薬歴ビフォーアフター~薬歴の悩み、解決します~

更新日: 2019年2月22日 岡村 祐聡

「プロブレム」は何でしょうか?

いつもなんとなくSOAPで書いてますが、プロブレムがわかりません。
薬歴ビフォーアフター~薬歴の悩み、解決します~「プロブレム」は何でしょうか?いつもなんとなくSOAPで書いてますが、プロブレムがわかりません。の画像
お悩み
プロブレムは何でしょうか?「市販薬を飲んでいた」ということなので、重複するといけないと思い、このようなAにしました。これで良いでしょうか?
患者さんはGさん。21歳。女子大生。
16時ごろ来局されました。お話をお聞きすると、5日ほど前、急に38℃近く熱が出て大学を休みました。市販の風邪薬を飲んで熱は翌日下がったのですが、その後も鼻と咳が治まらず、今日は昼頃からまた熱が上がってきたようなので、診察を受けたとのことです。

[処方内容]

ロキソプロフェンNa錠 60mg 1回1錠
セフジトレンピボキシル錠 100mg 1回1錠
カルボシステイン錠 250mg 1回2錠
ジメモルファンリン酸塩錠 1回2錠
レバミピド錠 1回1錠
1日3回毎食後服用 5日分
Before
薬歴ビフォーアフター~薬歴の悩み、解決します~「プロブレム」は何でしょうか?いつもなんとなくSOAPで書いてますが、プロブレムがわかりません。beforeの画像1
[薬歴]
  • (S)5日前38℃熱が出て、市販薬を飲んでいた。
  • (O)抗生剤のアレルギーなし。辛そう。
  • (A)市販薬と解熱剤重複の可能性。
  • (P)市販薬を休薬し、こちらを飲んでください。辛ければ、夕食を早めに食べて、このお薬を飲んでお休みになると良いですよ。
  • (Pnext)副作用なかったか次回確認してください。
薬歴ビフォーアフター~薬歴の悩み、解決します~「プロブレム」は何でしょうか?いつもなんとなくSOAPで書いてますが、プロブレムがわかりません。beforeの画像2

 今回は、「この薬歴の場合、プロブレムは何でしょうか?」というお悩みです。プロブレムとは「その患者を診て、専門家としてどのような指導が必要だと考えたのか」を表しますが、今回の場合はどの指導が該当するのか、詳しく解説していきます。

解決!
プロブレムがきちんと想定されている場合、A(アセスメント)とほぼ同じになるはず

 プロブレムとは「医療者として、この患者さんの、いったいどこに着目して指導が必要だと考えたのか」を表すと「薬歴ビフォーアフター」の第5回でも申し上げました。つまり、プロブレムがきちんと想定されている場合、アセスメントとプロブレムはほぼ同じになるはずなのです。
 もう少し詳しく言うと、どのように考えたのかがアセスメントであり、それをひと言で表したのがプロブレムということなのです。したがって、プロブレムとアセスメントが同じ内容を示しているかをチェックすることで、SOAPの捉え方が正しいかどうか見極めることができます。

  • A(アセスメント)の根拠となる事実がOになければならない

 アセスメントの根拠となる事実、いわばその証拠がO情報です。O情報は通常、アセスメントを想定した薬剤師の側から患者さんに質問し、その答えとして得ることが普通です。つまり、「患者さんに何を聞くか」が、そもそも何をプロブレムとして想定しているのかによって変わってくるのです。
 私はこの「こちらから質問をしてO情報を入手する」ことを、刑事ドラマさながらに「ウラを取る」と呼んでいます。犯人(プロブレム)を想定して、その証拠であるOを探すわけですから、Oを患者さんから聞き出すことは「ウラを取る」ことに相当するわけです。

  • SOAPは患者さんとの会話中に考える

 SOAPとは、薬歴の書き方の決まりではありません。プロブレムを意識して患者さんを診るときの「考え方のガイド」です。したがって、SOAPで考えるのは、薬歴を書くときではなく、患者さんとお話している最中なのです。これをしっかりと理解してください。
 さて、薬歴を拝見すると、Aには「市販薬と解熱剤の重複の可能性」とあります。これがプロブレムとなります。実際に重複の可能性があるのは解熱剤だけではありませんが、とりあえず、NSAIDsの重複に着目したということですね。ところがOを見ると「抗生剤のアレルギーなし。辛そう」とあり、どうして「重複の可能性」があると考えたのか、その根拠がありません。これは情報不足ですね。「Aの根拠となる事実がOに記載されているか」を確認するようにしましょう。

  • Sは「そのプロブレムに着目したきっかけ」

 SとOが患者情報ですが、その違いは何なのでしょうか? 私は「Sは主訴、Oは所見」と申し上げています。しかしもっと簡単にSとOを区別する考え方があります。
 じつは多くの場合、患者さんの何らかの言葉から、薬剤…

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岡村 祐聡
おかむら まさとし

有限会社服薬ケア研究所所長。明治薬科大学薬学部薬剤学科卒業。
都内調剤薬局や調剤薬局チェーンの教育担当管理職を経て、1997年に『服薬ケア研究所』を設立。
「服薬ケア」理論を各地で提唱し続け、全国各地で開催される研修会や服薬セミナーなどでも精力的な活動を行っている。 2002年には、服薬ケアを学ぶ全国の有志で設立された「服薬ケア研究会」から要請を受け、会頭に就任。最新著書は「10日間で極意をつかむ選ばれるかかりつけ薬剤師になる 患者応対技術と服薬ケアコミュニケーション」(診断と治療社)。書籍の詳細は服薬ケア研究所のホームページを参照。
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