第32回 必要な情報といらない情報混ざった薬歴を整理する
薬歴を書くときに、プロブレムを絞ることができず、ほかの話題と混ざってしまうことがあります。どのようにすればスッキリと読みやすい薬歴になるのでしょうか?
今回はビフォーの薬歴から見てみましょう。
(症例)
70代後半の女性 高血圧で10年ほど通院。1年ほど前、トイレが近いことをなに気なく相談したら、ベタニスが処方され、以後継続中。お友達が多く、ご近所のお友達が毎日のように寄ってくれる。そんな時はお茶を入れて飲みながらおしゃべりするのが日課。(3杯から5杯くらいは飲んでいるだろうと)
〈処方〉
カムシア配合錠 HD 1T 1× 朝食後
ベタニス錠 50mg 1T 1× 朝食後 30 日分
薬歴Before
S) | 血圧変わらず。塩分は取りすぎないように気を付けている。血圧は家でも測っている。 |
O) | Do処方。(薬を飲んでも)トイレの回数が変わらない。すでにベタニスは 1 年以上継続中。一人の時はコーヒー。毎食後とおやつの時間に必ず飲む。(1日4~5杯) |
A) | ベタニスを飲み始めたころは、少しトイレの回数が減ったようだが、最近は減っていない。カフェインによる利尿効果のためかもしれないので、カフェイン入りの飲み物を減らすと良いだろう。 |
P) | お茶・コーヒーにはカフェインが含まれているので、たくさん飲むとトイレが近くなります。カフェインの含まれていないものを飲んでみてください。 |
SOAPは一つのプロブレムに関することだけを
もう何度も述べていることではありますが、SOAPとはProblem Oriented System(POS)における分析ツールであり、考え方のガイドです。これは目の前の患者さんについて、「プロブレムごと」に情報を整理していくための方法論であり、SOAPはそのプロブレムに関する情報のみを集めます。それ以外の情報を混ぜ込んではいけません。
近年、この「プロブレムごとに」を無視した薬歴を書いている薬局が多いように思いますが、ここを無視すると、書くのも時間がかかり、読むときもパッと理解できない、大変使いにくい薬歴になってしまいます。つまり、時間効率を著しく悪くし、結果的に服薬指導の質も大いに低下させることになってしまします。実はこのような薬歴を書いていると、思考力も衰えていくため、患者さんにとっても薬剤師にとっても良いことは何もありません。ぜひ早い機会に「プロブレムごと」に考える習慣をつけましょう。
血圧の話題とトイレの話題が混在している
さて、SOAPを見てみると、血圧の話題とトイレの話題が混在しているようですね。アセスメントは尿量が多い理由がカフェインではないかとしていますので、このSOAPのプロブレムはどうやらトイレの回数の方のようです。それでは血圧の話題はSOAPの外に出しましょう。
…