第30回 通院をやめようかなとぼやく患者さん

定期的に通院する患者さんがいらっしゃいますが、高齢で年金暮らしのため、「医療費が厳しい、通院をやめようかな」とおっしゃいます。こんな場合はどのように患者さんに対応すべきでしょうか?
今回はまず薬歴から見ていきましょう。
(症例)
70歳 男性 数年前より時たま胸が苦しいときがあり、近医を受診。その後救急車で市内の総合病院へ運ばれてPCI実施。以後そちらの病院へ通院中。お酒が大好きで晩酌は欠かさない。医療費が高いと常々訴える。「薬を止めたい。どの薬なら止めて良い?」と来るたびに相談される。今日は昼の薬が余っているので、10日分少ないとのこと。
〈処方〉
ビソプロロールフマル酸塩錠5mg 1錠
レザルタス配合錠HD 1錠 分1 朝食後 35日分
エフィエント錠3.75 mg 1錠
ロスーゼット配合錠HD 1錠 分1 昼食後 25日分

薬歴Before
S) | 昼の日数が減っている。 |
O) | 昼の薬飲み忘れあるので10日分減 |
A) | 自覚症状がないので飲み忘れなどあまり気にしていない様子なので注意。 |
P) | エフィエントの飲み忘れは良くないので注意してください。 |

医療者としての自覚を持ち、薬剤師のできることを考えよう!
投与日数が違うことは、誰でも気が付くことです。そこに着目するのは良いと思うのですが、「自覚症状がない」ために「飲み忘れを気にしていない」とAに書いてありますが、それは患者さんのどんな言葉やどんな態度からそのように思ったのでしょう。その事実が何も書いてありません。アセスメントには、必ずその証拠となる情報がOまたは Sになければいけません。
当該の薬剤師にうかがったところ、現場では患者さんには何も聞いていないということでした。ただ、「自覚症状がないから気にしていないのかな」と思っただけということでした。「思っただけ」のことは、薬剤師の勝手な推測ですから、確認もせずに推測を記録に書いてはいけません。これでは残念ながら胸を張って「医療を行っている」といえないのではないでしょうか。もっと医療者としての自覚を持ち、薬剤師として何をなすべきなのかを考えましょう。
プロブレムは処方の中ではなく患者さんの中にある
上記の話をすると、その薬剤師は逆に「処方上には特に問題がないのに、一体何をすればよいのですか?」と私に問いかけてきました。
この患者さんの話をまとめると、患者さんが来局するたびに「医療費が高いから薬を止めたい。どの薬なら止めて良い?」と相談されていたそうです。この方はご夫婦で年金生活をされており、奥様もリウマチで通院されているので、医療費が高額になります。経済的な負担を減らすために、医師に「薬を減らせないか」と相談したら、合剤に変更され飲む錠数は減るが、むしろ薬代が高くなってしまったとのこと。患者さんは今回「自分は今症状が落ち着いているので、もう通院を止めようかな」とぼやいていたのだとか。
お昼に薬を飲むのを忘れがちなのも問題ではありますが、私はこちらの方がよっぽど大きな問題だと考えます。外来患者さんのプロブレムの多くは、処方の中ではなく、患者さんの中にあります。それを丁寧に拾い上げて、薬物治療がきちんと継続できるようにケアするのが、私たちの役目でしょう。
