞きたいけど、今は忙しいので、別の機会にしてください」としっかりと伝えることです。これも真摯にお伝えください。ほとんどの患者さんはそれで「今は話を聞く時間がない」ということを理解していただけます。

さて、薬歴を見せていただいたら、実際に書いた薬歴は次のようなものだったそうです。

(症例)
67歳の男性。6台だったHbA1cが今回7.5まで上がってしまった。


〈処方〉
アログリプチン安息香酸塩錠25mg  1 錠 分1 朝食後 30 日分
メトホルミン塩酸塩錠250mg 2 錠 分2 朝夕食後 30 日分
アトルバスタチンカルシウム錠5mg  1 錠 分1 朝食後 30 日分

薬歴ビフォーアフターの画像

薬歴Before

S) 先生に怒られちゃったよ。
O) 処方はDo。今回HbA1c7.5
A) 継続服用
P) お薬は飲み忘れなくしっかり服用してください。
薬歴ビフォーアフターの画像

ところが、お話をよく伺ってみると、実際のやりとりはこの薬歴とは似ても似つかない、まったく違うモノでした。この薬剤師さんの薬局は、誰の薬歴も、実際のやり取りとは関係なく、このような薬歴が並んでいるということでした。

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岡村 祐聡の画像

岡村 祐聡
おかむら まさとし

有限会社服薬ケア研究所所長。明治薬科大学薬学部薬剤学科卒業。
都内調剤薬局や調剤薬局チェーンの教育担当管理職を経て、1997年に『服薬ケア研究所』を設立。
「服薬ケア」理論を各地で提唱し続け、全国各地で開催される研修会や服薬セミナーなどでも精力的な活動を行っている。 2002年には、服薬ケアを学ぶ全国の有志で設立された「服薬ケア研究会」から要請を受け、会頭に就任。最新著書は「10日間で極意をつかむ選ばれるかかりつけ薬剤師になる 患者応対技術と服薬ケアコミュニケーション」(診断と治療社)。書籍の詳細は服薬ケア研究所のホームページを参照。
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