薬歴ビフォーアフター~薬歴の悩み、解決します~

更新日: 2024年6月16日 岡村 祐聡

ハイリスク薬の薬歴は別建てで書くべき?

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お悩み

ハイリスク薬の薬歴は別建てで薬品名を書いてこのように記載しています。書き方はこれで良いでしょうか?

(症例)
80歳 女性 80歳とは思えないほどお元気。活動的。女性専用ジムへ週3回通っている。
既往歴:花粉症。47歳で子宮筋腫。
果物が大好きでよく食べるそうです。
以前、腎機能定価を指摘されエクアに変更。その2カ月後尿タンパクが出て3カ月前よりジャヌビアとピオグリタゾンに変更。


〈処方〉
イルアミクス配合錠LD  1T
ジャヌビア錠100mg 1T
ピオグリタゾン錠15mg 1T  分1 朝食後

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薬歴Before

  • 糖尿病の薬を変更以後も、低血糖の症状なし。
  • HbA1cが下がらないので、好きな果物をひかえているそうです。
S) 血糖値(HbA1c)と腎機能(eGFR)よくなっているみたい。
O) 切り替え前のエクア服用時に、くだものを控えたこともあり、よかったか可能性もある。
A) 主治医の判断なので、切り替え後の検査結果で治療を継続するのだろう。
P) 血糖値や腎機能がよくなってよかったですね。
今のお薬(ジャヌビア、ピオグリタゾン)を切り替えてからの検査結果も見せてください。
CP) 引き続き症状経過のフォローと本日の検査結果の入手をお願いする。

〈ハイリスク薬〉
■糖尿病薬■
〈DPP-4阻害剤〉
ジャヌビア100mg
用法・用量 1日1回朝食後

  • 冷や汗、空腹感が強くなるような症状などがあると低血糖の可能性ありますので、糖分の補給をお願いします。

■糖尿病薬■
〈チアゾリジン薬〉
ピオグリタゾン錠15mg
用法・用量 1日1回朝食後

  • 筋肉痛や脱力感のような症状があると横紋筋融解症の可能性がありますので、主治医の先生にご相談ください。
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ハイリスク薬が複数あれば、すべて指導して薬歴記載を

ハイリスク薬は別建てで、薬品名を書いてそれぞれ記載するというのは、その通りです。このようにしてください。ただし、記載すべきことは①患者さんの様子(患者さんから聞き取った現在の状態)と②指導内容(毎回同じ指導ではなく、特に注意が必要なことを毎回違った内容で指導する)の2点が必要です。

この記載では、患者さんの様子が記録されておりませんので、不備となります。必ず現状がどうなのかを聞き取って記載するようにしましょう。

また、薬歴の最初に箇条書きで「糖尿病の薬を変更以後も、低血糖の症状なし」と書いてありますが、これはハイリスク薬についての情報ですから、ハイリスク薬の記載項目に入れれば、わざわざ別に書く必要はありません。

この薬歴にSOAPは不適切。アセスメントがないのですべて箇条書きで良い

箇条書きでの記載とSOAPでの記載をしているのはよく勉強されていることがわかり、好感が持てますが、SOAPの内容はこれではちょっと不足していますね。

具体的にはAに書いてあるのは、「先生はそう判断されたのだな」ということが書いてあるだけで、これは薬剤師のアセスメントではありません。アセスメントがないということは、プロブレムがないということです。SOAPにするため、無理やり書いている部分は全部必要ありませんので、SOAPにしないですべて箇条書きで書いた方が簡潔な薬歴になるでしょう。

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薬歴After

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岡村 祐聡
おかむら まさとし

有限会社服薬ケア研究所所長。明治薬科大学薬学部薬剤学科卒業。
都内調剤薬局や調剤薬局チェーンの教育担当管理職を経て、1997年に『服薬ケア研究所』を設立。
「服薬ケア」理論を各地で提唱し続け、全国各地で開催される研修会や服薬セミナーなどでも精力的な活動を行っている。 2002年には、服薬ケアを学ぶ全国の有志で設立された「服薬ケア研究会」から要請を受け、会頭に就任。最新著書は「10日間で極意をつかむ選ばれるかかりつけ薬剤師になる 患者応対技術と服薬ケアコミュニケーション」(診断と治療社)。書籍の詳細は服薬ケア研究所のホームページを参照。

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