薬歴ビフォーアフター~薬歴の悩み、解決します~

更新日: 2018年11月23日 岡村 祐聡

「プロブレム」が多いときはすべて書く?絞ったほうが良い?

「SOAPのAに何を書くかいつも迷います。」
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お悩み
Aに何を書くかいつも迷う。プロブレムがいくつもあるときはすべて書いても良い?
患者さん:Dさん男性78歳。
10年ほど前、検査で心房細動を指摘され、ワーファリン開始。
現在の処方は、降圧薬数種、コレステロールの薬、α遮断薬、それにアスピリン、ワーファリンと全部で12種類あります。いつも30日処方で、ほぼ月に1回来局されます。
 今回のお悩みは、次のようなケースです。
Aに何を書いたらよいか、いつも迷います。それと、プロブレムがいくつもあるときはすべて書いても良いのでしょうか?1、2つに絞ったほうが良いのでしょうか?
解決!
プロブレムが複数あった場合は、プロブレム1つに対しSOAP1つ
 まず、POSの基本として、「プロブレムごとに考える」ことが大事です。したがって、プロブレム1つにSOAP1つが大原則となります。もし扱ったプロブレムが3つあるならば、SOAPも3つ必要となります。この大原則が、薬剤師の現場では守られていないことが多いようにお見受けします。
 じつは、よく聞く悩みである「Aがうまく書けない」理由の多くは、複数のプロブレムの情報がひとつのSOAPに混ぜ込んで書いてあることが多いからなのです。「プロブレムごと」の原則を守ると、Aは意外に簡単に書けるようになるはずです。
  • 服薬指導の観点ではプロブレムを1つに絞った方が伝わりやすい
 さて、私は外来患者さんの服薬指導において、「プロブレムはできるだけ1つに絞ろう」と申し上げてきました。この相談者さんも、その話を聞いたことがあるのではないかと想像します。ただ、薬歴を拝見する限り、複数のプロブレムが混在した記述になっています。
 誤解のないように申し上げておきますが、実際には指導をしたのに、薬歴に書くときに1つに絞るのではありません。薬歴は薬剤師の医療記録ですから、やったことはもれなく記録されなければなりません。指導したことはすべてもれなく薬歴に記載してください。そうではなくて、「服薬指導そのものを一番大切な話題1つに絞った方が、確実に患者さんに伝わる」ということなのです。
  • 「かかりつけ薬剤師」になって的を絞った服薬指導ができるようになろう!
 プロブレムを1つに絞ることができれば、薬歴にたくさんのSOAPを書かなくても済むはずです。あれこれたくさんのことをお話するより、患者さんの理解は進むことが期待できます。ただ、それには条件があります。それは、また次の回も自分の薬局に来てくださるということです。そして、できれば自分自身が次も応対できるとなお良いと思います。つまり、「かかりつけ薬剤師」であることが、的を絞った服薬指導をしやすくなる条件になるのです。
 さて、じつは前回、夕食後の薬が結構余っているという話があって、ドクターより「調整するから持っておいで」と言われたとのことでした。また、食欲がなく食が細くなったという話もありました。以上より、3つのプロブレムを取り上げているようですので、3つのプロブレムを立てて薬歴を書いてみましょう。テーマを絞るつもりでも、どうしてもほかの話題に触れることはあります。そういう時は、面倒がらずに指導した数だけのプロブレムを立てましょう。とくに、患者さんの方から話題が出た場合は、しっかり取り上げないと、患者さんの満足度が下がってしまいますので、患者さんの気持ちに沿ったプロブレムの取り上げ方も意識してください。
Before
薬歴ビフォーアフター~薬歴の悩み、解決します~「プロブレム」が多いときはすべて書く?絞ったほうが良い? beforeの画像1
[薬歴]
  • (S)PT-INR 2.6、BP 133/62 脈拍 73
    ワーファリン数値高めとのこと。ご飯を摂る量も前よりは少し減っている。
    だるさがあるというか、今は無理しないようにしている。検診は10月位にあると思う。余った薬は忘れてしまった。
  • (O)ワーファリン1.5mg→1.25mgそれ以外はDo。
  • (A)このところ食欲不振気味とのこと。今回は新たな飲み忘れはない。
  • (P)ワーファリン減量後も怪我など気をつけておきましょう。食欲不振が悪化するようなら教えてください。検診の結果見せてください。
薬歴ビフォーアフター~薬歴の悩み、解決します~「プロブレム」が多いときはすべて書く?絞ったほうが良い? beforeの画像2
After
薬歴ビフォーアフター~薬歴の悩み、解決します~「プロブレム」が多いときはすべて書く?絞ったほうが良い?afterの画像1
[薬歴]
  • (プロブレム)PT-INR値が上がってきたことによるワーファリン投与量の調整
  • (S)ワーファリン数値高めなので、少しだけ減らすと医師に言われた。それ以外にとくに話はなかった。
  • (O)PT-INR2.6(先月は2.2)、BP 133/62 脈拍 73。ワーファリン1.5mg→1.25mg
  • (A)PT-INR値が上がってきたことによる、ワーファリン投与量の調整。原因は不明。
  • (P)少し血が止まりにくくなっていますので、怪我などこれまで以上に気をつけてくださいね。
  • Pnext: 次回も検査値確認してください。
  • (プロブレム)飲み忘れた残薬の調整
  • (S)前回「薬が余っている」と医師に話したら「持っておいで」と言われたのだが、今日は忘れてしまった。医師からは「それなら次に持ってきて」と言われた。
  • (O)今回は新たな飲み忘れはないとのこと。
  • (A)医師が処方量の調整をしてくれるようだ。
  • (P)今度は忘れずに持ってきてくださいね。処方…

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岡村 祐聡
おかむら まさとし

有限会社服薬ケア研究所所長。明治薬科大学薬学部薬剤学科卒業。
都内調剤薬局や調剤薬局チェーンの教育担当管理職を経て、1997年に『服薬ケア研究所』を設立。
「服薬ケア」理論を各地で提唱し続け、全国各地で開催される研修会や服薬セミナーなどでも精力的な活動を行っている。 2002年に設立した「服薬ケア研究所」は、2021年に「一般社団法人服薬ケア医療学会」へと組織変更。理事長へと就任。薬剤師の医療の向上のため活動を続けている。

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